福祉用具「選定の判断基準」が20年ぶり改定 福祉用具の専門職とケアマネの連携強化へ
厚生労働省は「介護保険における福祉用具の選定の判断基準」を改定し、全国の都道府県に対して新たな基準の通知を行った。この改定は、利用者の状態に合った適正な福祉用具の選定を促進することを目的としており、今後、介護現場におけるケアマネージャー(ケアマネ)や福祉用具専門職の協力体制が一層重要になるとされている。各自治体は、福祉用具選定の妥当性を判断する新基準に基づき、地域の介護支援を強化していく方針だ。
介護保険の福祉用具とその背景
介護保険における福祉用具とは、要介護者や要支援者の日常生活をサポートし、自立を助けるための用具を指す。車いす、特殊寝台、歩行器などがその代表例だ。しかし過去には、要介護度の低い利用者にもかかわらず、特殊寝台や車いすが給付される事例が報告されており、介護保険法の「自立支援」という理念に反する使われ方が問題視されていた。 こうした状況に対応するため、2004年に「介護保険における福祉用具の選定の判断基準」が作成された。この基準は、利用者の状態像に基づき、福祉用具の給付が適切であるかどうかを判断するためのものだ。しかし、近年の社会状況や介護現場でのニーズの変化を踏まえ、今回20年ぶりに見直しが行われることとなった。
新たな選定基準のポイントとケアマネの役割
今回の改定で注目すべき点は、特定の状態や要介護度に応じた判断基準の明確化だ。特に、「使用が想定しにくい状態像」や「使用が想定しにくい要介護度」の利用者に対して、福祉用具の選定を厳密に行う必要があるとされている。一定の基準に該当する場合には、その妥当性を慎重に検討し、プランの作成や見直しを行うことが求められる。
さらに、福祉用具の専門職がケアマネに対して助言を行い、利用者の身体状態や生活環境に合った最適な福祉用具を選定するプロセスが重要視されている。具体的には、ケアマネは福祉用具の専門職と連携し、福祉用具の利用に関する計画を立て、そのプランが適切かどうか多職種で協議することが求められる。この協力体制により、利用者の安全な福祉用具使用が推進され、自立した生活を支援するための環境が整えられる。
今後の展望と課題
今後は、ケアマネや福祉用具専門職だけでなく、医師やリハビリ専門職なども含めた多職種連携によって、福祉用具の選定や利用が進められることが期待されている。特に、自治体や介護施設では、この基準改定を受けて、福祉用具の適正な利用に向けた研修や指導体制の強化が急務となるだろう。
構成・文/介護ポストセブン編集部