兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第230回 入所に立ちはだかる排泄問題】
一緒に暮らす若年性認知症の兄が所・時間に関係なく大も小も排泄してしまうようになり、サポートに限界を感じた妹のツガエマナミコさんは特別養護老人ホーム(以下、特養)に入所の申し込みをしました。同じ施設にあるショートステイでのお試しを経て、「受け入れ方向」との連絡があったのですが、結局、「入所はできない」という回答がきました。まさかのの展開にマナミコさんは、驚愕、落胆!いったいなぜ、そのようなことになってしまったのでしょうか…。
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「排泄コントロールは必須です!」と言われました
いかにも入所OKの口ぶりでしたのに、あっさり手の平を返されて、すっかり人間不信ならびに介護制度不信になってしまったツガエでございます。
「家族での介護が難しくなったときは無理をせずにプロを頼ってください」という介護の指南書は、絵にかいた餅でございますか? 「特養は排泄コントロールができる人限定です」という現実をどうして大々的に明記していないのでしょうか。
希望した施設から受入不可と判断されて、さっそくケアマネさまにお電話で一部始終をご報告いたしました。ケアマネさまも意外だったようで驚いていらっしゃいましたが、「老健(介護老人福祉施設)なら大丈夫かもしれないので聞いてみます」とおっしゃり、翌週に来訪していただきました。
老健は最長でも1年ぐらいしか入れない(※1)、期限つきの公的老人ホーム。とりあえず、それでもいいから入れていただけるのであればお願いしたい気持ちでございました。
※1:入所期間は、原則として3か月、最長でも6か月が目安となっていますが、6か月を超えて滞在するケースもあります。(編集部註)
参照記事:介護老人保健施設(老健)とは?費用や入所基準、メリット・デメリットを解説【社会福祉士監修】
でも、ケアマネさまのお話しでは、老健も同じだったとのこと。とにかく排泄コントロールができないと嫌がられることは確実なようでございます。
ケアマネさまがお知り合いの特養の人に今回のことをお話ししたら、排泄コントロールができない人は夜間が問題だと言われたそうでございます。昼間はスタッフも多いので目が届きやすいけれど、夜は、基本入所者20人にスタッフ1人になるので対処しきれない。睡眠導入剤で夜から朝まで起きない状態になれば、老健でも特養でも入れるだろうとのことでございました。
ケアマネさま曰く「今通院している病院の先生に相談してみるか、デイケアでお世話になっている先生に相談して睡眠導入剤を処方していただくのはどうでしょうか?」とのこと。兄が通院する大学病院の財前先生(仮)はお薬を出すことが大好きなので、ホイホイ出してくださるに違いありません。でも次の診察日は2か月先。途中で予約を取るのは大変ですから、デイケア施設の中にある内科の先生にご相談してみる方が簡単そうでございます。
あちこちで排泄されて困るのは、家庭でも施設でも同じでございますから、トイレではないところで排泄してしまう認知症患者には必須のお薬なのかもしれません。とりあえずはお薬である程度夜間の徘徊排尿がない状態になったら、老健か特養に新たに入所希望を出すという段取りになりました。
このサイトの編集者さまからは「小規模多機能型施設」(※2)をオススメされました。あれこれアドバイスをいただき、ツガエは幸せ者でございます。小規模多機能型施設は便利に使える施設なわりに料金的にも良心的。でも特養や老健のように介護保険負担限度額が使える範疇ではないので少しお高めなことは否めません。寿命から言って先が長いので、ケアマネさまとしてはあくまで特養か老健がオススメのようです。編集者さまからは「10年20年のことと考えると料金の安さが決め手になってしまうけれど、2~3年後には状況が変わる可能性もあるので、もうすこし短期的なスパンで考えてもいいかもしれないですよ」という主旨のお言葉をいただき、「確かに」と思いました。さて、どうしたものでございましょうか。
※2:小規模多機能型施設については、以下の記事を参照ください。
「小規模多機能型居宅介護」とは? サービス内容や費用をわかりやすく解説【社会福祉士監修】
どこにお世話になるにしても、きっと排泄コントロールは必須でございましょう。夜間だけではなく、昼間も歩かれては困るとなれば、1日中うとうと眠ったような状態にされることになるかもしれません。それが可哀想だと思うなら、家族でみるか、月何十万円もかかるような高級有料老人ホームかの二者択一!?
唯一、ショートステイは排泄コントロールをしなくてもOKと言われているので、ショートステイのスタッフさまには申し訳ないですが、当面はショートステイを多用する方向で、わたくしの介護休日を増やそうと思っております。先日のめまい騒動と、施設の手の平返し攻撃によって戦闘力がガタ落ちしたので、やっとそんな心境に至りました。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性60才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現65才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