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【シーズン2】兄がボケました~認知症と介護と老後と「第6回 デジタル難民」

  一緒に暮らしていた認知症の兄は、現在、特別養護老人ホームに入所中。長い間、旅行や友人との外出を控えていた妹のツガエマナミコさんは、ようやく気兼ねなく好きな場所にお出かけできるようになりましたが、そのお出かけ先で困惑する事態になったというのです。

  * * *

初老婆トリオの珍道中

 先日、珍しく朝から買い物に出ると、道の向かいからネギやダイコンを袋いっぱいに持って歩く人を何人も見かけ、「今日はスーパーで大安売りでもしているのか?」と思っていましたら、途中の路地からそんな人達が大勢出てくるではありませんか。小走りに近寄ると、信用金庫の駐車場で朝市が開かれておりました。

 もう残り少ない感じでしたが、商店街のお祭りで見るような折り畳み式のテーブルにそれぞれの農家さまが持ち込んだ野菜や果物が並んでいました。幸い立派な葉付きのダイコンがまだあり、200円だったので即1本購入いたしました。

「葉っぱもっと食べない?」というおじさんに「はい?」というと「葉っぱいらないってお客さんがいて、これ持って行かない?タダでいいよ」と神の声。

 正直、一人暮らしでダイコンの葉っぱ2本分は多すぎると思ったのですが、ダイコン葉好きのツガエは「いいんですか?いただきます!」と頂戴してまいりました。

 茹でて細かく切って、みりんとお酒とお醤油で味付けて、ごはんのお供として1週間で完食いたしました。聞けば、毎週木曜日の朝に開催しているとか。近所に住んでいるのに不覚でございました。翌週、同じ時間に行きましたら、すでにテーブルが片付いており、「次こそは」と思っているところでございます。

 それはそうと、ツガエマナミコ61歳、先日デジタル難民を痛感したしました。

 友人の一人が、千葉県にある、あの有名なネズミさまがいる夢の国へ行きたいと申しまして、クリスマスの1週間前にいい歳をした初老婆3人で行ってまいりました。ですが、目も当てられないくらいのデジタル攻撃に遭い、お目当てのアトラクションには1つも乗れず、行きたかった新エリアには入ることもできずに帰ってまいりました。

 言い出しっぺの友人が事前にデジタルでチケット(1人9400円)を取ってくれたものの、前日に「アプリを入れてね」という段階でわたくしは躓きまくり。あとは二人に任せようと思い、当日を迎えました。

 朝8時30分に最寄り駅に集合すると、すでに初詣のような人だかりで、駅のトイレは長蛇の列。園のゲート前も開門を待つ老若男女がびっしり。それでもみんな楽しそうにおしゃべりをしていて「日本は平和だな」と感じました。

 アプリで予約できると聞いていたアトラクションでしたが、入園してみると電波が殺到しているようで、なかなかつながらず、つながったときにはすでに「ご案内できるアトラクションは現在ありません」といった表示になっておりました。

「じゃあ、レストランを予約しようか」とアプリを開いてみても、お目当てのレストランは予約がいっぱいでもう取れない。システムがよくわからず、手間取っている間に椅子取りゲームのようにどんどん予約は埋まり、取り残されてしまうのでございます。

「じゃぁ散歩だね。天気が良くてよかったぁ」とわたくしは腹をくくったのですが、友人二人がベンチで1時間ほど頑張ってレストランだけは確保してくれました。本当に笑っちゃうくらい滑稽な初老婆トリオでございます。

 驚いたのはスマホの充電の減りの早いこと。入場から90分で3人とも50%を切ってしまいました。20年前、かの国を最後に訪れたときには紙の地図がもらえましたが、今はそれもアプリ。何をやるにもアプリアプリ。「こんなに電池食うとは思わなかった」と初老婆トリオは浦島太郎状態です。誰もモバイルバッテリーを持ってこなかったので、なるべくアプリを使わないように、迷ったら園のスタッフに聞くアナログ作戦を決行。それでも最後は残り10パーセントという不安な状態でございました。

 結局、予約不要のしょぼめのアトラクションに2~3個乗りましたが、あとはキャラクターショップを渡り歩くだけ。夕方、帰りの混雑が始まる前に去ってまいりました。

 今の世の中の中心を成す人々と、わたくしが持つ古い常識が激しく乖離していることを思い知った1日でございました。

 老婆心ではございますが、もし何十年かぶりにあの夢の国へお出かけになる際には、入念な予習とモバイルバッテリーが必須でございます。くれぐれもご留意くださいませ。

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性61才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現66才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。

イラスト/なとみみわ

コメント

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この記事へのみんなのコメント

  • みれい

    一回り若い世代ですが、世の中のスピードが加速してる気がします。気を張ってがんばってデジタル化についていけるのも長くて80才ぐらいまでが限界かな、と思うとあま り長生きも不安になりそう。。。老眼世代はスマホも見にくくて… 中年、シニア世代はみんな助け合ってデジタル社会を生きていきたいですね♪

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