《仕事と介護を両立するビジネスケアラー》『あさイチ』キャスター駒村多恵さん、18年続ける母親のシングル介護のつらさは「私の判断が母の命に直結すること」 “持続可能な介護”を実現するために工夫していること
仕事をしながら家族の介護をする「ビジネスケアラー」が増えている。NHK総合の情報番組『あさイチ』サブキャスターとして活躍している駒村多恵さん(50歳)もその1人。父親を亡くして以来、母親と2人で暮らし、18年にわたりシングル介護を続けている。駒村さんが掲げる「持続可能な介護」について聞いた。 【全3回の第3回】
自分の判断が母の命に直結するという、シングル介護の重み
――要介護5の母親を1人で支えるために、意識していることはありますか?
駒村さん:介護はチームプレーなので、「シングル介護」といっても私1人で抱え込んでいるわけではないんです。例えば、介護食のセミナーに参加した際に、セミナー講師のお孫さんが偶然、我が家の近所だったご縁で、うちに来てくれることになりました。
せっかくの機会なので、普段から母をみてくださっている言語聴覚士さんやデイサービスの方などに声をかけて、うちでミニセミナーとして情報を共有しました。こうしてチームで動いていると、多くの人の目が入ることになり、母の異変も発見されやすくなります。
それに、「酸素飽和度がここまで下がっているけど、大丈夫だろうか」など、母の状態で判断に困ったら、24時間電話をしていい体制も作ってもらっています。要介護5になると、私の判断が母の命に直結しますから、シングル介護の大変さはそこにあります。だから常に、母だったらどう思うのかと考えつつ決断をしなくてはいけない。その重みを感じています。
――18年も介護をされていると、介護関連の環境は変わりましたか?
駒村さん:いろいろと変わりましたが、例えば、スマートウォッチの登場ですね。要介護1の時ですが、母がベランダで転んでしまい、起き上がれなくて6時間ぐらいそのままになってしまったことがありました。
仕事の合間に電話をした際、母が出ないのでおかしいとは思ったのですが、まさかそんな状況になっているとは想像もしませんでした。当時スマートウォッチがあったらSOSができたのにと思います。睡眠時間や深さもわかるので、健康状態をトラッキングする意味でも便利ですよね。
ポジティブな声掛けが好循環を生む
駒村さん:私が助かっているのは、地域包括ケア病棟です。介護をしている人が急病になったり、冠婚葬祭で出かけたりする時に預かってもらえる病床があるんです。私もコロナになってホテル療養をした時に、母がお世話になりました。
また、介護をしている人の心身が疲弊して、体調を崩すケースもありますよね。そうなる前に、介護者が休憩をとれるようなレスパイトケアが注目されていて、地域包括ケア病棟ではレスパイト入院もできます。
ただ、病院の病床削減策が検討されている中で、今後の成り行きは少し心配しています。介護をする側にとって、万が一の時に頼れる「お守り」のような存在ですから。
――介護に関する講演会もされていますが、どんな話をされていますか?
駒村さん:例えば、声の掛け方です。親子関係だと、ついキツく言いがちですよね。ポジティブな声掛けをした方が、最終的には自分が楽になります。例えば、車椅子に移動させるとき、とても重いですよね。こんなとき、私も母も頑張っているわけだから、「頑張ったね!」と母を褒めながら、自分に向けても言っている。
自分への言葉も兼ねるようにすると、照れずに声をかけやすくなります。いい声掛けをすると、本人もやる気になって、結果的にこちらもやりやすくなるんです。好循環が生まれるんですよね。
「持続可能な介護」な介護が大切
――介護をしている人にメッセージをお願いします。
駒村さん:「絶対に1人で抱え込まないこと」「自分を大事にすること」、この2つは絶対です。そして、「なるべくあきらめないこと」。悲しいけれど、自分のほうが長く生きるはずです。目の前の介護に全力を尽くしがちですが、残りの自分の人生もあることを頭の片隅に置きながら介護をしないと、「持続可能な介護」にならないと思っています。
無理をしたいびつな介護では、どちらも潰れてしまいます。だから、2人とも元気でいられることを目標にしています。
18年介護を続けてきて感じることは、母が元気でいることは当たり前ではない、ということです。朝起きると母の体温確認から始まり、息があるとほっとします。だから、デイサービスから無事に帰ってくる母の姿を見るだけで、すごく嬉しいんですよ。
今年も誕生日を迎えられたとか、一緒に桜を見ることができたとか、当たり前に過ごしていることは、当たり前ではありません。その思いは、年数を重ねるたびに強くなりました。
◆フリーキャスター・駒村多恵
こまむら・たえ/1975年2月18日、大阪府生まれ。フリーキャスターとして報道・情報番組を中心に活躍、素顔を引き出すインタビュアーとして高く評価される。実母の在宅介護を約15年以上続けており、仕事をするかたわら介護福祉士や介護食士の資格を取得。現在はNHK「あさイチ」のサブキャスターとして、料理・園芸コーナーを担当する他、介護に関する講演なども行う。
撮影/小山志麻 取材・文/小山内麗香
