倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.23「葬儀費用のはなし」
倉田真由美さんの夫で映画プロデューサーの叶井俊太郎さんが旅立ったのは2月16日のこと。都内で執り行われた通夜・葬儀には叶井さんを慕う大勢の弔問客が訪れた。倉田さんは、当時は、しっかり考えることもできなかった葬儀だったのだが、「決めておけばよかった」と痛感していることがあると明かす。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。
夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』 『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』は現在Amazonで無料で公開中。
夫の葬儀で痛感したこと
夫の葬儀、うちの場合は妹と義理の妹が全面的に交渉をしてくれたので滞りなくすませることができました。
大事な家族がまだ生きているうちに、葬儀のことなんて考えたくはないものです。そして亡くなった直後はそれどころではなくなります。でも誰にでも起こる「身内の葬儀」、最低限考えていたほうがいいこともあることは痛感しました。それは、「総費用」です。
今考えると、これだけは最初に決めておくべきだったなと思います。葬儀社は様々なものを勧めてくるので、唯々諾々と従っていたら青天井に金額が上がっていきます。お花、棺、香典返し、多くのことを「する」「しない」はもちろん、グレードも一つずつ決めていかねばならないので、すべて決まるまで総費用は分かりません。
「すべて合わせますと、こちらになります」
と、初日の交渉で提示された金額は、私がなんとなく「葬儀にかかる費用」と想像していた額を大幅に超えていました。
私はその時点でまだお金のことを真剣に考えられるような状況ではなかったので、とりあえず首肯するしかありませんでした。ところがこれでも甘い計算でした。翌日新たに出された見積もりは、こんなものではすまなかったのです。
今はそういうところも多くなっているのでしょうが、うちが頼んだ葬儀社では葬儀のご案内のサイトを作り、そこの閲覧数で大体の来場者を予想します。その数が出て、葬儀社の担当から「昨日の数ではまったく足りません」と連絡があり、お花やお食事、香典返しの数を増やすことにしました。そして一気に前日出された金額が倍に膨れ上がったのです。
使わなかった香典返しの分は戻ってくるとはいえ、相当な高額です。結局これで決めてしまいましたが、「夫が知ったら、『俺が生きているうちにつかってくれよ!』と怒っただろうなあ」と嘆息することになりました。
→倉田真由美さん「すい臓がんの夫と余命宣告後の日常」Vol.14「葬儀と骨壷」
ポップコーンの金額は?
葬儀で提供されるものは、びっくりするほど高額です。例えば夫は映画を仕事にしていたので、来てくださったかたに映画っぽくポップコーンをお出ししました。これが一皿2200円、50皿で11万円。ポップコーンでこの金額!揚げ物やサンドイッチなども含めると、食事だけですぐに車が買えそうな額になります。
内容は後でも人任せでも、「この金額で」という総額だけはざっくり決めておいたほうがいいよと身近な人には伝えています。
倉田真由美さん、夫のすい臓がんが発覚するまでの経緯
夫が黄色くなり始めた――。異変に気がついた倉田さんと夫の叶井さんが、まさかの「すい臓がん」と診断されるまでには、さまざまな経緯をたどることになる。最初は黄疸、そして胃炎と診断されて…。現在、本サイトで連載中の「余命宣告後の日常」以前の話がコミック版で無料公開中だ。
『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』
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