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暮らし

「介護未満、健康以下」人気ブロガー・カータンさんほか介護のプロが教える高齢の親の異変に気付くサインとは?

 老いていくということは体のあちこちに出る不調との闘いでもある。「健康」ではないけれど、「介護」が必要なわけではない、その狭間にいる親とつきあうことは決して簡単ではない。できないことがどんどん増えていく「介護未満」の親とのつきあい方を伝授します。

教えてくれた人

太田差惠子さん/介護・暮らしジャーナリスト、カータンさん/ブロガー・著書に『健康以下、介護未満 親のトリセツ』(KADOKAWA)

老化現象と見分けが難しい「介護未満」の親

 まだ元気だと思っていても、親は確実に老いていく。今夏、1年ぶりに実家に帰省した牧野沙織さん(仮名・48才)は、75才の母の変化に愕然とした。

「ずいぶんやせたように見えたので、“ちゃんと食べなきゃダメよ”と言ったら、温厚だった母が“そんなのわかってるわよ!”と急に怒りだしたんです。部屋も散らかっていたので、よかれと思って片づけ始めたら、“勝手に触るな”と反論されて、こちらもイライラ。

 足腰が弱くなってうまく家事がはかどらないことでストレスを感じているのかもしれませんが、八つ当たりをされても困る。今後のことを思うと不安で仕方ありません」

 まだ介護が必要なほどではないものの、その状態に近づいている「介護未満」の親。老化現象と見逃さず、予兆に気づくことが大切だと話すのは、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんだ。

「離れて暮らす子供が帰省したら、親御さんは張り切るケースが多い。それなのに、家の中が雑然としていたり怒りっぽくなっているなど異変があれば老いは相当進んでいる可能性があります。予兆の段階で気づかずにいると、認知症や体の衰えがどんどん悪化していくので、早めに対応することが大切です」

「親子の関係が逆転」。介護未満になった親のトリセツとは

 介護未満とは、いったいどんな状態なのか。

「疲れ方が早い、朝起きたときに体中が痛いといった体の不調や、物忘れがひどいなどの認知機能の低下はあるけれど、まだ介護なしでも生活できるというのが『介護未満』。よくつまずく、食事をあまりとらない、ほとんど外出せずにベッドやソファで横になっている時間が多くなる、といったことも見逃せない予兆です」(太田さん)

 ブロガーのカータンさんは、自身の体験をもとに『健康以下、介護未満 親のトリセツ』(KADOKAWA)を著した。

「最初に母の異変に気づいたきっかけは、冷蔵庫を開けたときのにおいでした。母が外出した隙に姉と一緒に中身を確認すると、賞味期限切れの食べ物がギッシリ。腐った高価なステーキ肉が10枚も出てきて、“くさや”並みの悪臭を放っているものもありました」(カータンさん・以下同)

 ゴミの分別ができなくなって室内にためっぱなしになっていたゴミは、カータンさんが持ち帰って分別作業をした。

 何よりもつらかったのは、これまで頼りにしていた親が頼りにならなくなり、「親子の関係が逆転してしまった」ことだという。

「年をとっても親は元気なものだと思い込んでいたんです。認知機能が衰え始めていても、うちの母は天然なところがあったので、姉とも“まあ、いつものことだよね”と思おうとしていました。親の老いを否定したい、認めたくないという気持ちから、物忘れも含め生活力が低下していく母に“どうしてできないの?”と不平不満や暴言を吐いたこともありました」

 本人が衰えを認めたくないために、意固地になるケースも多い。兵庫県在住の多田恭子さん(仮名・53才)が打ち明ける。

「82才の母は体は元気でよく出歩くのですが、時々外出先で“迷子”になって、私のところに連絡がくるんです。私も仕事をしているし、介護サービスを受けたいから要介護認定を申請したいのですが、母は“介護なんていらない”“他人の世話にはなりたくない”と言って耳を貸してくれません」

 認知機能は衰えていないのに、足腰が弱っているのも“不幸なケース”になりうる。埼玉県在住の福田由子さん(仮名・58才)が言う。

「母は自分が動けないからと、いちいち呼びつけては“アレを買ってきて”“そこを片づけて”と命令ばかり。最初のうちは親孝行とやっていましたが、本人も自分自身にイライラするのか口調が荒くなって面倒をみきれなくなっています」

 自分はまだ健康だ、若い頃と変わらないーー頭ではそう思っていても現実は違う。その齟齬(そご)や、脳機能の衰えから怒りやすくなり、暴力的になるケースも少なくない。

認知機能が低下した母を「3才児」と思い込めば理解も深まる

 介護未満の母を理解するうえで、カータンさんにはとても役立つきっかけがあったという。

「私の娘たちがK-POP好きなのですが、私は名前を覚えられないし、顔の区別もつかない。娘たちがその話題で盛り上がっていても入っていけないので、つい別の作業をしてしまう。これって母も同じだったんじゃないかと思ったんです。

 家族みんなで実家で食事しているときに母は台所でせわしなくしていて、テーブルにつこうとしなかった。母も私たちとの会話のキャッチボールが難しくなっていて、それを知られるのも自分で認めるのも嫌だったのかもしれない。娘のおかげで、私も母の気持ちに気づくことができたんです。

 それからは“母と同じ年齢になった私”はどんな気持ちなんだろうと考えるようになり、接し方がちょっと柔らかくなれたように思います」(カータンさん・以下同)

 ゴミの分別で苦労していた頃には「母は3才児」だと思うようにしていたというカータンさん。悩みをひとりで抱えこまないことも大切だと話す。

「母の認知機能が低下し始めた当時、私にはなんでも言える姉がいたので、本当に助かりました。私がまだ子育て中だったので、姉ががんばってくれていた。その後、姉は病気で亡くなりましたが、“ひとりで抱えちゃダメ、プロに頼むのよ”と私に言っていました」

写真/PIXTA

※女性セブン2025年11月6日号
https://josei7.com

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