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85才の現役デザイナー&パズル作家・馬場雄二さんに学ぶ「ボケない柔らか頭」の作り方

 フジテレビの「目玉マーク計画」の監修や奇抜な形状の消しゴム「ミリケシ」など、特徴あるデザインを発表してきたデザイナー・馬場雄二さん(85才)によるパズルが、「若さを保つ脳トレに役立つ」と評判だ。そこで馬場さんに若さと柔らか頭を保つ馬場流・発想のコツを伺った。

85才の現役デザイナー&パズル作家・馬場雄二さん

「ようこそ、いらっしゃいました!」  

 東京・港区のマンション最上階のオフィスで出迎えてくれた馬場雄二さんは、背筋がピンと伸び、その声にも張りがある。「火の用心」ならぬ「胃の用心」という惹句がプリントされたシャツはユーモアたっぷりだ。  

 窓辺に置かれた東京タワーの模型の向こうに目をやると、実物の東京タワーが力強くそびえ立っている。

「東京タワーは昭和33(1958)年に建てられましたが、あの頃ぼくはその近くにあった大手電機メーカーの宣伝部にインターンで通っていて、タワーが組み上がっていく様をリアルタイムで見てきました。まさに、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の世界です。 自分が社会人として成長していくのとタワーが出来上がっていくのが重なったからか、東京タワーが大好きで、間近で見ることができるのを励みにして、この界隈でずっと仕事をしてきました」  

 そう話す馬場さんの本業はビジュアルデザイナーで、フジサンケイグループの「目玉マーク」を中心としたデザイン計画の監修を担った(マーク制作はイラストレーターの吉田カツさんを選定。馬場さんは社名ロゴと各種デザインの総合展開等を担当)。また、長野五輪ではデザイン検討委員長を務めている。  

 そんな馬場さんのもう1つの顔が「パズル作家」だ。その作品は柔軟な発想と豊かなデザイン性が特徴で、どれも「解くと頭が柔らかくなる。脳トレになる」と評判だ。

原点は「少年野球」と「漢字の授業」

 東京藝術大学出身の馬場さんの卒業テーマは「漢字の視覚化」。その頃から「文字やデザインを遊びの視点で創作・研究する」ことに取り組んできた。

「漢字の視覚化とは、問題を常に見えるようにすること。紙と筆記具だけで遊べる漢字の魅力をより楽しく伝え、漢字を使った脳の活性化を世の中に広げたいと考えていました」(馬場さん・以下同)

 その原点は、少年時代の野球と漢字の授業にあるという。

「ぼくは子供の頃から野球好きでしたが、当時は野球の道具が簡単に手に入る時代ではなく、グローブは手作り。ボールは真ん中に丸い石を入れて、布でぐるぐる巻きにしてから縫うのですが、石が中心からずれると、投げたときに変な回転をしたり、ゆらゆら揺れたりして予想外の動きをする。道具としては失敗作ですが、『これは面白い』と思いました。以来、デザインというものに興味を持つようになったのです」

デザインの道へ進んだ理由

「『木へんははねちゃいけない』『手へんははねなきゃダメ』など、漢字の授業は記憶の強制ばかりで面白くない。それで、先生の話は聞かずに漢字をじっと眺めてばかりいたんです。よく見ると、漢字ってデザイン性があって面白いんですよね。ぼくが漢字に興味を持ち、その後、大好きになったのも、退屈な授業のお陰です(笑い)」

 こうして生涯取り組むテーマへの入り口を見つけた馬場さんは、高校で美術部に入部し、デザインの道へと進んでいく。

「かつては自分を過信して、『プロ野球選手になろう』などと考えていました。でも当時、甲子園出場を果たし、文武両道だった上田松尾高校(現・上田高校)の練習風景を見ただけで『これは無理』とあきらめ、早々に美術部に変更したんです」

 いま思えば、この決断の早さも人生の分かれ道だった。

38才で『漢字博士』がミリオンセラー

 大学院修了後は、ビジュアルデザイナーとしてCI(※)やグラフィック、ロゴ、ゲームなどを手がけるかたわら、デザインパズルなどの書籍・玩具を次々発表。展覧会などでは、漢字を視覚的に遊び心で表現した『三次元遊字』のようなユニーク作品も精力的に発表している。

