100円ショップの介護用品「買ってよかったもの」「おすすめできないものもある」介護経験のある社会福祉士が指南
介護に必要なアイテムは100円ショップを活用することで節約につながる。しかし、「安全面の観点から、おすすめできるものとできないものがあります」と、社会福祉士でファイナンシャルプランナーの資格ももつ渋澤和世さん。ご自身の介護経験をふまえ、100円グッズを選ぶ時の注意ポイントを解説していただいた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
渋澤和世さん/在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
介護専用品の失敗談「これは100円ショップで良かった!」
筆者が在宅介護をしていた頃のエピソードをお話します。筆者が介護をしていた当時、「介護用品は特別なもので高いのもの」と思い込んでいました。
介護用の靴下は高級品?
高齢者は、血液循環の障害、病気の兆候でむくみ(浮腫)の症状が現れます。実母も例外ではなく、筋肉は落ち体重は減少傾向でしたが、手足、特に足のむくみがひどかったのです。
普通の靴下では締め付けで跡が残ってしまうため、吐き口がゆったりしたゴムの締め付けのない介護用のソックスを購入していました。大体1足1,000~1,500円と、非常に高いものでした。
入れ歯用のケースの失敗
また、母は入れ歯をしていましたが、入れ歯ケースも当初ネット通販で購入し、こちらも500~1,000円していたと思います。当時、母は小規模多機能ホームの通い(デイサービス)を利用していたのですが、入れ歯ケースを帰りの荷物に入れ忘れる、他のかたの入れ歯ケースが間違えて入っていることが良くありました。
そのため、予備に家でもケースが必要だと感じもう一つ購入することにしました。そんなとき、たまたま100円ショップに行ってみたら、入れ歯ケースが売っていることに気が付きました。材質を確認したところ、ネットで売っているものと材質(ポリプロピレン)も変わらないのでなんの問題ないと判断し、即購入しました。
この時、筆者が訪れた100円ショップには、使い捨てエプロンやからだふきなど、介護グッズのコーナーがあることがわかり、それ以来頻繁に活用するようになりました。
しかし、介護用品はなんでも100円ショップのものが適しているとは限りません。以下で、詳しくお伝えします。
100円ショップで「買ってよかったもの」「買わない方がいいもの」
前述の入れ歯ケースのように、材質が同じであれば問題なく100円ショップを選択するといいでしょう。ほかにも、介護用のシリコーンスプーンは通常500~1,000円しますが、材質もシリコーンゴムで変わらないので100円ショップのものを利用していました。
100円ショップで「買ってよかったもの」と、これは「買わないほうがいい」ものをお伝えしていきます。
買ってよかったもの/おすすめ度:★★★
・入れ歯ケース
・うがい受け
・シリコーンスプーン
・杖ゴム(定期的に交換する場合)
・杖ホルダー
・吸い飲み
・ストローコップ
・薬ケース
・ピルカッターケース
・からだふき
この中でもとくに「からだふき」は大判なので、顔や体だけでなく、「おしりふき」として排泄ケアのときにも活用していました。
また、「おしりふき」を選ぶときは、トイレに流せるタイプ・流せないタイプがあります。我が家の場合、介護度が進み寝て過ごすことが多くなり、テープタイプの紙おむつに移行してからは、汚れたおしりふきを使用済みの紙おむつに包んで捨てることが多くなるため、枚数の多いトイレに流せないタイプを選んでいました。
また、冒頭でご紹介したように締め付けない靴下も200円で購入できますのでかなり割安です。
買ってよかったもの/おすすめ度:★
・介護エプロン
100円ショップで扱っている介護用エプロンは、防水力が弱いものが多い印象なので、使い捨てと割り切って活用するか、外出時などの持ち歩きようとして活用するのがいいでしょう。
食事介護が必要になった場合、食べ物や汁物をこぼすことも多くなるので、防水加工がしっかりした介護専用のエプロンを購入し、長く使ったほうコスパはいいといえます。
買わないほうがいいもの
・杖
杖は100円ショップで割安で購入できますが、グリップが樹脂製で硬い為、長時間負荷を掛けて使用すると手が痛くなります。杖の先端の滑り止めゴムが弱いなどのデメリットがあります。また、デザインや色の展開も少ないのが実情です。
杖のゴムやホルダーなどの消耗品は100円ショップのものでよいのですが、杖そのものに関しては、安全面から介護用品を選んでほしいと思います。
杖は命を守る道具なので、長さ、握りやすさ、太さなど自分の身体に合ったものを、福祉用具専門相談員などの専門家に見立ててもらうほうが安心です。杖には、色々なデザイン(柄や色)があるので、利用するかたの好みに合うものを専門家に相談して選んでもらうのがいいでしょう。
また、介護保険の福祉用具レンタルなら月々50~150円程度で借りることもできます。
※編集部註:公的介護保険を利用できるのは、要支援・要介護認定を受けた人です。また、一本杖は介護保険の対象外です。2024年度介護保険制度改定により介護保険を利用して杖など福祉用具の購入も可能となり、利用者がレンタルまたは購入を選択できるようになりました。
ドラッグストアのほうが割安のもの
・紙おむつ
・尿取りパッド
・アルコール消毒液
・入れ歯用洗浄剤
紙おむつ(パンツタイプやテープ式)や尿取りパッドも店舗によっては100円ショップで販売していますが、ドラッグストアのほうが割安です。個包装になっているものが多いので、外出先で必要なときや、防災用の備えなどに入れるには適していると思います。
また、アルコール消毒液は、濃度があまり高くないものが多い印象で、こちらもドラッグストで購入するのがおすすめです。
100円ショップを賢く活用して介護費用の節約に
介護用品は、専門店などで揃えようとすると費用の面で負担が大きくなります。100円ショップ商品の中にはお得なアイテムとそうでないものもあるため、価格や性能を比べて購入するのが賢い利用方法です。
「お試し」や「練習用」として使ってみたいときや、外出時や持ち歩き用としては便利かもしれません。
「100円で安いから」といってすべてが介護用品としてふさわしいとは限らないので、利用シーンをよく考えて選んで欲しいと思います。