「警戒レベル2・3・4」高齢者が避難するのはどのレベル?もしもの時の避難行動を専門家が指南
高齢の親をもつR60記者は、台風や大雨などの警報を見ると不安になる…。災害時に90代の母をどのタイミングでどうやって避難させればいいのか?それともさせない方がいいのか? そんな不安を感じている記者が、専門家に高齢者の避難タイミングや注意すべきことを教えてもらった。
教えてくれた人
防災介助士インストラクター、サービス介助士インストラクタ
桜美林大学院老年学研究科修士課程修了。公益財団法人「日本ケアフィット共育機構」の事務局に勤務し、防災に関する知識や情報を啓発している。企業や教育機関などで高齢者や障害者に対する介助技術を含めた接遇についての講演などを行う。近年はボランティア組織の構築、施設のユニバーサルチェック、災害時の避難行動要支援者対策なども担当。
https://www.carefit.org/
高齢者はいつ避難すればいい?避難開始の判断基準
国土交通省の調査※によると、洪水や土砂災害を引き起こす大雨や短時間強雨の日数が増えている。1日の降水量が200mm以上となる年間日数を、「1901年~1930年」と「1990年~2019年」で比較すると、直近の30年間では約1.7倍となっている。
※「国土交通白書2020」
https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r01/hakusho/r02/html/n1115000.html
こうした状況から、内閣府(防災担当)・消防庁は、避難情報に関するガイドラインを改定。これまで「警戒レベル3」は、「避難準備・高齢者等避難開始」だったが、「高齢者等避難」に変更された(警戒レベル・避難行動については、後述)。
実際に、気象庁では、令和4年6月より、線状降水帯による大雨の可能性がある程度高いことが予想された場合、半日程度前から「線状降水帯」というキーワードを使い、大雨災害へ備えるように警鐘を鳴らしている。
しかし、在宅介護をしている家族は、台風や大雨などで警報が流れると、「いま避難するべき?」「どこにどうやって?」などと、あわててしまうことも…。
自力で避難できない高齢者をどのタイミングで避難させればいいのだろうか。
警戒レベル別の避難行動の目安を確認
「災害が発生する恐れがあるとき、市町村長は災害から住民を守るため、災害対策基本法に基づき、以下の避難指示などを出すことができます。
避難指示の警戒レベルをテレビやラジオ、行政からの案内で知ったら、速やかに行動しましょう」
【警戒レベル別・避難行動の目安】
「災害時には、気象庁から警戒レベル1・2が発表され、市町村から警戒レベル3~5が発令されます。
警戒レベル5はすでに災害が起きていて市区町の役所も被害にあっている可能性もあるなどして、災害の状況を把握できないことから発令されない場合があります。
高齢者や障害のある人が避難するタイミングは、警戒レベル3が目安です」
警戒レベル1:早期注意情報(気象庁が発表)
警戒レベル2:大雨・洪水・高潮注意報(気象庁が発表)
警戒レベル3:高齢者など避難(市町村が発令)
警戒レベル4:避難指示 すべての人が避難するべき(市町村が発令)
警戒レベル5:緊急安全確保(市町村が発令※)
※市町村が災害の状況を確実に把握できない等の理由で発令されない場合もある。
警戒レベル3:「避難に時間がかかる高齢者は避難開始」
「避難時間を要する高齢者は、警戒レベル3が発令されたら避難を開始します。
避難の準備をするタイミングではありませんので、遅くともこのタイミングで避難するようにしましょう。
警戒レベル3は、2021年に災害対策基本法の一部が改正され、以前の「避難準備・高齢者等避難開始」から、よりわかりやすい名称「高齢者等避難」に変更されました。
寝たきりの人や病気・けがなどで徒歩での移動が困難な人は、避難を支援する人が到着してから避難所へ向かうことになると思います。
『警戒レベル3』は、避難行動要支援者とその避難支援者に対しては、実際の避難開始を意味する呼びかけなので、遅くともこのタイミングで避難をしましょう」
なお、警戒レベル3は、⾼齢者等以外の⼈も必要に応じ、普段の⾏動を⾒合わせ始めたり、危険を感じたら⾃主的に避難したりするタイミングでもあります」
警戒レベル4:避難指示「すべての人が避難する」
「2021年に災害対策基本法の一部が改正され、避難勧告と避難指示(緊急)が『避難指示』へ一本化されました。
『避難指示』は市町村長が通常の避難行動ができる住民に対して『全員速やかに危険な場所から避難する』ために出すもので、雨量・河川水位・地震津波情報や職員による巡回結果に基づいた信頼度の高い情報です。
しかし、避難指示には、強制力はないため、『まさか自分の家は大丈夫だろう』と過信して自宅に居続ける人も。この考えた方は、大変危険です。たとえ災害が起きなかったとしても、警戒レベル4は誰もが避難すべきであり、迅速に避難行動をとるようにしましょう」
警戒レベル5:すでに災害が発生!命の危険も
「警戒レベル5は、災害が発生または切迫している状況に相当し、警報を発令する市町村の役所などの行政機関が被害にあっていたときは発令されない場合があります。警戒レベル5を待たずに避難をして身の安全を確保しておきましょう」
近年多発している「水害」にも注意を
「近年大雨による被害が大きくなっています。避難するときに備えて、どこへ、どうやって避難するかを確認しておきましょう。
そして、大雨に関する情報を覚えておくといいでしょう。
『大雨注意報』『洪水注意報』だけでなく、さらに『氾濫注意情報』が出たときは、雨がたくさん降って災害が起こる可能性があります。
前述の『警戒レベル3』(高齢者等避難)や『大雨警報』、『洪水警報』、『氾濫警戒情報』は、災害の危険性が高まったときに出されます。
高齢者や障害のある人など避難に時間がかかる人は、できるだけ早く避難を始め、安全を確保しておきましょう」
・気象庁の防災情報サイト
https://www.jma.go.jp/jma/menu/menuflash.html
避難しない方がいい場合も?
「移動が難しい高齢者や障害のある人は、あわてて避難しない方がいい場合もあります。
無理に避難所に向かう途中でケガをするなど、かえって危険な場合もあるので、まずは自宅避難できるかどうかや、事前にハザードマップで災害リスクを確かめておいてください。
ただし、『警戒レベル3』が発令された場合は、早めに避難所に向かいましょう。
自治体の防災に関するパンフレットや防災介助士などの講習を受けることで、防災の知識について知ることができ、応急対応にもつながります。
いつくるか予測できない災害に備えて、日頃から地域のハザードマップなどで、避難経路の確認や、方法をご家族で話し合ってください。そして、災害時に支援が必要と思われるかたたちに目を向けていくことが、いざという時の素早い支援につながります」
写真提供/公益財団法人日本ケアフィット共育機構 取材・文/本上夕貴
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