兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第233回 根気のない介護者の愚痴】
特別養護老人ホームの入所を断られてしまった若年性認知症の兄。「排泄のコントロールができない」ということが大きな要因です。では、兄が入所できるのはどこなのか…。一緒に暮らす妹のツガエマナミコさんは、困り果てています。
* * *
施設について調べるのが面倒になってきてしまいました
「特養(特別養護老人ホーム)や老健(介護老人福祉施設)には詳しいのですけど、グループホームのことはよく知らないんです。それ専門に相談にのってくれるところがあるので、後日その連絡先をお知らせします」
月に一度のケアマネさまの来訪日に、そんな話になりました。グループホームはケアマネさまの管轄ではないことを、ここにきて初めて知りました。
先日、兄の睡眠導入剤のことで、近所の内科医院の先生に相談に行ったとき(第232回)、「特養は基本的に高齢者が対象なので、お兄さんが一人若くて元気だとスタッフの対応が大変。まずは認知症対応のグループホームで数年過ごして、足腰が弱ってきたら特養に移るというのが一般的かと思う」と言われたお話を、ケアマネさまにもしてみました。すると「確かにそうですね」と深くうなずいていらっしゃいました。
そして「グループホームのことはよく知らない」という真実を聞き、「このケアマネで本当に大丈夫なのか」と不安になってしまいました。
でも、その後、ケアマネさまは基本的に利用者の日常生活の維持・向上を目的にケアプランを作成するのがお仕事なので、どちらかといえば通所施設やさまざまな介護サービス情報に強く、入所施設に詳しいわけではないのだと知りました。入所施設である特養や老健は、契約にケアマネさまが介入する必要があるのでそれなりに詳しいものの、グループホームは個別契約になるのでケアマネさまは門外漢。詳しくないのは当たり前なのでした。
母親の介護から数えると介護歴もかれこれ10年になろうとするのに、まだまだ知らないことがあるものだな~と、勉強不足を思い知らされました。
なぜにこんなに複雑なのでございましょうか?
施設やサービスはたくさんあるのに、なんだか面倒くさくて「もういいや」となってしまう人も多いのではないでしょうか。わたくしもあれこれ調べるのが面倒で「何が何でも兄に施設に入ってもらおう」という考えはだいぶ薄まってまいりました。完全な根気不足。どこに行けば根気が手に入るのでございましょうか。
どうせわたくしは、たいした仕事はできませんから、兄の介護でこの先の人生が埋まっても社会的損失はゼロ。そう思えばこのままがベストでございます。兄をどこかに丸投げして自分だけ解放されることは考えず、デイケアとショートステイで休憩を取りながら、これからも在宅介護でいくのが人として最適だと思うようになりました。とはいえ一貫性のないわたくしのこと、明日は明日の最適を思いつくかもしれませんけれども…。
それより、ふと自分の老後が心配になってまいりました。
気がかりなのは、わたくしには身元保証人がいないという現実です。
入院や施設入所、介護サービスを受けるにも必要になる身元保証人。とある新聞記事によると、それを請け負うサービス会社もあるようですが、ある程度のお金をあらかじめ渡す「預託金制度」をとることが多く、契約通りのことをきちんとしてくれるかどうかは、怪しいところもあるそうです。高齢でボケてしまったり、死亡してしまうと不正流用されたケースもあったとか…。
子どもがいないとはこういうこと。出産と子育てをスル―した結果、こうしてちゃんとツケが回ってくるのだなぁ、人生はうまくできている…としみじみ感じてしまいました。
でも、先々を考えてあれこれ不安になるよりも「まぁなんとかなる」と思っている方が幸せでございましょう。これからは今まで以上に楽観的になることを目指していこうと思います。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性60才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現65才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ
●特別養護老人ホーム(特養)とは?費用や入居条件、申し込み方法「早く入居するコツ」も解説