「業務範囲外」の仕事でも断れない現実 ケアマネが代読・送迎・宅配便受取まで…苦悩する現場
介護現場で中心的な役割を担うケアマネジャー(介護支援専門員)。彼らの主な役割は、利用者が必要なサービスを適切に受けられるよう、介護保険の仕組みに基づいて調整すること。しかし、実際にはその役割を大幅に超える業務をこなしているのが現状である。2024年9月に開かれた厚生労働省の「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」では、ケアマネジャーの業務範囲について再検討が行われ、現場での実態が改めて注目された。
「業務範囲外」の仕事が日常化するケアマネの現実
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が行った調査(令和5年度老人保健健康増進等事業「地域包括ケアシステムにおけるケアマネジメントのあり方に関する調査研究事業」)では、ケアマネジャーが対応している業務には、法律上の業務範囲を超えたものが多数含まれていることがわかった。具体的には、代読や代筆、入院・通院時の送迎、郵便や宅配便の受取や投函といった生活全般にわたる雑務まで日常的にこなしている。 特に、家族の支援が期待できない独居高齢者が増加している現状では、ケアマネジャーが唯一の支援者となり、さまざまな生活サポートを提供している。そのため、彼らは「本来業務ではない」と認識しつつも、利用者の生活を守るため、業務範囲を超える仕事をせざるを得ない状況に追い込まれているのだ。
断れない理由は、緊急性と支援の不足
ケアマネジャーが「業務範囲外」の仕事を担う理由のひとつに、利用者の生活に直結する緊急性の高さがある。例えば、生活が立ち行かなくなる危機に陥った利用者に対応しなければならない場合、ケアマネジャーが唯一の頼れる存在となることが多い。また、地域においてこうした緊急事態に対応できるサービスが不足していることも、ケアマネジャーに重い負担を強いる要因となっている。 さらに、費用面の問題もケアマネジャーに「断る余地」を与えておらず、多くの利用者が他の支援サービスを利用できない状況にあるため、ケアマネジャーが最終的な頼みの綱として期待されてしまっているのだ。そして医療機関や他の機関からの依頼、利用者や家族からの強い要望も、彼らが業務範囲外の対応を余儀なくされる要因となっている。
業務の整理だけでは不十分、引き継ぎと負担軽減を
厚労省の検討会でケアマネジャーの業務を整理し、業務範囲を明確にすることは重要な一歩だ。しかし、業務を明確化するだけでは、現場の負担は解消されないだろう。特に、緊急性の高い問題や地域のサービス不足など、ケアマネジャーにかかるプレッシャーは依然として大きいままだ。ケアマネジャーが業務範囲外の仕事を引き受けざるを得ない場合には、その対応が正当に評価される体制を整えることが、今後の議論で重要なポイントとなり、地域の他機関への業務引き継ぎ体制の整備も求められるだろう。
構成・文/介護ポストセブン編集部