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介護職員の賃金が全産業平均より「6万円以上低い」という現実に「やりがい搾取がひどすぎる」「介護員は減る一方」と嘆きの声 求められる介護報酬の引き上げと利用者の“意識改革”  

 介護職員の賃金が全産業の平均より6万円以上低い――。労働組合の日本介護クラフトユニオン(NCCU)が2025年1月末に公表した「2024年賃金実態調査」の内容から、介護業界の処遇の厳しさが浮き彫りになった。 

介護業界の賃上げが他産業に追いつかず、3年連続で格差広がる

 NCCUの調査によると、2024年7月における月給制組合員の賃金は平均26万5711円であり、同年3月と比べて7414円のプラスとなった。しかし、2024年における全産業の月額平均賃金は33万200円で、6万4489円もの開きがある。この格差は、2021年には4万2184円であったが、2022年からは3年連続で拡大している。 

 介護業界の賃金は、介護報酬などの公定価格に左右される。介護報酬の改定は3年に1度しか行われず、他の業界のように柔軟に価格を転嫁できない。この仕組みが、賃上げを阻む大きな要因となっている。NCCUの村上久美子副会長に、今回の調査結果に対する見解を伺うと、 

「2024年2月から5月に実施された『介護職員処遇改善支援補助金』や同年4月の介護報酬改定、そして各事業者の努力によって、介護業界でも少しずつ賃上げが進んでいます。しかし、他産業のペースには追いつけていないのも事実です。今後も大手企業を中心に高水準の賃上げが続けば、格差がさらに広がっていくことは間違いありません」(村上副会長・以下同)。 

 2024年9月における介護サービス職業従事者の有効求人倍率は4.03倍、訪問介護においては14.14倍という高さで推移しており、介護業界の人手不足は深刻さを増している。村上副会長は、「このままでは、介護を受けられなくなる人が後を絶たないでしょう。介護従事者の不足を解消するためには、さらなる処遇改善がなされることが、いちばんの処方箋です」と語気を強める。 

現場の職員は「不安しかない」と回答、ハラスメントによる被害も

 実際、介護の現場で働く人たちは、この現状をどう受け止めているのだろうか。前述のNCCUによる調査では、対象者3346名のうち、約60%が今の賃金が「少し不満である」「大いに不満である」と回答した。理由としては、「社会的な平均賃金より低いと思うから」が45%強を占め、「今の業務量に見合っていないから」「今の業務内容に見合っていないから」がそれに続く。 

 また、介護現場における悩みや課題についての自由記述では、「訪問介護の単価が低すぎる。訪問介護員は減る一方でどんどん深刻化してきていると思う」(訪問系介護員)、「介護職の給料では結婚しても不安しかないし、子どもが産まれても養う自信がない」(通所系介護員)、「やりがい搾取がひどすぎる。拘束時間と賃金が見合っていない」(サービス提供責任者)など、悲痛な訴えが相次いだ。 

「みなさん、贅沢なことを言っているわけではなく、“普通の生活”をしていくうえで、今のままでは厳しいという話なんです。介護の仕事は心身への負担が大きいうえに、人手不足による業務負荷の増大や、長時間勤務の常態化がみられる現場もあります。例えば、訪問介護サービスを提供するヘルパーステーションでは、ひっきりなしに電話がかかってくるため、お昼休憩の間も対応に追われることが少なくありません。また、各施設の夜勤担当者は、入所者の緊急・異常事態に備え、仮眠室があっても寝られない場合がほとんどだという声もあります」 

 そんな厳しい状況下でも、「“利用者の方を放っておけない”、“自分が頑張らなければ”という責任感を持って働いてらっしゃる方ばかり」と村上副会長は言う。しかし、介護従事者の気持ちを踏みにじるようなハラスメントが問題になる現場もあるという。 

 NCCUが公表した『2024年度 就業意識実態調査』では、その具体的な内容について、「排泄介護中に男性利用者から必要以上に陰部を触るように言われた」(入所系介護員)、「介護保険上でできないこと(買い物代行のついでに宝くじを買う、使用していないベランダのそうじ)をお伝えしたが、正座を強要され、15分間怒鳴られた」(訪問系介護員)、「過剰なナースコール。物を投げつける。噛みつく。無理やりキスを要求する」(入所系介護員)などの回答が寄せられた。 

「身体的・精神的な苦痛を与えるのは論外ですが、介護保険制度をよく理解されていない方が、“サービス外”のことまで要求してハラスメントに発展する事例もあります。利用者とそのご家族は、事前に介護保険サービスの内容を十分に把握するよう努めていただきたいです」 

現状を好転させるため、国や自治体、私たち国民がすべきこととは

 厚生労働省の推計によると、団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年には、介護職員が約57万人不足するとされている。“介護難民”が続出する未来を防ぐためにも、介護従事者が仕事を続けたいと思える環境を整えつつ、新たな人材も獲得していくことが求められる。 

