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安心してお正月を迎えるために 高齢者向けの「おせち料理」で気をつけたいNGポイント10選【管理栄養士解説】

 お正月を迎えるにあたり、おせち料理を用意するご家庭も多いだろう。しかし、「高齢者や介護が必要な人にとって、普段食べ慣れないおせち料理には、誤嚥のリスクがあります」と、管理栄養士の川鍋仁美さん。おせちを食べるとき、作るときに「気をつけたい」注意ポイントについて、教えてもらった。

教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん

管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/

高齢者におせち料理を提供するときのNGポイント

 お正月の楽しみのひとつといえば「おせち料理」。特に高齢者にとっては慣れ親しんだ昔ながらのおせちを食べてこそお正月を実感できるかたも多いのではないでしょうか。

 お正月の時期にお餅に関しての注意喚起はよく耳にしますが、普段食べ慣れない食品も含まれるおせち料理にも注意が必要です。

 特に年末年始は、施設から一時帰宅したり、実家に帰省したりして、ご高齢の親御さんと会う機会もあると思います。久しぶりに合う親御さんの噛む力・飲み込む力はどれくらいなのか、把握できていない状態で一緒に食事をする場合、誤嚥のリスクも考えられます。

 そこで、家族で過ごすお正月の時間を安心して過ごせるように高齢者と一緒におせち料理を食べるときに注意したいポイントをいくつかご紹介します。

 季節を感じられ日本人にとって縁起物でもあるおせち料理ですが、高齢者と食べるときは次のようなことに注意しましょう。

【1】通常食の「おせち料理」をそのまま提供してはいけない

 そもそもおせち料理は、噛む力・飲み込む力が弱ってきている高齢者には不向きな食材が多く使われています。介護者はその点を十分理解しておきましょう。

 普段介護食を食べている高齢者が「お正月くらいは」「これくらいなら…」と普通食のおせち料理をそのまま食べることはとても危険です。食べる人の噛む力・飲み込む力に合わせた食材のかたさや大きさで提供するようにしましょう。

 また、食材の大きさに関しては、食べる人の噛む力がどれくらい残っているかにもよるので一概には言えませんが、ひと口大から刻みの状態まで本人の様子をしっかり見極めて対応しましょう。

 たとえば、筑前煮に含まれるレンコンやごぼうなどかたい食材には注意するかたも多いと思いますが、やわらかいものでも誤嚥や窒息のリスクはあります。普段食べ慣れないおせちはとくに、介護者は充分注意が必要です。

【2】「かまぼこ」などやわらかい食材でもそのまま提供するのはNG

 かまぼこ、こんにゃく、えびなど弾力があるものは、噛み切りにくく口の中でまとまりづらく、誤嚥しやすい食材です。これらの食材はおせち料理の定番ですが、嚥下機能に不安がある高齢者にはおすすめできません。

 また、かまぼこやえびは、お正月の食卓でお吸い物や茶碗蒸しなどの具に使うことも多いと思います。たとえば茶碗蒸しの場合、卵液とかまぼこなど、かたさが違うものが混ざっているとより飲み込みにくさが増してしまいます。汁物や茶碗蒸しなどには、かまぼこを「はんぺん」で代用するのがおすすめです。

【3】黒豆やごまなど小さい食材は誤嚥に注意

 小さな豆類やごまなどは、呼吸の際にスッと気管入りやすく誤嚥しやすいので、つぶす、するなどして誤嚥しにくい状態にしましょう。

【4】伊達巻きやきんとんなどパサつきがちな食材も要注意

 伊達巻、きんとん、焼き魚などにも注意が必要です。やわらかいものも、水分量が少ない食品はパサついて口の中でまとまりにくく飲み込みにくいので、食べやすい大きさにして、とろみをつけるといいでしょう。

【5】里いもなどつるっとした食材

 里いもや黒豆など、口の中ですべりやすいもの、ぬめりのある食材は、気管に入りやすく誤嚥しやすいので、つぶして誤嚥しにくい状態にしましょう。パサつきがあるときはとろみでまとまりを作りましょう。

【6】海藻類は喉に張りつきやすい

 昆布や海藻など、薄く切られたものは、柔らかくても喉に張りついてしまうとむせやすいので、水分と一緒に食べるようにしましょう。

【7】とろみが強すぎると飲み込みにくい

 口の中でまとまりにくいものは、とろみをかけて食べると食べやすくなります。

 とろみあんは、お雑煮用の汁やだし汁に市販のとろみ調整剤を混ぜて作ることができます。とろみの強さは強すぎると、逆に飲み込みにくくなる場合もあります。

 とろみをつける場合は、薄い~中間のとろみ、スプーンを傾けるととろとろと流れ落ちるくらいの状態が目安となります。

【8】片栗粉のとろみは冷めると薄くなる

 一般的な料理では、片栗粉でとろみをつけることが多いですが、介護食の場合は料理が冷めるととろみが薄くなりやすく、片栗粉のとろみは唾液で分解されやすいので、市販のとろみ剤を使用するのがおすすめです。

【9】「なます」など酢の物の酸味に要注意

 なますをはじめとした酢を使った料理は酸味によってむせやすくなります。

 高齢者がたべるものは酸味を抑えましょう。酢にも種類がありますが、酸味は穀物酢より米酢のほうがまろやかです。出来たものに砂糖やだし汁を少し加えることで味がまろやかになるので、家族分から取り分けて調理することもできます。

【10】塩分が高い「おせち」は食べ過ぎてはいけない

 おせち料理は正月中の保存食として作られているため、しょう油や塩・砂糖が多く使われた味の濃いものが多いため、手作りする場合は、できるだけ使う調味料の使用量を控えめにしましょう。

 市販品の場合は、減塩タイプを利用する方法もあります。出来たものにさらに醬油やソースなどを利用することは控えましょう。好きな食材だけに偏らずに出来るだけいろんな食材の料理を食べるように意識しましょう。

***

 高齢者にとって普段食べ慣れないおせち料理は、誤嚥につながるリスクが高いともいえます。やわらかく仕上げた市販品のおせち料理も販売されているので、活用するのも手。お正月に高齢者と過ごす機会のあるかたは、いくつかのポイントを参考に安全に配慮しながらおせち料理を楽しんでほしいと思います。

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