「部屋の眺望で入居金は変わる?」「入居後すぐに亡くなったら入居金は戻ってくる?」高齢者施設選びのミスマッチ&トラブルを防ぐ4つのポイント【専門家監修】
健康寿命がのび、人生100年時代となった日本において、人生の最期をどこで迎えるかは重要な選択だ。そんな中、終のすみかとして「老人ホーム」の人気が高まっている。しかし、パンフレットなどではわからないことも多い。人には聞きづらい「入居前に知っておきたいポイント」を専門家に聞いた。
教えてくれた人
森坪真澄さん/「シニアホームの窓口」運営のファーストブリッジ社長、太田差惠子さん/介護・暮らしジャーナリスト、畠中雅子さん/ファイナンシャルプランナー
入居前に要確認!老人ホームの「聞きづらいポイント」を専門家が解説
【1】「海側」「山側」「階層」で料金は変わるのか?
そもそも部屋からの眺望の差で入居金は変わるのか?
「賃貸借方式を採用する高齢者住宅は、部屋ごとの契約のため、同一建物内でも海側、山側、階の高低などによって料金が変動する場合があります。
また、有料老人ホームの介護付きや住宅型は『施設を利用する権利』を契約する利用権方式が一般的。入居時に自立の条件があるホームの場合、眺望のよさを求めるアクティブシニアが多いため、眺望や階層により料金が変わるケースがあるので確認しましょう」(「シニアホームの窓口」を運営するファーストブリッジ・森坪真澄社長)
【2】入居後に眺望が悪くなったら補償はある?
眺望や環境が魅力で入居を決めたのに、眼前に高層ビルが建つなど眺めが変わった場合、補償はあるのか。
「契約時点で眺望を阻害する建設計画が確定していなかった場合は通常のマンションと同様補償はありません。ただ、契約の時点で高層ビルや工場などの建設・開発許可が下り着工も確定している場合、重要事項説明が義務付けられている項目もあります。契約前に重要事項説明書で確認しましょう」(前出・森坪氏)
【3】施設選びのミスマッチを防ぐには?
高齢者施設選びで特に大きなミスマッチは
「有料老人ホームで、“住宅型”と“介護付き”の違いを意識せずに入居し、要介護度や医療依存度が重くなると退去を求められるパターン」
と、介護・暮らしジャーナリスト・太田差惠子氏は指摘する。
「対応は各施設によって違います。重要事項説明書を必ず読み、要介護度レベルに応じたサービス内容や認知症になった場合の対応、夜間の医療・救急態勢、退去要件、月額費用に含むもの・含まないものを確認しましょう」
今は元気でも、将来の住み替えリスクを想定することが大切だが、「自立して元気な人が要介護度の重い入居者の多い施設に入るのもミスマッチの代表例です」とも語る。
「見学、体験入居で実際の入居者も見て判断するのが望ましいです」
【4】気になる前払金の行方
入居一時金(前払金)が1億円を超える施設もあるが、入居間もなく亡くなった場合、支払ったお金はどうなるのか。
「どのくらい戻るのかは入居時に決まっています。施設は入居一時金の償却期間を必ず設定しており、たとえば70代で償却期間10年の人が2年で亡くなった場合、初期償却分を差し引いた金額から8年分が戻ります。自己都合での短期の退去も同様で、返金に退去理由は問われません」(ファイナンシャルプランナー・畠中雅子氏)
初期償却は施設によって10~30%程度という。
「入居一時金はクーリングオフ制度の対象ですので、退去が契約後90日以内であれば初期償却分も返還されます」(畠中氏)
取材・文/上田千春 写真/Getty Images
※週刊ポスト2024年6月28日・7月5日号
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