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健康

「1日1万歩」「運動は20分以上」は不要? 健康効果を得るための“意外な新常識”を米国老年医学の医師が解説

「運動は20分以上」「毎日1万歩」が健康や減量につながるという定説。実はこれ、最新科学では覆されている。米国老年医学・内科専門医・山田悠史さんの著書『最新科学が覆す 体にいいのはどっち?』(サンクチュアリ出版)では、医療、食事、健康法などのテーマについて、最新論文のエビデンスをもとに「本当に正しいのはどちらか」が解説されている。同書から「運動」に焦点を当てて、一部抜粋して紹介する。

* * *

20分以上運動しないと、脂肪は燃焼しないのは本当?

 ダイエットには「最低20分は運動しないと効果がない」という説がありますが、これは正しい知見ではありません。実は脂肪は、運動を開始したその瞬間からエネルギーとして燃焼し始めています。「20分経たないと燃えない」というのは大きな誤解なのです。

 この数字が広まったのは、運動時間が長くなるにつれてエネルギー源の主役が糖質から脂肪へと交代していくためだと考えられます。運動初期は糖質がメインで使われますが、その間も脂肪は絶え間なく燃焼し続けています。

 専門機関も、10分程度の短い運動をこまめに積み重ねることで、十分に脂肪燃焼や体質改善の効果が得られると示しています。忙しい方が「20分」という数字に縛られる必要はありません。5分でも10分でも、まずは体を動かすことが大切です。その小さな一歩が、着実に脂肪燃焼へとつながります。

1日1万歩で健康になる?

 「健康のために1日1万歩」という目標は広く知られていますが、これにはどの程度の根拠があるのでしょうか。多くの信頼できる研究によれば、歩数は1万歩に達するまで、多ければ多いほど健康に良い影響を与えることが示唆されています。

 ただ、最新の研究でまず注目したいのは「1日7000歩」というラインです。普段あまり歩かない人に比べ、7000歩歩く人は総死亡リスクが約半分になり、認知症のリスクは38%、心臓病のリスクも25%減少することが分かっています。がんや糖尿病、うつ病のリスクも、歩くほど低減します。

 一方で「1万歩」は、健康効果がほぼ最大に達する目安と言えます。これを超えると効果が頭打ちになる傾向があるため、1万歩が厳しいと感じる方は、まずは7000歩を目標に据えるのが良いでしょう。大切なのは数字に縛られすぎず、無理なく継続できる自分なりの歩数を見つけることです。

週に2~3回の運動より、毎日軽い運動をしたほうがいい?

 「数回のしっかりした運動と毎日の軽い運動、どちらが健康的か」という疑問に対し、現在の科学的見解は「週の合計運動量」が確保されていれば効果はほぼ同じ、というものです。週末にまとめて行っても毎日分割しても、病気のリスクを下げる効果に大きな差はありません。

 ただし、初心者や高齢者、持病のある方の場合は、毎日の軽い運動が心血管の健康により良い影響を与える可能性があります。また、毎日行うことで「歯磨き」のように習慣化しやすく、実行するかどうかで悩む必要がなくなるというメリットもあります。

 多忙な方は週末に集中して行うスタイルでも、週に150分の中強度運動か75分の高強度運動を達成できれば十分な効果が得られます。ただ、不慣れな方が急に激しい運動をすると怪我のリスクがあるため注意が必要です。自分に合った無理のない方法で、一週間の総量を意識して取り組みましょう。

体幹を鍛えるなら、ヨガよりピラティス?

 ヨガとピラティス、どちらが「体幹を鍛える」のに適しているのでしょうか。実は、この2つを直接比較した質の高い研究は少なく、現時点で明確な優劣を断言することは困難です。

 しかし、個別の報告を辿ると違いが見えてきます。ピラティスはリハビリ発祥のエクササイズで、体幹を重点的に鍛える動きが多く、筋肉の厚みや筋力の向上を示す客観的なデータが豊富です。一方、ヨガは全身のバランスや柔軟性を養うのに優れています。体幹も使いますが、筋力強化に関する証拠はピラティスほど目立ちません。

 したがって、「体幹を強くする」という目的ならば、より多くの根拠があるピラティスが適していると言えます。心身の調和や柔軟性を重視するならヨガが最適です。どちらも心身の健康を高める効果があるため、自身の目的に合わせて選択するのが良いでしょう。

◆老年医学・緩和医療科医師・山田悠史

やまだ・ゆうじ/1983年4月2日、岐阜県生まれ。2008年、慶應義塾大学医学部卒業。日本各地の病院の総合診療科で勤務後、2015年に渡米。現在は高齢者医療を専門に診療や研究に従事。NPO法人FLATの代表理事として、在米日本人の健康を支援する活動にも力を入れている。AIと医療をつなぐ合同会社Ishifyの共同代表。マウントサイナイ医科大学老年医学・緩和医療科医師。米国老年医学・内科専門医、医学博士。近著は『最新科学が覆す 体にいいのはどっち?』(サンクチュアリ出版)。

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