「母、デイサービスのリハビリを初体験」NO老いるLIFE~母と娘のほんわか口福日誌~第55話
慢性膵炎を抱える母と山口県で暮らす漫画家で栄養士の資格を持つうえだのぶさん。最近、脚の痛みに悩んでいた母のために、のぶさんが見つけたのが、要介護認定がなくても通える「リハビリ型デイサービス」だ。まずは、母を連れて無料体験に参加してみることに――。
初めてデイサービスのリハビリを体験
やってきました「リハビリ型デイサービス*無料体験日」。
おニューのジャージで緊張気味の母を車で連れて行き、私も見学させてもらうことに。到着すると、こちらもジャージ姿のスタッフさんが「うえださんですねー」と迎えに出てこられました。
建物に向かっておぼつかない足取りで歩いていく母の後ろ姿を見ていると、認知症でデイサービスに通っていた祖母と重なって見えてしまい、なんだかせつない気持ちに。膵臓の手術の時とは違う「とうとう、こーなっちゃったかぁ」みたいな寂しさというか…。
ただ、実際に体験したのは祖母の時の「デイサービス」とは全く違うものでした。
*編集部注/のぶママが利用したのは、「介護予防・日常生活支援総合事業」。市区町村が実施する介護予防サービスを活用できる。要支援1・2の人や「事業対象者」の認定(25項目の基本チェックリストに回答する)を受けた高齢者が対象となる。
その日の利用者は母を入れて7名。最初に少しコミュニケーションタイムみたいなのがあって、その後2チームに分かれてリハビリスタート。全身を使う運動、マシンを使う運動(歩くのと漕ぐの)、椅子に座って行う運動の3種類をスタッフさんの指導のもと、こなしていきます。
「○○さぁ~ん、***しましょうねぇ~」みたいな子ども扱い的なのは全然なくて、普通にスポーツ教室やジムの雰囲気(昔私が通っていたジムが、平日の昼間に行くと年齢層高くてこんな感じだったなあ…)。
母以外の皆さんは常連さんらしく、動きもキビキビしていて楽しそう。スタッフさんは、理学療法士・作業療法士・看護師などで構成されていて、利用者はさまざまなサポートを受けながら体力づくりができる仕組み。これを週1回、月2000円くらいで利用できるのはいい、とってもいい。
運動の合間に、母と私は理学療法士さんから聞き取りを受け、これまでの経緯や現状などを説明しました。するとひとつ新たな流れが。
これまで母は、整体と整形外科と両方通っていたのですが、症状が変わらないまま整形外科では「どこも悪くない」と超音波治療を打ち切られてしまい(痛み止めの処方だけ)、通うのをやめてしまっていたんです。その話を理学療法士さんにすると、「セカンドオピニオン」をすすめめられました。
理学療法士さんいわく、「このデイサービスでは『診断』はできないんです。ただ原因不明のままだと不安ですよね」と。そう、そうなんですよ!よし、もう一度別の病院に行ってみます。
何か質問はありますか?と聞かれたので、「こちらのリハビリサービスって、母の脚が元に戻ったら使えなくなるのでしょうか?」と質問してみました。
理学療法士さんは、「いえ、『介護予防』が目的のサービスなので、身体を良い状態に保つために通い続けることができますよ」と。おお、素敵&安心。
母の様子を見ると、立ったままの運動は途中離脱したものの、曲に合わせた上半身ダンスみたいなのを嬉しそうにキメている(婦人会の舞踊クラブに入ってるもんで)。自転車こぎマシンは難なくできたようで、「楽しかった~」と爽快な表情。他の皆さんともすでに打ち解けて和やかムードでした。
帰りは送ってもらえるとのことで、後はお任せして私は仕事先へ移動しました。
「このまま脚が戻らなかったらどうしよう」と不安になり、地域包括支援センターに相談のためかけた1本の電話で、「介護」じゃなく「介護予防」の存在を知ることができたのは本当にラッキーだったと思います。
脚の状態は変わらずいまだ原因も不明ですが、筋力をつける手段が見つかったのは嬉しい。
あの調子じゃ、母はきっと「通いたい」って言うだろうから、明日にでも地域包括支援センターに電話して「事業対象者」の認定をお願いすることにしよう。
あれ?母、鍵を持って出かけたっけ?