★漢字にアレンジを加えて別の読み方に導く「三次元遊字」。

 それぞれの読み方は右上から時計回りに、「風の便り」「見ざる聞かざる言わざる」「石頭」「壁に耳あり」となる。

 さらに、「火の用心」をもじった「胃の用心」や「毛の用心」をはじめ、「打倒嘘人」「亭主淡白」「老化減少」など、ある発想から次々とアイディアを展開していくデザイン手法も話題を集めた。

 市販されたゲームでは、漢字の“へん”と“つくり”を組み合わせて遊ぶ『漢字博士』がミリオンセラーとなり、おもちゃ大賞を受賞。これが38才のときだ。

 43才で発表した『ぬり字・漢字の宝島』は小学国語の教科書にも使用され、その25年後の2006年には、Yahoo!ブックランキング(歴史・心理・教育部門)で全国1位を獲得した。

 近年では、2010年にコクヨと共同で開発した消しゴム『ミリケシ』でグッドデザイン賞を受賞し、82才となった2020年には『マナー豆・漢字』を発売するなど、創作意欲は衰えていない。

組み合わせや二刀流を考えると発想が広がる

「『どうすれば、次々といろいろな発想が生まれてくるんですか?』とよく聞かれますが、ぼくは面白いと思うものを見つけたりアレンジしているだけなんです」

 9マスに画数の異なった漢字を配置して熟語を見つけ出す『漢字のナンプレ』というパズル本をはじめ、漢字と数字、地図やジグソーパズル、カルタなどとの組み合わせで新しい面白いものができないか、と馬場さんは常日頃から考えているという。

「面白いパズルで喜んでもらうのが何よりの楽しみであり、創作は脳を活性化させ、若さを保ってくれる最良のクスリです。『こうしたら面白くなるだろう』という野次馬精神で、ワクワクしながら楽しんで仕事することが大切です。『自分が面白くないと思うものをほかの人が面白いと思うはずがない』というのが、ぼくのデザイン制作のモットー。その上で、独りよがりにならずほかの人にも面白いと感じていただけることを心がける。流行に惑わされないことも大事です」

 柔軟な発想を養うには、上にある問2のように、1つの知識や考え方に固執せず、発想の幅を広げて、別の方法がないか、柔軟に考えてみることがおすすめだという。

「二刀流問題は知識以上に知恵と面白さがゲットでき、漢字力・語彙力アップの一石三鳥の効果が期待できますよ」

 さらに馬場さんの発想の斬新さを物語るのが、ことわざや漢字が学べる珍しい丸形の『カルタ丸』というゲームだ。

「四角いカードは角が傷むという声があり、それならと角のない丸形にして、カルタ丸と名付けました(笑い)。ゲームではカルタやリバーシ(オセロ)のように、年齢を問わず長く愛され、楽しまれる作品を残していきたいですね」

多くの人々の人生を豊かにすることを願い、半世紀以上続けてきた馬場さんの創作活動は、いまなお続行中だ。

(※)企業などのイメージ構築のこと

馬場さんが考案したゲームたち

『漢字博士』

誰でも遊べて、頭もよくなるカードゲーム

「偏(へん)」と「旁(つくり)」のカードを組み合わせて1つの漢字を作るゲーム『漢字博士』が馬場さんのゲームデビュー作。「イ」+「言」で「信」、「言」+「者」で「諸」、「者」+「阝」で「都」…というように漢字作りを楽しめる。47年前(1976年)の作品で、累計150万部以上のロングセラー。遊びながら漢字を覚えられるため、小学校低学年の子供へのプレゼントとして重宝されたり、外国人による需要も相当数ある人気作だ。

 『マナー豆 おはし de おべんきょう(漢字)』

指先を使うから脳が活性化する。 熟語を作るから頭が柔らかくなる。

『マナー豆 おはし de おべんきょう(漢字)』は、「豆つかみ」「仕分け」「漢字熟語並べ」などの遊び方がある。豆の形は4種類あり、片面に漢字が記されている。「お箸キャップ」を箸に付けると滑らずに豆をしっかりつかめるが、キャップを外すと難易度がアップする。箸を使い始めた幼児から手先を使って脳を活性化させたい高齢者まで幅広い層の人が楽しめるゲームだ。

馬場さんが考案した奇妙な「漢字パズル」に挑戦!

 「解くと頭が柔らかくなる。脳トレになる」と評判の馬場さんが考案したパズルを早速解いてみよう。

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