フランスベッド、ものづくりの根底にあるのは「介護を楽にしたい」新たな施設向けサービスも【想いよ届け!~挑戦者たちの声~Vol.6後編】
1949年(昭和24年)に町工場から始まったフランスベッド。その社名の由来ともなったベッドの登場から約70年。利用者と家族に寄り添った新たなベッドを開発し、同時にレンタル事業も拡大を続けている。同社のものづくりの根底にある想い、そしてこの先のビジョンとは。
挑戦者たち/プロフィール
フランスベッド・取締役常務執行役員 メディカル事業本部長 米本稔也さん
大学では社会福祉学を専攻し、1991年フランスベッド入社。医療機器や介護ベッドなどの福祉用具のレンタル事業を手がけるメディカル事業に長年従事し、2025年取締役常務執行役員となる。趣味は「夫婦で街歩きや公園散歩」
道具やサービスの力で「介護を楽に」
フランスベッドがレンタル事業で提供するのは、介護生活をサポートするベッドをはじめ、多彩な福祉用具がある。そのものづくりやサービス提供の根底にあるのが「介護を楽にしたい」という想いだ。
レンタル事業を統括するフランスベッド・取締役常務執行役員でメディカル事業本部長を務める米本稔也さんは明るい笑顔で語る。
「40年以上前にレンタル事業に着目した現社長の池田茂の考えは、『介護を楽にしたい』というものです。そして、より安全に、より快適に、これからの“老老介護”の時代も視野に入れながら、とにかく介護を楽にしたいというのが我々の想いです」
その想いを実現するため、介護される人、介護をする人すべてに寄り添うアイテムが生み出され、多くの人たちに支持されている。
「かつての日本は“布団からベッドへ”の時代でした。介護が必要になった場合、布団で寝ていた人はケアがしやすいようにと、介護用のベッドに移ることになります。それに対して、現在は“ベッドから介護ベッドへ”と時代が変わってきました。
元気なときにはスプリングの利いたベッドで快適な眠りを体験していたのに、介護生活に入ると硬めの素材の介護ベッドに変わってしまったら、それまでの寝心地を手放すことになる。そんなのイヤじゃないですか。
ですから当社では、従来の寝心地をそのまま体感できる介護ベッドを提供したいと考えています」
ベッドからの転倒の不安を解消したい
本人もケアをする人も「介護を楽」に。同社の介護ベッドにはそんな想いが込められている。たとえば、床から11cmの低さまで床板が下がる『超低床フロアーベッド』がある。
「認知症のかたなど、自分でもわからないうちにベッドから降りたり、立ち上がろうとしたりして転倒するケースが多くあります。
それなら最初から、落ちてもケガをしない高さで寝てもらえばいいのでは、という発想で開発したのが、このベッド。
実は低いベッドの開発はかなり難しいのですが、当社の技術で実現できたことで、世の中に広く受け入れられています。家庭はもちろん、病院施設での介護スタイルも大きく変えたベッドだと考えています。
ほかにも、座位だけでなく、立ち上がりまでをサポートする『マルチポジションベッド』は、介助する人も楽になるように設計されています」
こうしたベッドはもちろん介護保険を使ってレンタルすることができる。
フランスベッドの社会貢献活動の輪
「介護を楽にする」想いを掲げ、同社が長年取り組んできたことの中には、「フランスベッド・ホームケア財団」の活動もある。同財団は、当時のフランスベッド会長・池田実さんと、現社長の池田茂さんの考えに共鳴する識者らが賛同し、1990年に設立された。
「在宅ケアの推進と質向上に資する研究や事業に助成を行い、在宅ケアを広げていくことを目的とした活動を行っています。
日本の介護制度において、ケアマネジャーの導入に貢献された白澤政和氏も、財団の設立当初のメンバーとして参加されています。
私は、入社当時、白澤先生が書かれたケアマネジメントに関する著書を読んで、感銘を受けました。社会全体で『在宅ケア』をより良いものにしていきたいという想いがあります」
かつては研究や事業への助成のみ行っていたが、近年はボランティア活動への助成もスタート。人手不足が深刻化する中で在宅ケアにフォーカスし、時代のニーズに合わせて新たなチャレンジに取り組む活動を積極的に支援しているという。
これまでの助成件数は研究677件、事業239件、ボランティア活動113件の計1029件に上る。また、在宅ケアに関する委託調査・研究事業、人材育成に向けた教育研修事業や、最前線の取り組み事例と人を紹介する年4回の季刊誌発行も行っている。
この先の未来「おひとりさま」の介護も楽に
「今後は独居の高齢者、いわゆる『おひとりさま』や、認知症のかたも増えていくことが予測されます。そうした状況において、どんな商品やサービスが求められているのか、フランスベッドとして何ができるのか、時代の変化にあわせたサービスの開発が必要です。
その先には、介護の担い手が減る時代も見据えなければなりません。介護人材が不足していく中で、福祉用具の価値をさらに高めていくためには、IOTやAI(人工知能)など最新テクノロジーの検討・開発を進めていく必要もあるでしょう。
介護ベッドで使うエアマットの空気量を体の動きに応じて調整できるようにAIを活用したり、トイレのタイミングをAIで予見しそのタイミングで効率的にケアができるような仕組みにしたり、さまざまな可能性が考えられます」
介護施設の暮らしに寄り添う新たなサービス
ベッドを始めとした新たな福祉用具の開発だけでなく、レンタルサービスのブラッシュアップや拡大にも力を注いでいる。
「新たに介護施設の暮らしに必要な家具などのレンタルサービスを始めました。
有料老人ホームなど家具を持ち込む施設の場合、入居が決まると、慌てて必要なものを用意するケースもあります。一方で、施設の退去時には用意したものが不要になってしまうこともありますし、処分するにもコストがかかります。そうした負担を抑えるためにも、家具やテレビなど施設での暮らしに使うものをレンタルするサービスを一部エリアから試験的に始めています」
ベッドを介して医療や介護の現場と繋がってきた米本さん。彼が大切にしていることは、人の暮らし、介護・健康を支えるサービス。質の高い睡眠は、介護の快適さや心身の健康、そして生活の質を高めるために欠かせない要素の一つだと語ります。
「ベッドは寝心地だけでなく、眠りの質も左右する大事なもの。当社の介護ベッドはその点、自信を持っておすすめできます。在宅介護中のかたにはとくに心地よく過ごしていただきたいですから、ベッド・マットレス選びは大事だと思います。
我が家では私も妻も、ちょっといい自社のベッドを使っています。健康な人も介護を必要としている人にも、睡眠環境は大切。質の高い睡眠も考えた介護ベッドを活用してほしいですね」
撮影/柴田和衣子 取材・文/斉藤敏明
