《芸能界引退後の意外な転身先》岩佐真悠子さんが語る介護職で働く4年間 最初は苦労するも芸能界の経験も活きた「特にやりがいを感じるのは入浴介助」
16歳で『ミスマガジン2003』グランプリを受賞し、ドラマやバラエティーで活躍した岩佐真悠子さん。2020年をもって芸能界を引退し、現在は介護現場で働いている。そんな彼女が、12月14日に開催された「芸能界から介護職へ」をテーマとした特別イベントで、引退後初めて公の場に登場。彼女が介護現場で働くこととなったきっかけや、現場での楽しさや苦労、これからのキャリアプランなどを語った。
親友とコロナ禍がきっかけで介護の道に
2020年10月1日に、自身のInstagramで引退とともに「以前から興味のあった介護の仕事に携わりたいと思います」と表明した岩佐さん。現在は週5日、パートで有料老人ホームに勤めているという。
きっかけは、デビューのきっかけとなった『ミスマガジン2003』同期の西田美歩さんだった。20年以上の付き合いで、親友の彼女が先に介護の仕事を始め、話を聞いているうちに興味を持ったそうだ。
「コロナ禍のときに、今後の仕事をどうしていこうかと悩んでおり、いい機会なので、人生を見直して芸能界とは違う仕事に飛び込んでみようと思ったんです。そのときに、西田からおじいちゃんおばあちゃんがかわいかった、面白かったなど、ポジティブな介護の仕事の話を聞いていたことをきっかけに、私もやってみようとスタートしました」(岩佐さん・以下同)
介護職は学歴不問も魅力だった
初めての芸能界以外の仕事。右も左もわからない中で、最初は派遣に登録することから始めた。
「どうやって仕事を探したらいいのか、面接に行ったらいいのか。16歳からずっと芸能界にいたので、何一つわからなくて。自分自身に一般常識があるのかどうかすら、30代なのにわからないんです。
芸能界の仕事が忙しく高校を中退していて、中卒で、履歴書に書けることもほとんどなくて。でも、介護の世界は学歴関係なく雇っていただけたし、今は実務者研修の資格を取得できました。これから介護福祉士の資格取得をめざしているのですが、学歴も年齢も関係なく国家資格が取れるというところも、介護の仕事の魅力の一つだと思います」
仕事をスタートできたものの、苦労もあった
介護の仕事を始めたときは、戸惑うこともたくさんあったと岩佐さんは語る。
「コミュニケーション能力やメンタルに自信はあったのに、仕事を始めたばかりのときは心がボロボロになりましたね……。
仕事を始めた初日、まずは入居しているみなさんとコミュニケーションを取ってみてくださいと言われました。話しかけても『はいはい』と言われたらいいほうで、目も合わないことが多いし、聞こえているかどうかもわからなくて。最初は苦労しましたね」
しかし、経験を積むうちに、芸能界での経験が活きたことも。
「これまでの経験のおかげで声が通りやすいので耳が遠いかたにも聞き取っていただきやすいし、顔の表情筋がよく動くのでマスクをしていても表情が伝わりやすい。認知症のかたが同じお話をされても、ドラマや舞台などで何度もリハーサルをしている経験があるので、いつだって新鮮なリアクションで話を聞けるんです」
特にやりがいを見出した入浴介助
介護の仕事の中でも、岩佐さんが特にやりがいを感じる仕事は、入浴介助だという。
「利用者さんの中でも、目の見えないかたがお風呂に入るのは怖いみたいで、お風呂に行くまでの間や、洗っているときに叫ぶこともあるんです。最初は私はこんなことをしていいんだろうかと不安になりましたが、お風呂に浸かったときにはとても気持ちよさそうにしているんですよね。
気難しそうな顔をしているかたでも、入浴後は笑顔で『気持ちよかった』と言ってくださるのが本当にうれしくて、入浴介助が大好きになりました」
さまざまな事業所で経験を積みたいという思いから、これまで特別養護老人ホーム、デイサービス、訪問介護と何度か転職をしているという岩佐さんは、面接でも「入浴介助が大好き」とアピールしているそう。入浴介助は苦手意識のある介護員が多いので、即採用となり、1日に3人連続で入浴介助をする日もあるのだとか。
「夏場なんて汗だくになるので、私の制服はいつも臭いんですけど、職場でサウナ状態を味わえるので、大好きなサウナに行くことが減って、お金もかからずラッキーです(笑い)」
キャリアプランと介護職の楽しさ
今は介護福祉士の資格取得を目指しているという岩佐さん。今後のキャリアプランをどう考えているのか?
「将来的にケアマネジャーの資格をとりたいと思っています。ケアマネジャーは現場に立つこともありますが、主な仕事は利用者のケアプランを考えること。
テストも難しく、更新もあると聞きますが、資格取得をめざすことで介護の理解を深めることもできますし、長く働くことを考えたら、取っておいてもいいのではないかと考えています。勉強できる自分の脳みそと気力があるうちに(笑い)、とっておきたいですね」
介護の仕事の楽しさや、やりがいも教えてくれた。
「私たちが日常的に当たり前にできることを、利用者のみなさんもできるように少しお手伝いさせていただくのが介護の仕事だと思っています。少しでも気持ちよく過ごしてもらえたら、いつも不機嫌な人からも笑顔が出てきたりするんです。
それだけで、よっしゃ!と思えますし、充実した日々を送っています。介護の現場はわかりにくい用語もあったりしますが、現場に入れば先輩に聞きながら学んでいけますし、副業として始める人も多い。それに、介護事業所って明るい雰囲気のところが多いんです。同僚と声を掛け合いながら、楽しくお仕事ができて、この職業を選んでよかったなと思います。
もちろん楽しいことばかりではないです。きついことや、時にはちょっと泣くようなこともありますけど、でもやっぱりそれを踏まえても、私にとってはやりがいがあって楽しいなと思える職業です」
◆岩佐真悠子
元俳優・現介護職員。2020年に芸能界を引退し、現在は介護士として活躍中。
取材・文/イワイユウ