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健康

“早寝早起き““1日8時間”…思い込みが不眠の原因!?意識改革で正しい眠り方を

「寝付きが悪い」「夜中にトイレに起きてしまう」「起きた時点で疲れている」…。

 症状は違えど、多くの人が眠りに関する悩みやストレスを抱え、人によっては、それらが深刻な体調不良の原因となっています。そんなかたがたはぜひ、この記事をお読みください。

 睡眠に対する考え方を見直し、生活習慣を工夫すれば、あなたの眠りは必ず改善できるはずです。長い人生のうち、実に3分の1が眠りに費やされていることを思うと、自分の睡眠ともっと真剣に向き合うべきだと思いませんか?

→【よい眠り】のためにやるべきこと、やってはいけないこと

 * * *

加齢に伴う睡眠力の低下と昼間の過ごし方

 なぜ人は年々眠れなくなるのだろうか? 上のグラフは厚労省が行った「睡眠によって充分な休養がとれていない人」の調査結果だ。平成29年を見ると、40~50代の約30%、60代の15%、70代以上の約10%が、不充分と回答している。40代、50代は眠りに悩みの多い年代といえる。

「この原因の1つに、加齢にともなう“睡眠力”の低下が挙げられる」と言うのは、睡眠や呼吸器専門のクリニック『RESM新横浜』院長の白濱龍太郎さんだ。

「私たちの体には、朝、日光を浴びるとメラトニンという睡眠を促すホルモンが分泌され、14~15時間後に自然と眠くなるメカニズムがあります。

 ですが、加齢とともにこの分泌量が減少するため、若い頃のようには眠れなくなる。意識してメラトニンの分泌量を増やす生活を送る必要があるのです」(白濱さん) 

 また、脳内科医で『加藤プラチナクリニック』院長の加藤俊徳さんは「不眠には昼間の過ごし方にも問題がある」と言う。

「外出しない、歩かないなど運動量が少ないと睡眠力が弱まることがわかっています。家事にも積極的に取り組み、活動量を高めることが大切です」(加藤さん)

●眠りに対しての思い込みチェック

□ベストは8時間睡眠
□夫が寝るから自分も寝る
□早寝早起きが体によい
□長く眠れば疲れはとれる
□ぐっすり熟睡することが何よりも重要
□夜は決まった時間に寝る

 上のチェック表にあるような思い込みによって、自ら不眠を招いているケースも少なくない」と、日本大学医学部精神医学系主任教授の内山真さんは指摘する。まずは、これらの“思い込み”を見直すところから、安眠への道を探っていこう。

睡眠時間は8時間もいらない

「ベストな睡眠時間は8時間」といわれているが、果たしてそれは正しいのだろうか。実は、間違った知識が不眠を招いていることもあるのです。

「若い頃はよく眠れたのに…」と昔と比べて、今の睡眠に不満を持つ中高年は多いが、睡眠に関する誤った知識により、眠れないと思っている人も少なくないと前出の内山さんは指摘する。

「体質や年代、日中の活動量によって、睡眠の必要量は変わってきます。また、夜の平均睡眠時間も年齢により異なります。赤ちゃんを除く10才までが9時間前後、11~15才は約8時間、25才で約7時間、45才で約6.5時間。65才で6時間くらい。年齢が上がるごとに減少します。健康な成人の場合、毎晩8時間眠ることはありません」(内山さん・以下同)

 体が求める睡眠時間を超えて布団で横になっていると、睡眠は浅くなり「頻繁に目覚める」「早く起きてしまう」「休息感がない」といった不眠に陥りやすくなる。

就寝時間は人それぞれ

 さらに、中年以降の夫婦には、夫が妻の眠りを妨げるという現象も起きている。

「男性は40代後半~50代後半にかけて、体が早寝早起きのサイクルに変わっていきます。 たとえば、これまで0時に寝ていた男性が、22時に眠くなり、その分、早くに目が覚める。この現象は、女性より男性の方が10年以上も早く出現します」

 下の2つのグラフは「加齢による日本人の睡眠の変化」を表したものだが、男性は50代以降から早朝覚醒する確率が上がり(=朝型化)、女性は50代を境に入眠困難、つまり寝付きの悪さが際立っている。

「女性の寝付きの悪さの原因の1つは、早く寝てしまう夫に合わせて、眠くないのに眠ろうとすることです。早寝早起きは健康にいいというイメージから、自分も夫と同じ時間に眠ろうとした結果、寝付けなくなる女性が少なくありません」

