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健康

【降圧剤と併用薬のリスク】を専門家が解説「動悸や空咳、脱水症状を引き起こす可能性も」薬のタイプ別副作用の確認を

 日本の高血圧治療は「薬で数値を下げる」ことが常識となっているが、医師に言われるがまま漫然と降圧剤を飲み続けて本当にいいのか。時に命に直結することもある降圧剤の重篤な副作用を、専門家の最新知見のもとすべて可視化。服用を見直すタイミングは、今しかない。

教えてくれた人

谷本哲也さん/医師・ナビタスクリニック川崎院長、長澤育弘さん/薬剤師

降圧剤の副作用に注意。リスクを正しく理解しよう!

 年間処方数60億錠と言われる降圧剤は、日本国内で最も普及している薬のひとつである。多くの高血圧患者が何らかの降圧剤に頼る現状のなか、忘れられがちなのがその副作用だ。ナビタスクリニック川崎院長の谷本哲也医師が言う。

「降圧剤は血圧を適正に管理するうえで確かにベネフィット(恩恵)の多い薬ですが、時に重篤な副作用が現われることがあります。個人差が大きいとはいえ、医師のなかにはその副作用のリスクに向き合わず、漫然と処方しているだけのケースも珍しくありません。

 主治医に言われるままに降圧剤の服用を続けた結果、深刻な症状を発症してしまうケースもあるのです」

 谷本医師によれば、降圧剤の最大のリスクは「血圧が下がりすぎる」ことにあるという。

「めまい、ふらつきによる脱力感や転倒に注意が必要です。特に高齢者の場合、食事がしっかり摂れなかったとか、気づかないうちに脱水を起こしていたなど、服用時の体調によっては血圧が下がりすぎて意識を失ってしまうことがあります」

 実際に谷本医師の実母は70才の頃、降圧剤を飲んでふらつき、転倒。腕や頭部などを打撲し、硬膜下血腫(脳を覆う外側の膜と脳の間に血液が溜まる状態)になったという。

「出血量が多ければ脳が圧迫されて命にも関わる病気です。幸い軽症ですみましたが、母が服用していたのは最も広く処方されているCa(カルシウム)拮抗薬1種類のみで、量も決して多くはなかった。副作用によるこうした症状は、誰にでも起こり得ることだと考えるべきです」(同前)

 深刻な事態を避けるためには、自分が飲んでいる降圧剤のリスクを正しく理解することが不可欠だ。降圧剤のタイプ別に副作用を細かく見ていこう。

肝機能障害、急性腎障害で死亡事例も。問題は「別の薬が足されていく」こと

 高血圧と診断されると、患者には基本的に「第一選択薬」の降圧剤が処方される。なかでも最も広く処方されているのがCa拮抗薬である。

 血管の筋肉細胞はカルシウムが流れ込むことで収縮するため、その流入を抑えることで血管を広げ、血圧を下げる薬だ。

「腎臓への負担が比較的少なく、高齢者でも使いやすいため、高血圧の最初の薬として選ばれやすい。ただし薬である以上、副作用のリスクは必ずある。血管が広がることによるむくみ、歯茎の腫れ、動悸が出ることがあります」(谷本医師)

 稀ながら劇症肝炎、肝機能障害、血小板減少など重篤な副作用が起こることもあり得るという。

 Ca拮抗薬と同様に広く用いられるのが、ARBだ。

「血圧を上げるホルモン『アンジオテンシンⅡ』の働きに作用し血管を広げる薬で、腎臓や心臓の保護が期待できることから、糖尿病、腎臓病、心臓病などの持病がある患者さんに広く選ばれやすい。一方で血液中のカリウムが上がりすぎる高カリウム血症、意識消失、急性腎障害などの副作用が報告されています」(同前)

 別の第一選択薬の一つがACE阻害薬。これも血圧に関わるホルモン系に作用する薬で、糖尿病や腎臓病、心臓病などのある人に推奨される。

「ARBと同様に、高カリウム血症や急性腎障害などのほか、副作用として空咳が出やすい。稀に口・下・喉が急に腫れる血管性浮腫を起こすこともあります」(同前)

 血管性浮腫は腫れによって気道が塞がれる危険もある疾患だ。

 さらに降圧剤の大きな問題は、効果が乏しかった時に「別の薬が足されていく」ことにある。

 併用薬として多く処方されるのがβ遮断薬や利尿薬、α1遮断薬などだが、降圧剤に詳しい薬剤師の長澤育弘さんは「これら併用薬の副作用にも注意です」と指摘する。

「β遮断薬は心臓にある『β1受容体』というスイッチを塞ぐことで心拍数と心臓の収縮力を落とし、心臓が1回に送り出す血液量を減らして血圧を下げるもの。頻脈や狭心症などを合併している患者さんに処方されることが多い薬です。

 気力の低下やだるさ、うつ、手足の冷え、気管支が締まるなどの副作用リスクがあり、喘息患者への処方は原則禁忌。しかし、問診で既往が見落とされて処方されるケースはゼロではない」

 利尿薬は腎臓での塩分の再吸収を抑え、尿量を増やすことで体内の塩分と水分の排出を促し、血圧を下げる作用があるが、副作用として低カリウム血症が報告されている。

「足がつる、なんとなくだるいといった症状が現われます。カリウム値がさらに下がると不整脈になるリスクもある。特に夏場は脱水も重なりやすく、症状が見逃されがちです」(長澤さん)

 α1遮断薬はα1受容体というスイッチを塞いで血管を広げる薬で、前立腺の筋肉も緩めることから、前立腺肥大症の高血圧男性に併用薬として処方されることが多い。

「脈が速くなる反射性頻脈や起立性低血圧などの副作用があります。起立性低血圧は飲み始めの時に出やすく、高齢者が夜中にトイレに起きた際に転倒し、骨折や頭部外傷などの大怪我につながる危険もある」(同前)

 日本老年医学会が作成した「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」には、「75才以上に慎重に投与する薬」として、β遮断薬やα1遮断薬、ループ利尿薬が記載されている。

副作用が疑われる死亡報告

 恐ろしいのは降圧剤服用後の死亡事例があることだ。

 医薬品の安全管理を司る厚労省所管の独立行政法人PMDA(医薬品医療機器総合機構)には、降圧剤の服用後、副作用が疑われる死亡事例が複数報告されている。

 例えばARBのアジルサルタンでは急性腎障害、オルメサルタンでは劇症肝炎で死亡した事例などが確認できる。

「ARBは腎臓を守る働きが期待されますが、腎臓への血流が少ない腎動脈狭窄がある場合、逆に腎機能を急激に悪化させてしまうケースがあります。急性腎障害は数時間から数日の間に腎機能が急激に低下して尿量が減少、最悪の場合、毒素が排出されずに体内に蓄積し、死に至ります。

 アジルサルタンは腎臓のろ過フィルターである糸球体のろ過量を減らすため、腎臓の血流が減少し、急性腎障害を引き起こした可能性が考えられます」(同前)

 谷本医師によれば、肝臓や腎臓は薬の排泄や、代謝に関係する臓器なので影響が出やすく、「とりわけこの2つの臓器の機能が衰えている高齢者は副作用が現われやすい」と警鐘を鳴らす。

「稀とはいえ、こうした重篤な副作用リスクが十分に説明されないまま降圧剤が処方されることは少なくありません。漫然と飲み続けるのではなく、個別の持病や体調ごとにリスクを考慮し、医師と患者が相談しながら降圧剤の服用を管理していくことが重要です」

※週刊ポスト2026年6月19日号

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