中高年が「やってはいけないダイエット」若々しく確実にやせる黄金ルール13【専門家監修】
カロリー計算や糖質制限に始まり、朝バナナダイエット、夜トマトダイエット、脂肪燃焼トレーニング…これまでに流行しては消えていったダイエット方法はどれも、リバウンドと表裏一体。それどころか「ある年代」を境に、「老化」や「病気」まで引き寄せるようになるのだ。あなたのダイエット方法はもしかすると間違っているかも。40代から「やってはいけない痩身術」を紹介する。
教えてくれた人
三田智子さん/管理栄養士で日本栄養バランスダイエット協会代表理事、石本哲郎さん/女性専門パーソナルトレーナー、中西真さん/東京大学医科学研究所所長
中高年が若い世代に人気のダイエットをすると不健康になる可能性も
「昨日は食べすぎたから、今日の夕飯はサラダだけ!」「最近体重が増えたから、しばらくお米は食べないようにしなくちゃ」
若い頃なら、数日がまんすればすぐに体重を減らすことができた。だが、年を重ねるほどやせにくくなり、「断食」でも「糖質制限」でも太刀打ちできなくなっているうえ、少し気を抜くとあっという間にリバウンドしてしまう。
それはすべて、あなたのダイエット方法が年齢に合っていないからかもしれない。
管理栄養士で日本栄養バランスダイエット協会代表理事の三田智子さんが言う。
「年を重ねたかたには、昔やっていたダイエット方法や、いまSNSなどで若い世代に流行している方法はおすすめしません。多くが『がまん』を強いるものなので、仮にやせることができたとしても、その体重をキープすることはほぼ不可能で、必ずリバウンドがセット。たとえ体重が落ちたとしても老け込んでしまう場合もあります」
若い頃の“成功体験”を頼りにやせようとすると、効果が得られないばかりか、あなたの健康が脅かされることさえあるのだ。
「食べないダイエット」は老化も肥満も加速させる
中高年にとって、数あるダイエット方法の中でももっとも避けるべきなのは「ファスティング(断食)」だ。
人間の体は食べたものを消化することで熱をつくり、体温を維持している。そのため、断食は体温の低下につながる。女性専門パーソナルトレーナーの石本哲郎さんは、体温が下がるとさらにやせにくくなると話す。
「体温は、食べたものをエネルギーに変える『代謝』と密接に結びついており、体温が0.5℃上がるだけで、代謝は7%も上がるとされています。翻っていえば、体温が下がると代謝は落ち、やせにくい体になります」
断食で体が「飢餓状態」に陥ると、動いて熱を生み出す「筋肉」が減る。
たとえ体重を減らしてスリムになれても、筋肉が落ちてしまっては本末転倒。ただでさえ中高年以上は骨粗しょう症やサルコペニアなどになりやすいうえ、極端なダイエットで筋力が落ちれば体を支えられなくなって猫背になり、後ろ姿まで老けていくのだ。
「エネルギーや筋肉量が低下しても、回復力の高い若者なら、ダメージは大きくありません。しかし、中高年以降が“食べないダイエット”をすると、不調が表面化しやすくなる。免疫力が低下してかぜをひきやすくなるほか、疲れやすくなって活動量が減ると、さらに筋肉量が落ちる悪循環に陥ります」(石本さん)
断食だけでなく、糖質制限にも同様のリスクがある。
東京大学医科学研究所所長の中西真さんが指摘する。
「人の体を動かすいちばんのエネルギーは糖です。通常、エネルギーは肝臓に蓄えられている『グリコーゲン』を分解してつくられますが、糖が不足すると脳が飢餓状態だと判断し、皮下脂肪や内臓脂肪だけでなく、最終的には筋肉までも分解してエネルギーに変えてしまう。
また、食事全体を減らすとたんぱく質が不足しやすくなることも問題です。たんぱく質は筋肉だけでなく血管のもとにもなるので、不足すれば血管がもろくなり、脳出血などのリスクが上がります」
糖質は筋肉だけでなく、脳にとっても欠かせないエネルギー源。炭水化物抜きダイエットをすると“生体のエネルギー通貨”とも呼ばれる「アデノシン三リン酸(ATP)」という物質がつくられにくくなる。
「ATPは全身の細胞でつくられる物質で、生命活動のために必要なエネルギーを全身に貯蔵・供給するために必要です。脳でATPを合成できなくなると、脳の神経細胞の機能が低下する可能性がある。脳でATPをつくるには糖質が不可欠なので、低栄養の高齢者は認知症リスクが高いといわれるのはこのためかもしれません」(中西さん)
糖質制限だけでなく、脂質制限にも危険がある。特に中高年女性は、美しく健康的にやせたいなら、脂質を断つのは御法度だ。
「脂質は女性ホルモンの重要な材料です。特に40代以降は女性ホルモンが減少し、更年期障害や骨粗しょう症、高血圧などのリスクが上がる。そのため、中高年以降は脂質を減らしすぎてはいけません。ホルモンバランスがさらに乱れるほか、肌や髪が乾燥したり、爪がもろくなったり、便秘になったりと、さまざまな不調を招きます」
好きなものを食べないとやせられない!
糖質制限や脂質制限に限らず「ダイエット=食べたいものをがまんすること」というのは、大きな間違いだ。
「“ダイエットにいいから”と、好きでもないのにオートミールや玄米を食べる必要はありません。これまで私が指導してきた中で20~30kgの減量に成功したかたがたは皆、ダイエット中も白米や普通の食パンを食べていました。“何を食べたいか”を自分で考えて、“おいしい” “いい香り”などと感じながら食べることで脳が刺激され、エネルギーの消費効率が上がるのです」(三田さん・以下同)
お菓子やお酒も控えるに越したことはないが、急に「ゼロ」にするのはリバウンドのリスクがある。
「1日150~200kcalくらいまでにとどめれば問題ありません。正しい栄養バランスの食生活なら、2~4週間ほどで自然と欲しくなくなる人がほとんどです」
がまんばかりしていると、食べられないことでストレスがたまっていく。ストレスを感じたときに出る「コルチゾール」というホルモンには、脂肪をため込む働きがあるほか、老化も促進させる。
さらに、あなたを老けさせるのは、食事制限だけではない。石本さんは“キツすぎる運動”にも警鐘を鳴らす。
「特に、ジョギングなどの有酸素運動のやりすぎは要注意。吸い込んだ酸素を使ってエネルギーをつくる有酸素運動は、その“副産物”として活性酸素も生み出します。これには、体内のたんぱく質やDNAを攻撃して老化をすすめる作用があることがわかっています」(石本さん・以下同)
一方、軽い筋トレなら、若さを保ってやせるのに役立つ。
「40代以降の女性におすすめなのはスクワットです。下半身には大きい筋肉が集まっているので、少し続けるだけでも筋肉量が増え、代謝も上がります。適度な筋トレは成長ホルモンの分泌を促し、アンチエイジングにも役立ちます。両脚を肩幅よりさらに大きく開いて行うワイドスクワットなら、おしりと内ももを集中的に鍛えることができ、ヒップアップや太ももやせにも効果的です。10回を3セット、週に3日ほど行うのがいいでしょう」
そもそも、運動嫌いの人がダイエット目的で始めたところで、少し体重が落ちたらやめてしまうことがほとんどだ。
「“買い物に行くときに荷物を手で持って早歩きする”“できるだけ階段を使う”程度でも充分。筋肉だけでなく骨への刺激にもなり、骨粗しょう症の予防につながります」