倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.22「夫から買ってもらった唯一のもの」
漫画家の倉田真由美さんにとって、「最高の夫で、最高の父ちゃん」だったという叶井俊太郎さん。連れ添って15年、いろいろなことがあった中で、たったひとつ、夫に買ってもらったものとは…。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。
夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』 『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』は現在Amazonで無料で公開中。
夫のいいところ、ダメなところ
「いい旦那さんだったんだね」
夫のことを話したり書いたりしていると、しばしば言われることがあります。確かに、私にとっては掛け値なしに最高の夫、最高の父ちゃんでした。
でも、誰にとっても最高なわけありません。夫は3回も離婚をして私は4番目の結婚相手だったし、プライベートでも仕事でも、揉め事は少なからずありました。いいところもたくさんあったけど、ダメなところもたくさんある人だったと思います。
実際娘を喜ばせることには熱心だった夫ですが、妻である私に対してはそうではありませんでした。例えば娘には誕生日、クリスマス、そうじゃない日でもおもちゃや服などたくさん買って私に怒られるほどでしたが、私にプレゼントを贈るという発想はない人でした。
夫から買ってもらったものといえば、「卓上流しそうめん器」くらいかな…それも私に、というより「娘が喜びそう」という動機が強かったのではないかと思います。
婚約指輪も結婚指輪も、私が欲しがらなかったというのもあるでしょうが、買おうという気配すらありませんでした。自分の指輪は私に半分お金を出させて買っていましたが。
お金に関しては、かなり問題がありました。働き者だったので事業に失敗したり破産したりしても収入がまったくなくなるということはありませんでしたが、自分に入ったお金は好きにつかってしまう、というようなところがありました。そして「貯蓄」はまったくできません。
給料日前に、「財布に150円しかない、後で返すからお金貸して」などと言われることもちょくちょくありました。貸したお金が返ってくるかどうか、半々くらいでしたが。
下戸なので「飲む」もないし、博打を「打つ」もなかったけど、彼は「オシャレ」にお金をかけることが好きで、収入はかなりの部分服飾費に消えていました。娘が生まれてからは娘のおもちゃ、服代もそれに含まれるようになり、家庭の維持費は「ママ(私)がなんとかしてくれるでしょ。俺もちょっとは出すからさ」と無責任でした。必定、節約は私の役割となり私だけが安い古着を着ているというのが我が家の日常でした。
「いいところを愛せるのなら…」
結婚した当初からそうなので、私の女友達には「私にはそういう旦那、無理!」という人も結構いました。
結局、相性なんですよね。誰だっていいところダメなところがある、どこを許せてどこを許せないかは人によって違う。夫のダメなところは、私には許容範囲だった。夫のいいところは、私には重要なところだった。完璧な人なんていないんだから、いいところをとてもとても愛せるのなら、大抵正解のような気がします。
倉田真由美さん、夫のすい臓がんが発覚するまでの経緯
夫が黄色くなり始めた――。異変に気がついた倉田さんと夫の叶井さんが、まさかの「すい臓がん」と診断されるまでには、さまざまな経緯をたどることになる。最初は黄疸、そして胃炎と診断されて…。現在、本サイトで連載中の「余命宣告後の日常」以前の話がコミック版で無料公開中だ。
『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』
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