「首都圏を中心として、人材不足によりサービスを提供できない事業所がすでに出てきています。また、近年の介護職員の年齢層は40〜50代が中心で、若者の参入が少なく、“介護職の高齢化”も問題視されています。学校で先生から“介護業界は大変だから就職しないほうがいい”などと伝えられるケースもあると聞きますが、このままでは、介護業界を支える人材は育っていきません。小・中学生のうちから介護の意義や大切さを実感してもらえるような教育をしていく必要があります」 

 そのうえで、現状を変える一番の手立てとして、やはり「介護報酬の引き上げ」に行き着くという。NCCUは、3年に1度の改定を待たずして引き上げを実施してほしいと国に訴えている。今年1月には、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党が介護従事者らの賃金を月1万円上げることを想定した処遇改善法案を衆院に提案しており、村上副会長は「少しずつだが光が見えてきた」と述べる。 

 さらに、独自の支援策を展開する自治体も出てきた。例えば、千葉県流山市は、介護保険サービス事業所に勤務する職員等に1人あたり月額9000円の補助を行っている。東京都では、介護職員や介護支援専門員に対し、月1万円(勤続5年目までの職員には1万円を加算)の居住支援特別手当を支給。この流れが全国に広がることが期待されている。 

 事業所側ができる対策としては、「ICTやロボットなどテクノロジーの活用を進め、生産性を高めること」だという。実際、夜間の“見守りセンサー”を導入して従業員の巡回の負担を減らす、業務日誌の記録やスケジュール管理をデジタル化して業務の効率化を図る等の取り組みをしている事業所の職員からは、「日々の仕事がだいぶ楽になった」という声も聞かれているそう。 

「介護テクノロジーの導入時に活用できる補助金などもありますから、うまく利用していただけたら。各職員に時間の余裕が出てくれば、利用者さんとのより濃密なコミュニケーションなどにあてることができ、結果的に介護の質もあがっていくと考えられます」 

 最後に、私たちが忘れてはならないのは、介護職に従事する方々への感謝と敬意を持つことだ。前述したように、現場で働く職員は責任感が強く、「利用者さんの支えになりたいと願う優しい方が大半」と村上さんは語る。そんな彼・彼女らがやりがいや喜びを感じるのは、NCUUの調査によると、「“ありがとう”と言われた時」「ご利用者・ご家族の笑顔を見た時/信頼関係が築けた時」「自分が役に立ったと思った時」という回答が上位を占める。 

「周囲からの温かい声かけや心遣いによって、介護従事者が救われる場面は必ずあるはずです。人生の“最期”に寄り添ってくれる方々になるのですから、国・自治体・各事業所が処遇の改善を進めるのはもちろん、国民一人ひとりも、接し方を見つめ直していきたいものです」 

◆取材・文/梶原 薫   

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この記事へのみんなのコメント

  • 浜地由香里

    初めまして 私は、特養に15年程在職しています。 ですが、同じ施設で介護士としては11年程で現在は厨房で働いています。 理由は体力と精神面での負担が大きいという事です。 そこで、食事面でのサポートをと思い異動しましたが、日々体力が低下していく入居者の食事というのは、食形態の変更が多く、100名以上の規模の施設では対応が思っていたより大変でした。 現在、介護士の給与が他の業界より低いと言われていますが、介護士に問わず施設内の他の部署はそれ以下が現状です。 厨房や事務職なども、その仕事だけをしていればいいわけではなく、直接入居者の方と施設内で関わる場面は多くあります。 このような事が現状なので、施設内関係者、全体の底上げが必要だと思います。

  • ちゃこちゃんばば

    北海道の特別養護老人ホームに勤務していますが、経営が杜撰で、赤字経営が続いています。町からの補助金が出て、倒産には至っていませんが、節約のやり方が入手者にまで影響があります。節電を理由に薄暗い中での食事、朝食は一品減らされ、気の毒になります。 職員に対しても、外国人の採用をすすめていますが、入力ミスのカバー、関わった入所者の記録など負担が大きい。悪天候の時は、送り迎えまでしなければなりません。 介護係長の一声に振り回されず日々、仲の良い職員に異動昇進も見受けられます。 看護職員はいるが、処方薬の管理側行き届いておらず、特に軟膏や下剤は共有しているようです。入所者の処方された坐薬や栄養ドリンクを勝手に使用してしまう知識のない係長には誰も文句が言えません。 今までだって夜勤はきちんと休憩が取れなかったのに、3人から2人体制にするなど、休憩は残業で払っているから問題無いだろとの認識、昼休みもご飯、一服のあとは記録でまともに休憩が取れる職場ではありません。 今度、施設長が変わるそうですが、事務長、係長などの仲良し人事をすすめているようでは、ますます働きにくくなりそうです。

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