 心当たりのある人は、夫に合わせず、以前の就寝時間に戻してみるといい。

 さらに、暗い部屋で眠れずに布団の中で悶々としていると、別のマイナス要因も加わってくる。

「暗い場所にいると本能的に警戒心が高まります。考え事をし始めるとつい心配事が浮かび、取り越し苦労をして頭がさえてくるのです」

 眠れない時は無理に寝ようとせず、ひとまず寝床から脱出。そして、眠気が来るまであせらずに、部屋でくつろげばいいのだ。

熟睡したいなら適正な睡眠時間を厳守

「夜中に目が覚める」「トイレに必ず起きる」などの体の変化は、若い頃にはなかったものだけに、気になる人も多い。

「夜中に何度も目を覚ますと、熟睡感が損なわれ、翌朝の睡眠の満足度が低下します。これを補おうと長く寝床で過ごすと、先ほどのようにさらに睡眠が浅くなる。そんな悪循環に陥ってしまいます」

 だが、8時間以上眠っている人は寿命を縮めるというデータもある。

男女別に睡眠時間とハザード比を折れ線グラフ化したもの

「アメリカで男女110万人を対象に、6年後までに死亡する割合と睡眠時間の関係を追跡調査したところ、7時間前後の睡眠時間が、もっとも長生きと判明しました。4~5時間程度と短くても、8~9時間と長い睡眠でも死亡率は上昇していたのです」
 眠くないのに布団に入ったり、ダラダラと横になっている時間を減らすことから始めれば、熟睡できると内山さんは言う。

よい眠りにはほどほどの爽快感が

 では、どんな睡眠が理想なのだろうか。

「熟睡できず、あまり眠れなかったと思っても、ほどほどの爽快感があり、眠気によって日中ウトウトするなど日常生活に支障をきたさなければ、よい眠りといえるでしょう」

 気をつけなければいけないのは、慢性的にいびきがひどい場合や、精神的に落ち込むことが多い場合だ。症状が1か月以上続くようなら、睡眠の専門医に相談しよう。

「また、6時間未満の睡眠は疾病リスクを高め、高血圧やうつ病を発症する危険が約2倍に、糖尿病のリスクは約2~3倍まで上がってしまいます。このような生活を続けている人は、一日も早く生活習慣を見直しましょう」

朝決まった時間に起き、夜は眠くなったら寝る

 睡眠は心身を休息させ、心と体の健康を保つための基盤であると内山さんは言う。

 では、不眠に対してどう向き合えばいいのだろうか。

「大きなストレスや心配事などによって眠れなくなることはありますが、そんな日が1か月以上続くと、眠りに対するこだわりが強くなってしまいます。不眠のきっかけとなったストレスが解消されても、今度は”今日も眠れなかったらどうしよう”という不眠恐怖にとらわれてしまうのです」

 不眠恐怖に支配されないためには、”今日眠れないなら、その分、明日、眠ればいい”と気持ちを軽くすることだ。

「本当に眠れないと日中起きていられなくなり、次の晩は眠ることができるものです。それでも心配なら医師に相談を」

 そして朝は必ず、同じ時間帯に起きる習慣をつけることがポイントだ。

●いい眠りのために、意識をチェンジ

・年代に適した睡眠時間で眠る
・就寝時間は自分で決める
・眠くなったら布団に入る
・ほどほどの眠りがいい眠りと認識する
・朝は決まった時刻に起きる

「決まった時刻に目覚ましをかけて規則正しい生活を送ると、自然と眠る時間が定まってきます。人は目覚めるまで寝ることが幸せだと思いがちですが、実は必要以上に長く眠った日の朝は頭が痛くなるなど、決してベストな状態ではありません」

 朝は規則正しく、夜は神経質にならない。“もう少し寝ていたい”と思いながら目覚まし時計を止めて、がんばって体を起こす。それが健康的で、次の睡眠に導いてくれる朝の迎え方なのだ。

※女性セブン2019年2月21日号

●眠れないシニア…睡眠薬に頼るのは危険!うまく眠るためのコツ

●やってはいけない【睡眠】最新データ!1日8時間以上眠ると死亡率が上昇

●理想の睡眠時間は?日本人は寝不足、肥満や生活習慣病のリスクも

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