発酵食品の健康効果を学ぶ「ナタデココも発酵食、きゅうりはぬか漬けにするとビタミンB1が9倍に」
しょうゆ、みそ、納豆、甘酒…世界的に見ても、日本ほど発酵食品に親しみが深い国はない。まさに“発酵大国”と言っても過言ではないほど日常に取り入れているにもかかわらず、ヒトの体にどのような影響があるのか知らない人も多いはず。専門家もおすすめする「毎日の食事に取り入れたい食材」や「発酵食品の健康効果」について解説する。
教えてくれた人
石原新菜さん/イシハラクリニック副院長、藤本倫子さん/日本発酵文化協会上席講師、麻生れいみさん/管理栄養士
発酵食品で腸内環境を整え、病気を未然に防ごう!
発酵食品に期待される効果で誰もが最初に思いつくのが「腸内環境の改善」だろう。イシハラクリニック副院長の石原新菜さんは、整腸の重要性についてこう解説する。
「ストレスを感じるとお腹が痛くなる人がいるように、脳と腸には互いに深く関係している『脳腸相関』があることがわかっています。特に最近の研究では、“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンの8~9割は腸でつくられていることも判明している。つまり、腸内環境が整うほどセロトニンの分泌量が多くなり、ストレスにも強くなるのです。
また、ビフィズス菌などの善玉菌は白血球を中心とする免疫細胞を刺激するため、免疫力の向上にも役立ちます。 かぜなどの感染症の予防につながるだけでなく、アレルギー症状が改善することもあります」(石原さん・以下同)
一方で腸内に悪玉菌が多いと腸壁に炎症が起きやすくなり、もしそこから毒素が血液を介して全身にまわれば、動脈硬化や心筋梗塞、アルツハイマー型認知症の原因になる。 善玉菌を増やして腸内環境を整えることは、こうした病気を未然に防ぐことにもつながるのだ。
腸内環境を整えるためには、できるだけいろいろな種類の善玉菌を取り入れて菌のバランスを保つことがポイントだと、石原さんは話す。
「理想は、善玉菌・悪玉菌・日和見(ひよみり)菌の割合が、2:1:7であること。善玉菌と悪玉菌のどちらにもなることができる日和見菌は、割合が高い方の菌の味方をします」
発酵食品の「菌」には美肌やダイエット効果あり
日本発酵文化協会上席講師の藤本倫子さんは、発酵食品に含まれる「菌」の持つ力に着目する。
「食品に含まれる菌の多くは胃酸で死滅してしまいます。ところが、発酵食品の菌の中には、胃酸に強いものも少なくありません。特に、植物由来の乳酸菌、納豆菌、酪酸菌、酢酸菌という4種類の菌は生きたまま腸まで届きやすい。植物由来の乳酸菌を含む代表的な発酵食品はキムチ。納豆菌は納豆に、酪酸菌はぬか漬けなどの漬けものに、酢酸菌はお酢(醸造酢)の中でもにごり酢に多く含まれています」(藤本さん)
これらの菌は、腸内環境の改善やそれに伴う免疫力を正常化させる働きがほかの菌よりもさらに高いという。また、体形が気になる人にとってはうれしい効果も。
「乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は、体内で脂肪の蓄積を防ぐ『短鎖脂肪酸』を産生するため、ダイエットの強い味方でもあるのです」(石原さん)
ビフィズス菌を増やすには、ヨーグルトなど、菌そのものを含む食品を摂るのはもちろん、納豆を食べるのもいい。納豆菌には、腸内でビフィズス菌を増やす働きがあるからだ。効果はまだまだある。管理栄養士の麻生れいみさんが言う。
「酢酸は短鎖脂肪酸の一種。そのため、酢酸菌には脂肪燃焼効果もあります。コレステロール値や中性脂肪の上昇を抑えて内臓脂肪を減らす効果も期待できる。また、麹菌にはメラニン色素の生成を抑えて肌荒れを改善する作用があります」
ただ漫然と発酵食品を食べるのではなく、菌の種類や働きをよく知って、有効な菌を多く含む食品を積極的に摂ることで腸内環境が整い、副次的効果が得られるのだ。