【シーズン2】兄がボケました~認知症と介護と老後と「第8回 新しいPC」
この冬は厳しい寒さに見舞われている地域も多いですが、ライターのツガエマナミコさんの暮らす家も同様です。認知症を患う兄が施設に入所し、一人暮らしになったマナミコさんが、広さをより感じる家でどのように過ごしているのか、近況を綴ります。
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世紀の大発明品
この冬、まだ一度もエアコンを入れずに過ごしているツガエでございます。
「節電」というよりも「エアコンなしでどこまで耐えられるか」をやってみたいだけですが……。
我が家は一面冷たいフローリングで、床暖房はなく、ストーブもなく、こたつはあるのにこたつ布団がないといったありさまで、頼れる暖房機器はエアコンだけ。ですが、兄が施設に入って初めての冬となり、わたくし一人のために広いリビングを温めるのはどうも気が引けて、少し厚着をすれば耐えられるのでは?と考えたわけでございます。
実際、今のところ耐えがたいほどの寒さはなく、薬缶でお湯を沸かして湿度を上げることで乗り切っております。最近ふと思い出して湯たんぽを引っ張り出しましたところ、これがまた優秀で、太ももの上にのせて仕事をしたり、テレビを見たりしております。上から毛布を掛ければ、即席のこたつ状態でして手放せない相棒となりました。
湯たんぽは、江戸時代に中国から伝わったもののようでございます。数百年の時を経て今なお第一線で活躍している湯たんぽは、世紀の大発明品と言えるでしょう。
近年の大発明品といえば、パソコンではないでしょうか。
わたくしが初めてパソコンに触れたのは、2000年前後だったように思います。知り合いのおさがりPCを経て、自分で初めてノートパソコンを買ったのは、たぶん2006年辺り。そこから数えてなんと今年3台目のノートパソコンを購入いたしました。
ほぼ10年ごとの買い替えゆえに、セットアップ(初期設定)は毎回初心者同様で、今回も手引き書とにらめっこ状態でございました。
真っ先にインターネットが見られる状況になり、ウイルス対策ソフトをダウンロードしてインストール。原稿が書けてメールの送受信ができるまでに丸1日かかりました。前のパソコンで使っていたメールアドレスを使いたいと思ったのですが、アカウントがどうのこうの、パスワードが違うとかなんとか画面に表示されてしまい、新たにメールアドレスを作らざるをえませんでした。
なんとか原稿を書いてメールを送ることができるようになったことで安心したものの、次はZOOMです。今はZOOMがなければ仕事になりません。
前のパソコンでZOOMを導入するときには、コロナ禍の緊急事態で何が何だかわからず3~4日かかったように記憶しております。冷や汗をかきながら寝食を惜しんで取り組んだ結果、奇跡的に導入できたのであって、今回も不安しかございませんでした。
でも5年前よりやや成長したようで、今回は丸1日でなんとかZOOMの環境を整えることができました。もちろん何度も躓き「これでダメならもう無理だわ~」という局面を乗り超えてのゴール。誰かに「教えて」と言われても無理。まったく理解できておりません。
それにしても新しいパソコンの立ち上がりの速さたるや、尋常ではございません。
前のパソコンは電源をいれて作業ができるまでに10分以上かかりましたが、新しいパソコンは、ノートを開くともう起動して、ものの2~3秒で作業画面が現れるのございます。毎回「はんやっ!」と感動しております。おそらく普通の速さなのでしょうが、今までが遅すぎたので感動がひとしおです。
これが4GBと16GBというパソコンのメモリの違いでございましょう。前のパソコンはメモリが少ない上に10年分の原稿やメール、ZOOMやらなんやらを詰め込んでいたので、動作が遅かったのだとつくづく感じました。よく壊れずに動いてくれたとほめてあげたいくらいでございます。
家電量販店の店員さまには「これから長く使うなら32GBがおすすめですよ」と言われましたが、ゲームをしたり、動画編集することはないので、16GBでも十分かなと判断いたしました。
ちなみに価格は渋沢栄一さまが15人と北里柴三郎さまが3人(税込)でございました。
今まさに「パソコンがサクサク動く」を実感しております。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性61才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現66才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。
イラスト/なとみみわ