介護をネガティブ体験にしないコツ<プロが教える在宅介護のヒント>
介護に関しては暗いニュースも多いため、介護が始まったら大変だと考えてしまいがちだが、介護が家族の良き思い出、素晴らしい人生体験になる場合もあるという。介護をネガティブ体験にしないコツは何か、株式会社モテギ新宿ケアセンター長、モテギケアプランニング新宿管理者の森岡真也さんに聞いた。
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ささやかでも、目標を立て、できたことを喜び合う日々に
これまで自分でしていたことができなくなるなど、介護を必要とする人は多くの「喪失体験」に傷ついていて、今の状態を受け容れるために時間が必要なことがあります。
中には奮起してリハビリテーションに取り組む人もいますが、高齢者の場合はリハビリテーションの目的や成果が「機能の回復」ではなく、「残っている機能の維持」であることも多いです。
ご本人の回復への期待が大きすぎると、それが体の負担や傷心につながることがあるので、注意が必要です。
周囲の人は、介護を受ける人の自尊心に配慮しながら、あるがままの状態に寄り添うことが理想的ですが、それは言葉で言うほど簡単ではありません。ご家族も自分の親や祖父母が歳をとり、弱ったのを見るのは切ないので、つい「できなくなったこと」に目を向けてしまいがちです。そのまま介護期間が長くなると、介護は苦しい体験になってしまうことがあります。
苦しい体験にするのではなく、客観的な判断ができる介護の専門職と共に、みんなでご本人が達成できる具体的な目標を考えて、介護に関わる全員で共有し、日々の小さな変化を喜び合っていきましょう。
「できること」に目を向けることが肯定感を取り戻すきっかけに
「行きつけだった喫茶店に行く」、「大事にしていた植木鉢の手入れをする」など、ささやかでもご本人にとって楽しみになることを目標にし、「できること」に目を向け、成功体験を分かち合うことで、全員が癒されます。そして、そうした体験は幸せや人生の意味を見直し、自分の人生に対する肯定感を取り戻すきっかけになることもあるようです。
僕が担当したケースでも、ささやかな成功体験と喜びのシェアを重ね、介護を家族の貴重な思い出、素晴らしい人生体験になったとおっしゃったご家族がいくつかありました。ケアマネジャーとしても、その場に立ち会えたことは仕事の醍醐味だと感じています。「達成可能な目標設定」はケアマネジャーの得意とするところなので、ぜひ相談してみてください。