「光熱費が高い!」電気&ガス代の負担を軽減する新たな支援制度「いつから?いくら安くなる?」「高齢者は詐欺に要注意」【FP解説】
物価が高騰し、米などの食料品だけでなく電気代やガス代の値上がりも気になるところ。加えて梅雨時期の異例の暑さでエアコンをフル稼働している家庭も多いのではないだろうか。そんな中、新たにスタートする「電気・ガス料金負担軽減支援事業」で光熱費はどのくらい安くなるのだろうか。ファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんが、新たな支援制度を解説。高齢者世帯に及ぼす影響について確認しておこう。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、内外資系の生命保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/
電気・ガス料金負担軽減支援事業とは?
2025年5月27日、経済産業省は足元の物価高に対応し、夏場の電力需要が高まる時期に備えるため、「電気・ガス料金負担軽減支援事業」を実施すると正式に発表しました。
この支援事業は、家庭や企業などの電気・ガス料金の負担を軽減することを目的としており、2025年7月から9月までの3か月間の使用分を対象としています。標準的な家庭では、電気とガスを合わせて、3か月でおよそ3,000円程度の負担軽減が見込まれています。
電気料金については、一般家庭などが対象となる低圧契約では、7月と9月の使用分に対して1キロワットアワーあたり2円、8月の使用分には2.4円の値引きが適用されます。
中小企業などが対象となる高圧契約では、7月と9月の使用分が1円、8月は1.2円の値引きとなり、8月が最も高い単価で支援されることになります。
また、都市ガス料金についても同様に、7月と9月の使用分は1立方メートルあたり8円の値引き、8月の使用分は10円の値引きが適用されます。なお、これらの支援はすべて自動的に適用されるため、利用者による申請や手続きは必要ありません。
※経済産業省「電気・ガス料金支援」(2025年5月27日)
https://www.meti.go.jp/speeches/kaiken/2025/20250527001.html
※経済産業省「電気・ガス料金負担軽減支援事業」
https://denkigas-gekihenkanwa.go.jp
※経済産業省 経済産業省関連「電気・ガス料金負担軽減支援事業」に関する予備費のPR資料 2025年5月27日
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2025/pdf/denki_gas_yobi.pdf
高齢者世帯の電気代はどのくらい安くなる?
高齢者世帯の電気・ガス料金に対する支援策によって、どれほど家計の負担が軽減されるのかを見てみましょう。家庭のエネルギー消費動向実態調査(平成26年度実施)によると、住宅の建て方や世帯人数、60才以上の高齢者の有無によって、電気やガスの使用量には違いがあります。
電気についてですが、たとえば戸建住宅に住む60才以上の1人世帯では、1か月あたりの平均使用量は232キロワットアワーです。同様に、2人世帯では344キロワットアワーとなっています。
一方、集合住宅の場合、60才以上の1人世帯で198キロワットアワー、2人世帯では292キロワットアワーという平均値になっています。
これをもとに今回の支援額を計算すると、電気代の軽減額は以下のようになります。
戸建住宅の1人世帯では7月と9月は月464円、8月は556.8円の軽減となります。2人世帯では7月と9月が688円、8月は825.6円となります。
集合住宅の場合、1人世帯では7月と9月が396円、8月は475.2円、2人世帯では7月と9月が584円、8月が700.8円の負担軽減が見込まれています。
つまり、電気料金だけを見ても、7月から9月の間は毎月おおよそ400円から830円程度、家計の負担が軽くなるということになります。
ガス代はいくらくらい安くなる?
次にガスの使用量と支援額を見てみましょう。
戸建住宅に住む60歳以上の1人世帯では、1カ月あたりの平均使用量が20立方メートル、2人世帯では41立方メートルとなっています。集合住宅では、1人世帯で15立方メートル、2人世帯では31立方メートルというデータです。
これをもとにガス料金の支援額を計算すると、以下のようになります。
戸建住宅の1人世帯で7月と9月が160円、8月が200円、2人世帯では7月と9月が328円、8月が410円となっています。
集合住宅の1人世帯では7月と9月が120円、8月が160円、2人世帯では7月と9月が240円、8月が310円となっています。
このように、ガス料金においては、毎月120円から410円程度の負担が軽減される計算になります。
電気・ガス代は3か月で1,670~3,270円負担が軽減
電気とガスを合わせると、3か月間でおおよそ1,670円から3,270円程度の電気・ガス料金が軽減される可能性があります。
特に、年金収入のみで暮らす高齢者のかたなど、光熱費を節約するためにエアコンの使用を控えてしまうことで、熱中症で倒れてしまうケースにつながる恐れもあります。エアコンを適切に使用し、暑さから身を守ることは命を守ることにもつながります。
そうした意味でも、この支援は金額としてはささやかかもしれませんが、高齢者世帯にとって、少しでも安心して夏を乗り切るための家計の支えになるはずです。
支援制度の便乗詐欺にご注意を【まとめ】
年金だけで生活している高齢者にとって、2025年7月から9月に実施される電気・ガス料金の支援制度により、わずかでも自己負担額が軽減されることは経済的な助けとなります。
一方で、こうした支援制度に便乗した不審な電話が発生しています。たとえば、電気・ガス料金の値引きを口実に、生年月日、住所、家族構成などの個人情報や手数料の支払いを求めるケースがあり、国も注意を呼びかけています。
この支援を受けるにあたり、申請などの手続きは一切不要であり、個人情報の提供や手数料の支払いを求められることもありません。不審な連絡には決して応じず、少しでも不安を感じた場合は、すぐに経済産業省資源エネルギー庁のお問い合わせ窓口(0120-013-305)などに相談しましょう。
※参考
経済産業省 資源エネルギー庁「電気・ガス料金支援」
https://denkigas-gekihenkanwa.go.jp
東京都環境局「家庭におけるエネルギー使用状況」「家庭のエネルギー消費動向実態調査(平成26年度実施)」
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/home/energy
(株)地域計画建築研究所(アルパック)「平成26年度東京家庭のエネルギー消費動向実態調査報告書」(平成27年3月20日)
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/home-energy-files-syouhidoukouzittaityousa26honpen_3