《火災のあった2025年を振り返る》「84歳とは思えない」と驚いた林家ペーさんの頭の回転の速さと足の速さ「タクシー運転手に見せた“神技”」
2025年、自宅マンションが火災に遭った林家ペー・パー子夫妻。火災後、さまざまな対応に追われたが、そうした中で「高齢者とは思えない」数々の行動があったという。火災後、2人を支えた元マネジャーでオバ記者ことライターの野原広子氏が振り返る。
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「本当に84歳?」と首を傾げることばかり
こんなことってあるんだなと、この3か月はそればっかりだ。ひょんなことからご存知、林家ぺー・パー子夫妻の自宅マンション火事の後処理をお手伝いすることになって、火事発生の9月19日から10月はほぼ連日。11月に入ってからも折々にぺーさんと会って、待ったなしの問題について意見を言ったり、話し合ったりしてきた。
今回の火事で公表されて私も初めて知ったんだけど、ぺーさん84歳、パー子さん77歳。世間的にはちゃんと高齢者だよね。だけど3か月はこの人、ほんとにそんな年なんだろうかと、首を傾げることばかりだった。
たとえば頭の回転の速さと足の速さ。先日、乗ったタクシーが女性ドライバー。「ああ、珍しいねぇ。都内に女性ドライバーってそんなにいないでしょ。どうなの?」とぺーさんが早口でまくしたてる。「ここ数年は劇的に増えてますよ」と私が言うと、「あ、そうなの。運転手さん、どうなの?」とぺーさん。
「実は私、お客様をお乗せするのは3回目なんですよ」と女性ドライバーが言うと、「そう! それはびっくりだねぇ」と言ったかと思えば、「ところで運転手さん、誕生日いつ? ああ、じゃあ◯◯といっしょだ。あと…」。数秒の間に有名人の名前をズラズラと4人あげて、降りぎわに振り返って政治家の名前をひとり付け加えたの。
そりゃあ、もう、こんなことをされたら誰だって喜ぶわよ。てか、なんでこんなことが出来るのか、記憶力のない私には神技としか思えない。
既読にならないLINE
「頭の回転と歩く速さはいっしょ」と昔、聞いたことがあって足の早かった私は内心「そうだ、そうだ」と思っていたけど、最近は同世代にも追い抜かれる。なのにぺーさんの足の速さ、確かさはどうよ。
さらに火事の直後は、今にして思えば、ハイテンションだったんだね。一瞬だけ、シュンとした顔を見せたけれどあとは元気。時には「自分の立場、わかってるの?」と言いたくなるような洒落を飛ばして、まわりをハラハラさせた。
でも、これも今にして思えばだけど、ぺーさんも必死だったんだなと思う。そう思い知る出来事があったの。
電話やLINEではやり取りしているものの、どちらもすぐに通じるわけではなく、特にLINEは何日も既読にならないことはよくある。既読になっても返信がないとか。
余談だけど(ぺーさんの口ぐせ)それがとても困ることもある。「ぺーさん、LINEの返信、よろしくお願いしますよ」と言うと「あはは、そうなんだよね。各方面から叱られていて、はいはい、善処します」って、政治家のようなことを言ってケムに巻くの。
それでも考えようによっては、火事という”大災害”にあった84歳が、LINEをして、Xにも投稿しているというだけでもすごいんだけど、先日の「えっ?」と驚いたこと話を元に戻す。
カラオケで今後のことを話し合ったのに…
ぺーさんと周囲に気兼ねなく話をしたくて、赤羽のカラオケ店『まねきねこ』に入ったのよ。で、「ここは久しぶりですね」と言うと「えっ? 野原さんとここに来たことあるの?」とキョトンとしている。
「えっ?」と言いたいのは私のほうよ。火事の直後、ぺーさんとは連絡がつかず、やっと会えて編集者のMさんと私と”三者会談”をしたのがここだったじゃないの。Mさんとはその後、いろんな場面で二人三脚で乗り越えて来たんだけど、それはともかく、火事の6日後、ここで今後のことを話し合ったことを覚えていない?
「ぺーさん、これ見て」と私はスマホの写真を見せた。記録のため、Mさんが撮影したものだけど、ぺーさんはそれをまじまじと見て「えっ! この衣装一枚しかなかった時だ。25日ってことはホテルを転々としていた時だ。ああ、でもまったく思い出せない。そう、ここに来たの?」と言うの。
ここで話したことの断片をいくつか並べたけれど、困惑するばかりでね。途中からつらそうな顔になってきた。それだけ、火事はショックだったんだなとあらためて思ったわ。
超高齢化社会。“うっかり”で大小の事故を引き起こす危険は誰だってある。それを防ぐにはどうしたらいいか。ぺーさんと関わっている間、ずっと考えてきた。それでなくても子供の頃から「おっちょこちょい」と言われ続けてきた私。車の運転免許を取らなかったのも、うっかりで取り返しのつかない事故を起こすに違いないと思ってきたからよ。
けれど、ひとつだけ最近、やり出したことがある。それは約束の時間より1時間早く家を出ることだ。あわてて時間ギリギリに飛び出していいことなんかひとつもないもの。荷造りもひとつひとつ、確かめながらていねいに。それでも忘れ物はするんだけど、あわてた時よりマシ。
そんなわけで2026年は私も69歳で“プレ古希”だ。老いの階段を足元を確かめながら、着々と登り降りしたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いします。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。2021年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。実母の介護も経験している。
