倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.106【最終回】「2度目の命日、夫の遺言」
漫画家の倉田真由美さんの夫で映画プロデューサーの叶井俊太郎さんが旅立ったのは2024年2月16日のこと。まもなく2度目の命日を迎える。夫の闘病から看取り、そして夫を失ってからの日常を綴った本連載も2年目に突入。命日を一つの区切りとし、新たに決心したことは?
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。新たな描きおろし漫画も収録した最新の書籍『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』も話題に。
夫が旅立ってまもなく2年
もうすぐ夫がいなくなって2年が経ちます。
このコラムは、すい臓がんを患った夫の生活を記す目的でスタートしました。既にがんが分かってから一年半以上経っていて、がんも末期に入ってからの連載開始でしたが、当時は「まだまだ夫は生きる、まだまだ死なない」と信じていました。
だって痩せてはいたけど食欲もあり、日常生活をこなし、仕事も続けられていたから。それまで何度もあった医師による余命宣告は、毎回外れてそれを越えてきたから。
でも、連載がスタートしてたった1か月ほどで夫は儚くなってしまいました。まだいっぱい書きたいことがあったのに、夫との生活が終わってしまいました。
書きたいことを書き尽くすまでは…と連載を続け、今に至ります。正直なところ、これだけ続けても書き切ったとは言い切れません。死んでしまったからその人にまつわるエピソードはもう生まれないかというと、そうでもないんですよね。いなくなったからこそ気づくことも多々あります。
とはいえ、さすがにそろそろタイトルを変え、新しいことにも挑戦しようということになりました。次回から新タイトルになります。このタイトルがなくなってしまうのを寂しく思う気持ちはありますが、夫も「いいんじゃない。そろそろ変えて」と言いそうな気がするので、2年目の命日を区切りとしたいと思います。
そういうわけで今回、一応最終回となります。何を書こうかと悩みましたが、私が感銘を受けた夫の言葉で、ちょっと意見を異にする人も多そうな言葉を記します。
感銘を受けた夫の言葉
夫のがんが判明してしばらく経った頃だったと思います。どうしてそんな話になったか前後は曖昧ですが、娘のことを話していた時だったと思います。夫が私にまるで遺言のように、はっきり宣言しました。
「ココには親孝行なんて絶対させないよ。絶対するな。自分の人生を生きろって言う」
今も、この時の夫の迷いのない、強い口調を思い出します。
きっとこれは、万人がそうだそうだと同意する内容ではないでしょう。親孝行をすることが大事と考える人も当然いるし、そうすることが生き甲斐の人もいます。でも私にとっては、「よくぞ言ってくれた」という共感しきりの言葉であり、「こういう人だから、私はずっと好きでいられた」と感動する内容だったのです。
夫は、その言葉通り自分もいわゆる孝行息子ではありませんでした。近くに住んでいても滅多に親に会いに行くこともなく、孫の顔もろくに見せず、薄情な息子と言われもおかしくない親子関係だったと思います。でも親にとって、子どもが自由に自分の人生を選び取り謳歌することが最高の喜びだとしたら、それを誰よりも実現していた夫は最高の親孝行をしていたとも言えます。
「楽しく生きろ」
もう一つ夫が娘に遺したのは、この言葉です。
そして私も、子どもにはそうやって生きてほしい、親(私)のことなんて気にせず好きなように生きてほしいと願っています。
夫とは大事な価値観が合っていたな。
しみじみそう感じます。
(次回から新シーズンとしてお届けする予定です。お楽しみに!)
