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連載

認知症の遠距離介護を“照明の使い方“でスムーズにする6つの工夫と対策「転倒や場所の勘違い予防にも」

 岩手・盛岡に暮らす認知症の母を遠距離介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。最期まで自宅で暮らしたいと願う母のために、便利な道具を駆使して、遠距離介護を続けている。中でも「照明」の工夫が功を奏し介護がラクになったという。その使い方や工夫とは?

執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)

介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(82才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。最新著『工藤さんが教える 遠距離介護73のヒント』が11月17日発売。
ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/ Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

寝室の照明を買い替えた3年前の話

 3年ほど前のこと、母が寝室の照明を急に消せなくなって、代わりにわたしが対応したことがありました。最初は認知症が進行して消し方を忘れてしまったのだと思ったのですが、そうではありませんでした。

 母は白内障の影響で視界が白くかすんだりぼやけたりして、白い照明のひもを見つけられなかったのだと思います。そこで寝室の照明を買い替え、ひもの色を黒にしました。また白内障の手術をしたおかげで、母は照明を消せるようになりました。

居間にも新たな照明を導入して母の生活をサポート

 このたび、母がテレビを見て過ごす居間の照明も買い替えました。

 寝室の照明も、居間に新たに購入した照明にも、電源のオンオフや明るさ調整、常夜灯の操作ができるリモコンがついていますが、母は慣れないリモコン操作はできません。

 またリモコン本体をなくす可能性もあります。そこで、我が家では照明を遠隔操作しています。寝室に加えて、居間の照明にも活用することで、遠距離介護がグッと快適になりました。

照明の遠隔操作「6つのタイミングとメリット」

 我が家では、エアコンなど家電を遠隔操作するために「スマートリモコン」を活用しています。家電を付属している赤外線リモコンならたいていこの仕組みに対応していて、スマホのアプリからも操作できます。

 わたしが東京にいるときは、次の6つのタイミングで、実家の照明を遠隔操作しています。

1.照明の消し忘れをサポートする

 母が居間の照明を消し忘れて、寝室で寝てしまったり、朝起きたときに寝室の照明を消し忘れて、居間でテレビを見たりします。実家に設置してある見守りカメラで、照明の消し忘れを確認できるので、遠隔操作で照明を消しています。

2.母を起こすために遠隔で照明をつける

 母を起こすために、遠隔で照明をつけています。それまでは固定電話を鳴らしたり、見守りカメラを使って声掛けをしたりして母を起こしていたのですが、音に全く反応しない日がありました。照明をつけるとまぶしいと感じるようで、母はすぐに起きてくれます。

3.居間のコタツで寝てしまわないようにする

 居間のコタツで母を寝てしまわないようにするため、照明を遠隔操作しています。コタツで寝るのは身体にもよくありませんし、排泄の心配もあります。寝室は防水シーツなど尿漏れ対策ができているのですが、居間はしていません。尿漏れがあるとコタツ布団に加えて、畳まで汚れてしまいます。

 わたしが帰省中ならすぐに対応できるのですが、ヘルパーさんに負担をかけるわけにもいきません。母がコタツで寝てしまったら遠隔で照明をつけて起こし、電話をして寝室で寝るよう促しています。

4.母を寝室に誘導する

 母は寝る前に、家のトイレに入ります。トイレが終わると、母は居間に戻ってテレビを見始め、なかなか寝てくれないことがありました。

 そこで母がトイレに行っている間に居間の照明を消して、寝室の照明をつけるようにしたところ、トイレから出てきた母は、明かりがついている寝室へ移動してくれて、そのまま布団に入って寝るようになりました。

5.母が寝静まったあとに常夜灯をつける

 母は寝室を真っ暗にして、寝る習慣があります。そのため、夜中に布団の真横にあるポータブルトイレを見つけられずに、トイレ以外の場所で用を足し、畳が汚れることがありました。

 そこで母が寝静まったあと、常夜灯をつける設定をスマートリモコンでしました。常夜灯で寝室が少し明るくなったおかげで、母がポータブルトイレの存在に気づき、トイレ以外の場所で用を足すこともなくなりました。

6.デイサービスからの帰宅に合わせて照明をつける

 日が短くなってきたので、母がデイサービスから帰ってくる時間帯はもう真っ暗です。部屋の照明をつけないと歩けないし、転倒の危険もあります。

 母が帰宅する時間に合わせて、居間の照明がつくようスマートリモコンで設定しました。家に着くと部屋が明るいので、母は暗闇の中で照明のひもを探す必要がなくなりました。

 このような6つのタイミングで照明を遠隔操作することで、母を起こしたり寝てもらったり、夜間のトイレの自立を促したり、転倒のリスクを減らせるようになったのです。照明のリモコン機能が、まさかここまで役立つとは思っていませんでした。

照明を買い替えたもう1つの理由

 照明を買い替えた理由がもう1つあります、それが蛍光灯の2027年問題への対応です。

 2026年1月より蛍光灯の製造・輸出入が規制され、2027年末までに製造・輸出入が禁止になります。そのため経済産業省は、LED照明への切り替えを推進中です。蛍光灯は継続して利用できますが、蛍光灯が切れてしまったら交換できなくなりますし、LEDのほうが節電になるので、わが家では早めにLEDへの切り替えを進めています。

 母がいる時間の長い居間と寝室はLEDに交換済で、次に使用頻度の高いキッチンをLEDにしようと思っています。キッチンの照明も、居間や寝室と同じように遠隔操作できるリモコンつきの照明にするつもりです。

 実家を総点検したところ、玄関や客間など多くの場所で蛍光灯を使っていました。まだ時間はあるので、少しずつLEDへ変更していきたいと思っています。

 今日もしれっと、しれっと。

【新刊記念イベント】工藤さんに「直接」聞いてみよう! 介護するココロをやわらかくするヒント 東京・品川フラヌール書店にて12月13日開催(オンライン配信あり)https://harukara-reading.stores.jp/items/68e1e5c840aa62e0559124ac

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