「お客様の笑顔に救われた」フランスベッド、レンタル事業の拡大を支えたのは地道な訪問活動だった【想いよ届け!~挑戦者たちの声~Vol.6中編】
フランスベッドでは介護用ベッドのほか車いすや福祉用具などのレンタル事業を展開している。1983年に始まったこのレンタル事業の歩みは、決して平坦なものではなかった。同事業の普及や拡大に奔走してきた担当者に想いを聞いた。
挑戦者たち/プロフィール
フランスベッド・取締役常務執行役員 メディカル事業本部長 米本稔也さん
大学では社会福祉学を専攻し、1991年フランスベッド入社。医療機器や介護ベッドなどの福祉用具のレンタル事業を手がけるメディカル事業に長年従事し、2025年取締役常務執行役員となる。趣味は「夫婦で街歩きや公園散歩」
ベッドをかついでお客様の自宅へ
入社してすぐにサービスセンターに配属され、「現場で汗をかいていた」のは、フランスベッド・取締役常務執行役員でメディカル事業本部長を務める米本稔也さんだ。
「1991年に入社して最初に手がけた仕事が介護用レンタルベッドの配送でした。入社してまもなく、ベッドをかついでお客様のご自宅を訪問するとは夢にも思っていませんでした。
夏の暑い日にベッドをかついで、汗をかきながら、お客様のご自宅にベッドを搬入して、別のお客様のご自宅にはベッドを引き取りに伺って…。
ベッドを回収したらメンテナンスが必要なので、ベッドを消毒して汚れを落とす、これも自分たちでやっていました。現在はベッドのメンテナンスの専門拠点もありますが、当時は1台1台、お届けもメンテナンスも社員みんなで担っていました。
当時、人気だった療養ベッドにはトイレ付きのタイプがありまして、使い込んだベッドはトレイも汚れていますから、それをキレイになるまでゴシゴシ洗ってね。
バブル時代ということもあって、証券会社や他業界に入社した大学時代の友人たちが華やかなに見えてね、『俺はなぜトイレを洗っているんだろう』なんて自問自答することもありました。だけど、お客様の笑顔を見ると救われるんですよ。
いつも笑顔で『ありがとう』と言ってもらえましたし、時には感謝の言葉だけでなく、チップを用意してくださるかたまでいらっしゃいました。
何より、どのお宅に行ってもこちらが想像する以上に喜んでもらえて、利用者のかたやご家族との心の交流も生まれる。ああ、自分は幸せな仕事ができているんだ、と実感するようになりました」
モットーは「迅速、安心、安全」
お客様のご自宅を訪問し、地道な努力を続けてきた米本さんの心に刻まれているのが、レンタル事業を始めた現社長の池田茂さんが繰り返し伝えている「迅速・安心・安全」の3つの言葉だという。
「福祉用具は、利用者が必要性を強く感じたときにレンタルするものなので、とにかく迅速にお届けすること。そして利用者が安心できるように、安全で品質のいいものでなくてはならない。さらに、引き取ったものは高い品質で再生すること。これらは、我が社の福祉用具のレンタル事業の根幹となる理念です。
1983年に始まったレンタル事業が軌道に乗ったのは12年目だった。
「12年目にようやく黒字化に転じた要因としては、レンタルサービスが東京都府中市をはじめとする自治体に採用されたことがあげられます。まず医療・介護施設への導入が進み、ご自宅に帰ってからもベッドをレンタルしたいという需要が増えていきました。
当時提供していたトイレ付きの療養ベッドがヒットしたことも大きかったと思います」
さらに事業の成功を後押ししたのが2000年4月1日に始まった介護保険制度だ。
「ただでさえ高額なベッドですから、介護保険でレンタルできる仕組みは、事業の追い風になりましたね」
ベッドから始まり、車いす、手すりなど在宅介護における福祉用具全般のレンタルを行うメディカル事業は成長を続け、2025年3月期決算において全売上の約67%、実に3分の2に達する割合を占めるまでになっている(フランスベッドホールディングス株式会社実績)。
「配送する人にも優しい」新たな視点
サービスが広がる中で、さまざまな種類の介護用ベッドをリリースし、多くの利用者に喜ばれている。
「レンタル専用に開発した商品に『RaKuDa(ラクダ)』という在宅介護用の電動ベッドがあるんですが、こちらは利用者さんにはもちろん、配送する人にとっても便利な機能を備えているんです。
寝心地や操作だけでなく、お掃除やお手入れもラクにできる設計で、利用者のかたにもメリットがあるのですが、何より軽く、持ち運びや分解もしやすいという特徴があります。
分解後も車の中に収めやすく、ベッドの搬送・設置やメンテナンス、引き上げを行うのがラクだと、事業者のかたにも喜ばれています。
私もかつて自らベッドを運び、メンテナンスをした経験があるからこそ実感しているのですが、使う人も運ぶ人にもメリットがある。これはレンタル用品にとって最大のアドバンテージだと思います」
福祉用具はレンタルだけを行う事業所もあるが、フランスベッドは物づくりも行うメーカーだからこそ叶えられることも多い。
「ご自宅を訪問し、利用者さんと接している中で、福祉用具が抱える課題や問題点も見えてくるんです。
たとえば、車いすから立ち上がるときにブレーキをかけ忘れていると事故につながる可能性があります。実際に在宅はもちろん、介護福祉施設や医療施設でもブレーキのかけ忘れが多いという現場の声を聞きました。そこで、立ち上がると自動的にブレーキがかかる車いすを開発しました」
「実は、学生時代から社会福祉を学んできて、卒論のテーマに選んだのが『老人福祉産業』だったんですよ。ビジネスを通じた社会貢献に興味があったんです。高齢者、療養や介護、闘病中の人たちの生活をサポートするのが、ベッドを初めとした福祉用具なんです」
汗を流しながらお客様のご自宅を一軒一軒訪問し、ベッドのメンテナンスにも心を尽くしてきた。そんな若き日の米本さんの地道な活動は、現在の事業を統括する上で礎になっているのかもしれない。(次回につづく)
撮影/柴田和衣子 取材・文/斉藤敏明
