薬局の待ち時間で「ちょこトレ」!筋肉を鍛えるトレーニング5つ
日本人の「平均寿命」は、厚生労働省が発表している簡易生命表によると、2017年には男性81.09歳、女性は87.26歳と過去最高となった。一方で、介護の必要がなく、自立した生活を送ることのできる「健康寿命」は、男性72.14歳、女性74.79歳、平均寿命との差は男性が約8年、女性では約12年という結果である(健康寿命は2016年調査結果)。
高齢期の自立には、筋力維持が欠かせない
約10年もの間、介護を受け続けるというのは、本人にとっても家族にとってもつらいもの。寝たきりや要介護の状態にならず、健康で自立した生活を送るためには、日常生活のなかで、健康を維持する工夫が絶対的に必要となる。とくに、筋力に関しては、何もしなければ加齢とともに衰え、基本的な動作さえ難しくなってしまう。
骨や関節、筋肉などの機能の衰えが原因で、「立つ」「歩く」などの、日常生活に支障をきたす状態は「ロコモティブシンドローム(通称:ロコモ)」と呼ばれ、厚生労働省もロコモ予防のために、高齢になっても筋力を鍛えるトレーニングの必要性を訴えている。
とはいえ、自宅でトレーニングするのは、面倒くさい、忘れてしまうといった理由から、継続するのはなかなか難しい。
約3分のトレーニングで筋肉をほぐし鍛える
そんな中、全国47都道府県で調剤薬局を展開する日本調剤株式会社(以下、日本調剤)が、「3分でできるちょこっとロコモ予防トレーニング『ちょこトレ』」を自社開発し、2018年5月から日本調剤の全598店舗(2018年11月現在)の店頭モニターで放映を開始した。当初は九州エリアの店頭のみで放映していたが、薬局の利用者からの評判が高く、全国展開することとなった。
トレーニングの監修は、スポーツ教育に注力していることで知られる九州共立大学スポーツ学部(福岡県北九州市)の講師であり、健康運動指導士の有資格者である藤﨑道子先生。
トレーニングの内容は、ロコモ予防の観点から、「立つ」「歩く」といった移動機能低下を防止するため、骨盤、股関節、足首、太もも、背骨の5か所の筋肉をほぐし、鍛えるものとなっている。1つの運動につき約3分という、非常に手軽で簡単なプログラム。薬局での待ち時間に”ちょこっとトレーニングする”には最適だ。
薬局の役割が進化。食事、運動、薬、3つの側面から健康をサポート
薬局がトレーニング開発に踏み切ったきっかけについて、日本調剤の管理栄養士であり健康運動指導士の有資格者でもある皆川氏は語る。
「これまで、日本調剤では、厚生労働省の掲げる『1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にくすり』という考えを実行するために、2017年度から管理栄養士を採用し、食事に関しての提案も行ってきましたが、運動については積極的なアプローチが不足していました。
健康寿命の延伸のために筋力アップは必須です。自立した生活を送ることができる期間を長くするためには、筋肉を鍛え、自分の体を自分で支えられるようにしなければなりません。
調剤薬局の立場でできることを考えた結果、薬の調剤を待つ時間を有効活用してもらえる短時間のトレーニングに行きつきました。各店頭にはもともとモニターを設置してありましたから、トレーニング動画さえできればすぐにトレーニングの啓発が可能です。そこで、大学の協力を得て、『ちょこトレ』の開発に取り組むことになりました。」
実際、トレーニングの映像を見てみると、薬を待ちながら、椅子に座ったまま「さりげなく」できる運動ばかり。高齢者でも、運動が苦手な人でも無理なく行えるよう、関節や筋肉を柔らかくするための動きが中心になっている。
また、店舗での放映にとどまらず、地域包括支援センターや薬局内などでロコモ予防のイベントも実施し、地域住民のロコモ予防のための活動を広めている。
皆川氏によると、この「ちょこトレ」の取り組みは、九州共立大学の学生にトレーナーとして参加してもらうなど産学連携プログラムとしての拡大を目指しているとのこと。
5種類の運動「ちょこトレ」紹介
●ちょこトレ【1】骨盤をゆらそう(約2分45秒)
椅子に座った状態で、ゆりかごのようにおしりを左右に動かし、腰回りの筋肉をほぐす運動。
●ちょこトレ【2】背骨を伸ばそう(約2分30秒)椅子に座った状態で両手を太ももの横に垂らし、両肩の力を抜きながら上下左右に動かしたり、指先を肩に触れてひじの先を内側に大きく回したりする運動。姿勢を正し、猫背や肩こりの改善につながる。 ●ちょこトレ【3】 股関節をほぐそう(約2分45秒)
椅子に座った状態で、両足を肩幅より広めに開いて閉じたり、椅子の後ろに立って片手を椅子の背もたれに置き、背もたれと反対側の足をひざが90度になるように上げ、後ろに引いて膝を伸ばしたりする運動。股関節をほぐすことで、転倒予防につながる。
●ちょこ【4】太ももを鍛えよう(約2分20秒)
椅子に座った状態で両手を太ももの上に置き、上半身を前に倒しておしりを少し浮かせ5秒間維持する運動。太ももの前を鍛えることで、ひざ痛の予防につながる。
●ちょこトレ【5】 足首を鍛えよう(約2分30秒)
椅子に座った状態で両手を太ももの上に置き、上半身を前に倒しておしりを少し浮かせ5秒間維持する運動。太ももの前を鍛えることで、ひざ痛の予防につながる。
※「ちょこトレ」は日本調剤株式会社の登録商標です。
画像提供/日本調剤株式会社 取材・文/鹿住真弓