女性こそ危ない<心臓発作>の8つの予兆「更年期障害と我慢して治療が遅れるケースも」
日本人の死因でがんに次いで多いといわれる脳卒中や心臓病などの「血管死」。中でも心筋梗塞の死亡率は、女性は男性の2倍高いというデータも。実は女性こそ危ない「心臓発作」。見逃してはいけないその予兆について専門医に解説いただいた。
教えてくれた人
大塚亮さん/おおつか医院院長で循環器専門医、菊池大和さん/きくち総合診療クリニック理事長・総合診療かかりつけ医、平野照之さん/杏林大学医学部教授、室井一辰さん/医療経済ジャーナリスト、渡辺尚彦さん/日本歯科大学病院内科客員教授
心筋梗塞の死亡率、女性は男性の2倍高いというデータも
心筋梗塞など心臓発作は突然襲ってくるというイメージを持っているかもしれないが、さまざまな予兆があるという。
医療経済ジャーナリスト室井一辰さんは語る。
「女性はそれらを更年期障害の症状だと思い込み、見過ごしてしまう人が多い。そもそも女性は痛みに対してがまん強いこともあり、一刻を争う病気だとは思わずに治療が遅れやすいのです。
実際、心筋梗塞の死亡率では、女性は男性の2倍高いというデータがあります。治療の遅れが、女性の死亡率の高さに関係していると思われます」(室井さん)
心臓発作の代表的な症状「心筋梗塞」の実例
動脈硬化がリスク因子となる心臓発作。代表的なのは心臓の筋肉に血液を送る血管が詰まったり、血管がけいれんすることで筋肉に酸素が届かず、心臓が動かなくなる心筋梗塞だ。
山内美恵子さん(65才・仮名)の夫は5年前に心筋梗塞の治療を受けたが、最初はまったく気がつかなかったという。
「ある日夫が、肩が痛いと言い出したのですが、整形外科に行っても原因がはっきりしない。翌日も痛みがひどいと言うので、近所のかかりつけ医を受診したところ、心電図を取ってやっと心筋梗塞の疑いがあることがわかったんです。
最終的に総合病院で治療を受けることができましたが、そのまま放置していたらと考えるとぞっとします」
山内さんのように、心臓の病気だが胸以外に予兆が出るケースは珍しくない。
「心筋梗塞の場合、胸が苦しいと言うかたもいますが肩が重くなる、胃が痛い、首を絞められるような感じだと言う人もいます。
安静にしていれば問題はないが、走って心臓に負荷がかかると胸が苦しくなる人もいる。心筋梗塞の場合は、血管が詰まりかけた『狭心症』の段階で病院に行くことが大事。症状が一旦治まったとしても様子見はしないでほしい」(おおつか医院院長で循環器専門医の大塚亮さん)
体のあちこちに痛みが出るため、年を重ねるほどにそうした痛みに気づきにくい人が多くなると、きくち総合診療クリニック理事長で総合診療かかりつけ医の菊池大和さんは言う。
「“胸が重い”“呼吸がしにくい”“吐き気がする”“冷や汗が出る”と表現されるかたが多い。更年期障害の症状にも似ていますが、続くようなら一度病院で調べて、はっきりさせた方がいいでしょう。
実際、最近クリニックに来た3人の患者さんも1~2か月の間、“胸やけがする”“胸が締めつけられる”“胸に違和感がある”というのが主訴でしたが、診察すると心筋梗塞でした」
注意したい心臓発作の主な「8つの予兆」
【1】胸が重い、苦しいと感じる
【2】首を絞められるような感覚がある
【3】冷や汗が出る
【4】息が苦しい
【5】胸やけがする
【6】吐き気がする
【7】少し動いただけで息切れがする
【8】上記の症状が出るものの数分で治まる
心筋梗塞を招く要因は「生活習慣病」
同じ予兆であっても、命にかかわるかどうかはその体の状態に左右される。とりわけ甚大なリスクを招く主な要因は、生活習慣病だ。
「高血圧の人は動脈硬化が進みやすいので、血管が詰まったり、破れたりしやすい。糖尿病の人も血管系の病気を起こしやすいといわれています。中性脂肪やコレステロール値も高すぎると血管を傷つけるので、気をつけてほしい。
注意すべきは健康診断で血圧や血糖値、中性脂肪、コレステロール値など複数の項目が“ギリギリセーフ”な人。健康診断では投薬治療などの対象になっていないものの、悪い値が重なるほどにリスクが高くなります」(大塚さん)
心房細動(不整脈)を見逃さないで
杏林大学医学部教授で脳卒中の治療に詳しい平野照之さんは、「心房細動(不整脈)を見逃さないでほしい」と訴える。
「高齢女性に多いのは『心原性脳塞栓症』といって、不整脈が原因で心臓にできた血栓が脳に飛んで脳の血管に詰まって起きる脳梗塞です。心房細動があると動悸を感じる人もいますが無症状の人もいるので、自分で定期的に脈を測って確かめてください。人差し指・中指・薬指を手首の動脈に当て、1分以上測ってバラバラと脈が乱れることがあれば疑いがあります」(平野さん)
口腔環境の悪化もハイリスク
口腔内の環境が悪い人もハイリスクだ。
「虫歯や歯周病で口の中が常に炎症していると血管内のゴミ(プラーク)が増えて動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすことは、多くの研究によって明らかになっています」(医療経済ジャーナリストの室井一辰さん)
糖質の過剰摂取に注意
大塚さんは、糖質の過剰摂取に注意を促す。
「糖質を摂りすぎると悪玉コレステロールやAGE(終末糖化産物)が増え、血管に炎症を起こす原因になる。例えば朝は菓子パンで済ませ、昼は麺類、合間にお菓子を食べて、夜に初めてきちんとした食事をとるという人は、いちばん危険なタイプ。
『糖質ゼロ』の人工甘味料も中性脂肪を増やすので、血管を傷つけます。塩分摂取量が多い人も高血圧を招くのでNGです」
血管の病気は繰り返しやすい
一度でも発症したことのある人は、これらの傾向に当てはまらなかったとしても要注意。日本歯科大学病院内科客員教授で、高血圧に詳しい渡辺尚彦さんは、「血管の病気は繰り返しやすい」と言う。
「一度脳出血などを起こした人はすでに血管が硬くなって、切れたり詰まったりしている。発症しやすい土台ができているので、ほかの疾患も起こしやすいといえます」
脳や心臓は、一度ダメージを受けてしまうと元には戻らない。
「心筋梗塞を発症すると命が助かったとしても心機能は低下するので、心不全になりやすくなる。だからこそ救急車を呼ぶほどの症状でなくても、もしかしたらと思った時点で一度診察を受けてほしい。脳なら内科や脳神経科、心臓なら循環器専門の内科に行くといいです」(大塚さん)
特に症状はないが、生活習慣病があって心配だという人も循環器内科に一度行ってみるのがいい。
「循環器内科は心臓や血管が専門なので、高血圧や糖尿病の治療に詳しい。大病院とのつながりが強い医師も多く、いざというときの紹介先にも安心感があります。超音波で動脈硬化を調べる検査も受けることができます」(室井さん)
写真/PIXTA
※女性セブン2024年5月2日号
https://josei7.com/
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