脳トレは認知症予防に効果がない? 医師がすすめる有効な予防法は“外出”、その理由とは
80代、90代になっても趣味に仕事に元気に活動するシニアが増えている一方で、認知症になってしまう人も…。そこで、認知症予防によりよい過ごし方と有効な食事について、『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』(アスコム)の著者で高齢者を見続けてきた内科医のドクターハッシーこと橋本将吉さんに教えてもらった。
教えてくれた人
橋本将吉(ドクターハッシー)さん/内科医
東京都出身。高齢者向けの訪問診療『東京むさしのクリニック』院長。2011年に「医学教育という専門領域から、日本と世界の明るい未来を創造する」という理念の元、リーフェホールディングス(旧リーフェ)を設立。医学生向けの個別指導塾『医学生道場 』(https://igakuseidojo.com/)の運営や、YouTuber『ドクターハッシー(内科医 橋本将吉)』として健康情報の発信。2022年9月に健康や医学を医師から学ぶ事のできるサービス『ヘルスケアアカデミー』 (https://healthcare-academy.co.jp/)をリリース。2か月で300人を突破。
認知症予防には脳トレよりもコミュニケーション
橋本さんによると、認知症の治療は確立されていないものの、症状を遅らせるための対策や予防法は、脳を使うことだとわかってきたという。
筋骨隆々の人が筋肉を使わなければ筋肉が減っていくのと同様に、脳も使えば機能の低下を抑えられるということだ。
「脳を使うというと、数独やクロスワードパズルなどの脳トレを思い浮かべがちですが、同じことをやり続けるとコツや慣れなどが生まれてしまい、脳への刺激が減ることもあるように感じます。海外の研究結果では、脳トレは認知症予防の観点であまり効果がないかもしれないというデータもあるんです」(橋本さん・以下同)
そこで橋本さんが認知症予防に必要だと提唱するのは、外出してコミュニケーションをとることだ。
外出や会話が脳の機能を保つために有効な理由
脳は目や耳、鼻などの感覚器官でキャッチした情報を認識し、認識した情報をもとに考え、それに基づいて言葉にしてコミュニケーションを図っている。
「つまり脳の機能をフルに使うのが、外出してコミュニケーションすることなんです。相手の目を見て、耳で聞き、匂いも嗅いで得た情報をインプットし、統合処理して、さらに相手のことを考えながら何を伝えるのか判断し、実際に言葉や身振りでそれらをアウトプットする。
一見何気ない会話でも、脳内ではとてつもない高度な処理が行われているため、脳の機能を保つには、人と話すことが大切なのです」