認知症の前段階である“老害脳”に要注意!予防のポイントは「自己肯定」と「睡眠」|“老害脳”セルフチェックで自分の脳の状態を確認
高齢者の約8人に1人が患っていると言われている「認知症」は、“老害”とされる行動が関係しているという。例えば、「面倒くさい」と考えるのをやめたり、過度なストレスや不安を過度に感じる生活が続くと認知症を引き起こす“老害脳”になりやすい。最新研究を元に脳内科医の権威が“老害脳”について解説する。
教えてくれた人
加藤俊徳さん/脳内科医・加藤プラチナクリニック院長
「面倒くさい」が口癖なら要注意 思考停止が“老害脳”を進行させる
近年よく耳にする「老害化」も認知症予防において特に注意したい。これまで1万人以上のMRI脳画像診断を行なってきた脳内科医の加藤俊徳さん(加藤プラチナクリニック院長)はこう言う。
「自己中心的で他者の言葉に耳を傾けないなど、一般的に“老害”とされる言動の背景には、脳の特定領域の機能低下があり、そうした状態を私は『老害脳』と呼んでいます。認知症の前段階にはMCI(軽度認知障害)、その手前にSCD(主観的認知機能低下)がありますが、後者は本人が記憶力の低下などを感じても検査で異常が出ません。『老害脳』はこのSCDに該当する認知症の前段階と考えられるため、決して『年のせい』と放置してはいけません」(加藤医師、以下「」内同)
要注意なのは「面倒くさい」が口癖になることだ。「新しいことや少し複雑な課題に直面した時、『面倒だ』と回避するクセがつくと脳は思考をサボるようになり、自分の考えだけで判断する頑固な“老害脳”に進んでしまいます」
対処法はあるのか。
「脳が老化すると承認欲求が強くなりがちで、満たされないとストレスが溜まり、ますます脳の硬直化が加速してしまいます。そうした状況を作らないために実践したいのが自分を褒める習慣を身に付けることです。日常の些細なことでも構いません。ある種の自己暗示のようなものですが、『よくやった!』と自身をポジティブに肯定することで、脳はさらに成長しようと活性化します」
65才以上は睡眠時間8時間以上を目標に
そうしたポジティブな思考の土台となり、認知症予防の鍵ともなるのが「睡眠」だという。
「年を重ねると睡眠時間が短くなりがちですが、アルツハイマー型認知症の原因とされる脳の老廃物は睡眠中に排出されるため、睡眠不足は認知症対策にとって大敵。65才以上なら目標は8時間以上です。私も60才を機に睡眠時間を5時間台から9時間台まで大幅に増やしました」
睡眠時間が長くても、日中に眠気を感じる場合などは対策が必要になる。
「いびきをかく、日中に強い眠気を感じるなどの症状は閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の疑いがあり要注意です。OSAは睡眠中に脳が酸欠状態になるため、認知機能の低下に直結します。専門医の適切な治療を受ければ劇的に改善するため、放置してはいけません」
100才までボケない脳をつくるのは、自分自身の生活習慣であることを肝に銘じたい。
認知症につながる「老害脳」チェックリスト
あなたの脳の“老害度”をセルフチェック! 当てはまる項目はいくつある?
※加藤医師の著書『老害脳』(ディスカヴァー携書)を基に作成
【1】人の話を聞くより、自分の話をする方が多いと感じる
【2】自分の成功体験を年下に押し付けがちになる
【3】AIやデジタルツールなど最新の技術を使うことに抵抗感
【4】新しい音楽や映画を楽しむ機会が少ない
【5】最新ニュースやトレンドに関心を持たなくなった
【6】自分と異なる意見にイラっとし、反発することがある
【7】人にものを伝える際、口調がきつくなることがある
【8】若年者との会話でジェネレーションギャップを強く感じる
【9】外見を気にしなくなり、洋服や理美容への支出が減った
【10】新しいことを始めたいと思っても、億劫で実現せず
<診断結果>
【該当1〜2個】→脳の若さを保てている
【該当3〜5個】→要注意
【該当6〜8個】→初期の徴候あり
<注意!>怒りっぽい、「面倒くさい」が口癖になったら「老害脳」の進行を疑って
【該当9個以上】=周囲に影響を与えている可能性大
<注意!>認知症を防ぐため「柔軟な脳」を取り戻す努力を!
※週刊ポスト2025年10月17日・24日号
●認知症の症状と予防法「8つの脳内番地別・脳を鍛えるエクササイズ」【専門家解説】
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●《認知症予防にも》シニア世代が1日に摂るべきたんぱく質の3分の1量が摂れる!医師が考案した「長生きスープ」レシピを紹介