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暮らし

高齢者に安心して「果物」を味わってもらうための注意ポイント「りんごやブドウで誤嚥の危険も」【管理栄養士解説】

 介護中の食事で「果物はやわらかいから食べやすいだろうと考えるのは危険。りんごやブドウによる誤嚥や窒息事故も起きています」と、管理栄養士の川鍋仁美さん。ビタミンやミネラルなど栄養価も高い果物は、介護食におすすめだが、切り方や調理方法に注意が必要だという。誤嚥を防ぐ果物の提供の方法について教えてもらった。

教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん

管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/

旬の果物を安心・安全に味わってもらうために

 旬の果物は、季節を感じられるので高齢者にも大変喜ばれます。果物はビタミンやミネラルが豊富、食欲が落ちてきている高齢者でも比較的食べやすく、水分補給源としてもおすすめです。

 バナナやりんごなど1年を通して味わえるものから、苺や柿・スイカなどその時期ならではの味が楽しめるものまで種類は豊富です。

 一方で、果物はかたさや酸味の具合などが種類によって大きく異なるため、「噛む力」や「飲み込む力」が弱ってきている高齢者にとっては「誤嚥(ごえん)」のリスクもあり、本人の食べる力に合っているかを慎重に判断することも必要とされます。

 そこで、ご自宅で介護食を作っているかたに向けて、高齢者に「果物」を提供するときのポイントを調理例と併せてご紹介します。

りんごやぶどうなど果物による窒息事故も

 消費者庁※は、子供の窒息・誤嚥事故に注意を呼びかけています。窒息事故の原因となった食品は、ゼリーなどの菓子類のほか、りんごやブドウなどの「果物」も報告されています。これは、高齢者でも同様の危険はあるので細心の注意が必要です。

 果物と一言で言ってもその種類は様々です。同じ種類のものでも収穫する時期によってもかたさが異なるので、その都度「食べやすさ」に配慮しながら提供する必要があります。

※消費者庁「食品による子どもの窒息・誤嚥事故に注意!」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_047/assets/caution_047_210120_0001.pdf

誤嚥や窒息を防ぐ果物の切り方・調理方法

 果物の種類や、食べるかたの咀嚼力などによって、提供方法に注意が必要です。

りんご・梨・柿/かための果物

 誤嚥を防ぐためには、りんごや梨、柿などかための果物は、薄めに(3mm程)スライスするのがおすすめです。細かく刻んでしまうと口の中でバラバラになってしまい、かえって飲み込みにくくなってしまいます。

 とくに噛む力や飲み込む力が弱ってきているかたの場合は、すりつぶしたりミキサーにかけたりしましょう。

 その際、すりおろし方が均一になっていないと、固形の状態のものがのどに詰まって誤嚥してしまう恐れがあるので注意してください。

バナナ・メロン・スイカ/やわらかめの果物

 比較的誤嚥のリスクが少なく、食べやすい果物には、バナナやメロン、スイカなどがあります。薄くスライスするか、1㎝角程度の刻みにすると口の中でつぶして食べやすくなります。

ブドウ/球状の果物

 ブドウを提供する場合は、小粒のデラウェアサイズのもので、さらに皮をむいて提供するのが理想的です。

 マスカットや巨峰の場合は、皮をむいて半分に切って種があれば取りましょう。大粒のぶどうは、1粒まるごと提供してしまうと誤嚥のリスクが高くなるのでとくに注意が必要です。


果物の水分でむせてしまうケースも

 果物は水分を多く含んでいます。嚥下の力が低下しているかたにとっては、噛んだ時に口の中で水分と固形物に分かれるものは誤嚥につながるリスクがあります。水分でむせやすいかたは、果物を食べるときもとろみ調整剤を利用しましょう。

 やわらかい果物を食べやすい大きさに切って、果汁にとろみをつけた”あん”をかけると、味も薄まらずに食べることができます。

 ただし、果物の果汁は、とろみがつくのに時間がかかる場合があるので、1度にとろみ剤を入れすぎずに数分を置いてとろみの具合をみながら調整を行いましょう。

 たとえば、りんごや梨は、加熱調理してコンポートにするとやわらかくなり食べやすくなるのでおすすめです。

 なお、カットの仕方は、サイコロ状ではなく、薄いスライスのほうが食べやすくなります。

りんごのコンポートの作り方

<材料>

・りんご1個

・グラニュー糖 大さじ3

・レモン汁 大さじ1

<作り方>

【1】りんごの皮をむいて種と芯をとり、薄くくし切りにする。

【2】耐熱ボウルに材料を入れてよくなじませる。

【3】ラップをして電子レンジ(600W)で3分加熱する。

【4】【3】軽く混ぜて、さらに5分加熱し、りんごが透き通ってきたら完成。冷蔵庫で冷ますとより味がなじんでおいしくなります。

果物は「種や芯」にも注意が必要

 酸味が強い果物もむせやすくなるので誤嚥を誘発しやすくなります。柑橘類やキウイフルーツなどは特に注意が必要です。キウイフルーツを使用する場合は酸味が強いグリーンよりも、甘みのあるゴールドキウイを選ぶといいでしょう。

 また、種のある果物の場合、種を一緒に提供してしまうと義歯を装着している場合には種が引っかかって食べにくいことも。また、誤嚥にもつながるため、種はできるだけ取り除いてから提供しましょう。

 ブドウは種なしのものを選ぶか、種を取っておくこと。スイカやメロンも種を取り除いて提供してください。また、キウイフルーツの種や、白い芯の部分が食べにくいと感じている高齢者は意外と多いので、心配な場合には取り除いてあげましょう。

果物を高齢者に提供するときの注意ポイント【まとめ】

 果物に限らず、食材は「やわらかいこと」=「飲み込みやすい」ではありません。

 高齢者に食材を提供するときに「やわらかければ大丈夫」と考えている方は意外と多いのですが、それは違います。

 高齢者が食べやすい食事を考えるときは、以下の2つのことに配慮して欲しいと思います。

・「噛む力にあっているか」=食材のやわらかさへの配慮

・「飲み込む力にあっているか」=大きさ・とろみの有無など飲み込みやすさへの配慮

 この2つの面から食事の内容を考えるようにしましょう。

 特に果物は、そのままでやわらかいものが多いので、家庭でも気軽に提供しやすい食材ですが、一人ひとりの「飲み込む力」も見極めながら提供する必要があります。

 こうした配慮をしながら、高齢のご家族に旬の果物をおいしく安全、安心に味わっていただきたいです。

●食中毒が心配な時期<生もの>の調理ポイント「刺身が大好きな高齢の親に安心して味わってもらうには?」【管理栄養士解説】

●高齢者のための食事作りに役立つ<食材をやわらかくする>調理のコツを管理栄養士が解説

●介護食に使うときは要注意の食材8選と調理のポイント「パサパサ、ホクホク、パラパラ」はNGの理由を管理栄養士が解説

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