今日は疲れて帰ってくるだろうから、夜は豚肉(ビタミンB1)系のおかずにしよう。冷凍庫に味付きの豚タンがあるからあれを炒めて、と…。
職場の壁の時計を見ながら「そろそろ家に戻る頃かな」と、思ったその時ふと頭をよぎった、ある「疑惑」が。
「母、家のカギ持ってる?」。出かける時、カギが壁にかかったままだった気がする。嫌な予感満々で母のガラケーに電話。
私「お母さん、今どこ?」
母「今ねー、送ってもらいよる(もらってる)―。もうブチ(すごく)楽しかったけー」
私「お母さん!家のカギもっちょる⁉」
母「ん?あら、持っちょらんかも~」
――「かも~」じゃねえ~~~‼
時刻はお昼の12時過ぎ、外はガンガン晴れの猛暑、予想最高気温は36℃‼ 炎天下にいたらあっという間に日干しだよ‼最近母が一人で出かけることがないから私もうっかりしてた~‼
仕事先に事情を話し、急きょ家のカギを開けに帰らせてもらいました。駐車場までダッシュ‼車を降りて家までダッシュ‼ ちょうど家に着いた母と遭遇し、速攻でカギを開けダッシュで職場にとんぼ帰り。高校卒業以来の58才「全力疾走」でした。
その日の夜、リハビリ体験でほどよく疲れた母と猛ダッシュで下半身ガクブル状態の娘は、揃って「豚タンネギ塩炒め・玉ねぎマリネ添え」を頬張りました。
母「のぶちゃん、私あのリハビリ通いたいなあ~」
はいはい、明日の朝私が筋肉痛で動けなくなってなければ、手続きの電話しちゃげるよ。あー、豚タンと玉ねぎおいしい~~(身体が欲していたのかも?)。
NO老いるMemo「ビタミンB1と玉ねぎマリネ」
前回と前々回で「夏バテ予防にビタミンB1」と題し、豚肉とうなぎを紹介しました。
→「母に内緒で初の地域包括支援センターへ!」第53話
→「介護予防とハーフうな丼」第54話
ビタミンB1は、糖質の代謝に必要な栄養素。疲労の原因にもなる「乳酸」の代謝にも関わります。で、そのビタミンB1をサポートするのが、生のニンニクや玉ねぎ・ニラなどに含まれる「アリシン」という成分なんです。ビタミンB1の吸収を助ける働きがあります。
つまり、ビタミンB1を含む食品とアリシンを含む食品を一緒に摂ると「お得」というわけです。
我が家の常備菜、アリシンも摂れる「玉ねぎマリネ」をご紹介します。めっちゃ簡単です。薄切りにした生の玉ねぎを「らっきょう酢(調味酢)」に漬ける、それだけです。
玉ねぎの量はお好みで、お酢も調味酢、黒酢、フルーツビネガーなどお好みのものでオッケー。玉ねぎのあのツーンと来る匂いがアリシンなので、水にさらさずに切ったらすぐに酢漬けにします。
半日くらいで全体がしんなりします。漬け汁は生野菜にかければNOオイルドレッシングに。
和洋中問わずいろんな料理や食材に合うし、すぐ食べられるので作っておくと便利ですよ~。ただし、玉ねぎやニンニクは胃腸への刺激も強いので、くれぐれも食べ過ぎにはご用心を。
参考資料/「食べ物と健康-食品学」2013 /株式会社光生館刊。
絵と文
漫画家・うえだのぶ
イラストレーター・漫画家。58才。山口県で82才の母とふたり暮らし。40代で地元の短大に入学し、栄養士の資格を取得。地元山口県を拠点に、漫画を利用した食育や時短調理などの栄養講座の講師なども務めている。
アメブロ:https://ameblo.jp/abareinupoti/ インスタ: https://www.instagram.com/nobuueda/?hl=ja
『読者体験!リアル迷惑人間大集合1 』Kindle版が発売中。