「どうにも止まらないアレ」がピタリと止まるワザ10 医師が回答!
しゃっくりにおならetc.…「自分じゃ手に負えないからこそ、なんとかしたい」に医師がズバリ回答!
静まり返ったエレベーターの中で鳴るお腹の音、会議中の眠気やあくび、就寝中のこむらがえりなど、予想外のタイミングで出る生理現象をピタッと止める裏ワザを医師に聞きました。すぐに試したくなること間違いなし!
しゃっくり
●原因は横隔膜のけいれん 漢方や民間療法も効果的
しゃっくりは、胸部と腹部の間にある筋肉・横隔膜がけいれんし、それにより声帯が素早く閉じることで起こる。
宇部内科小児科医院(東京・大田区)院長で東洋医学にも詳しい團茂樹(だんしげき)さんによると、横隔膜がけいれんするのは、早食いや食べすぎのほか、冷たい・熱い・辛い食べ物を摂り、胃に刺激を与えることが主な原因だという。
「横隔膜の下には胃が位置しているので、胃に刺激が与えられると、横隔膜周辺にも血流異常が起こり、それがけいれんを引き起こす原因になるのです。
このほかにも、たばこや酒、ストレスが関係する場合もあると考えられます」(團さん、「」内以下同)
対処法としては、漢方薬の芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)でけいれんを抑えるのがおすすめ。興奮を抑える抑肝散(よくかんさん)も効果的だといい、西洋医学的には弱いてんかん薬を使う手もある。
「また、横隔膜へは、脳神経から迷走神経が走っているため、耳の穴を圧迫したり、舌を引っ張ると、神経反射が起きて横隔膜が刺激され、けいれんが抑えられることがあります。その意味では、耳の穴に指を差し込んで30秒おいたり、舌をハンカチなどで挟んで引っ張るなどの民間療法も、試してみる価値はあります」
ただし、しゃっくりが3~4日続く場合は、がんや肝疾患、腸閉塞や胃腸炎など、深刻な病気の可能性もある。その場合は、病院で診察を。
たかがしゃっくりだと思って甘く見てはいけないこともあるので注意しよう。
ゲップ
●漢方薬、歯科治療のほか、あごを引いて鼻から出す応急処置も
ゲップは胃の中にたまった空気が口から排出される現象で、欧米では、おなら同様に嫌がられる。そんなゲップの原因と対策を、前出の團さんは、東洋医学の見地からこう語る。
「ゲップといっても、その原因は、気が上がるタイプや逆流性食道炎のように酸が上がって胸焼けするタイプなど、いくつか種類があります。興奮や緊張で気が上がるのを中医学では“気逆(きぎゃく)”といい、四逆散(しぎゃくさん)や六君子湯(りつくんしとう)などの漢方薬が効果的。酸が上がる場合はPPI剤などの服用がいいでしょう」(團さん)
一方、空気をのみ込みすぎることでお腹が張り、おならやゲップが頻繁に出る“呑気症(どんきしょう)”の場合は、対処が異なると、ひぐち歯科クリニック(大阪・茨木市)院長の樋口均也さんは言う。
「吸気や呼気は、胃へ入りません。しかし、大食いや早食いをしたり、炭酸飲料を飲みすぎると、胃に空気がたまり、さまざまな不調をもたらします。これが呑気症です」(樋口さん、「」内以下同)
呑気症が原因のゲップの場合、食事をゆっくり食べる、炭酸飲料を控える、ガスが上がってきたら、あごを引いて下を向き、口を閉じたまま鼻から出すなどの処置も効果的だという。
しかし、呑気症の中でも癖やストレスが原因の“かみしめ呑気症候群”には、歯科治療が必要になる。
「“かみしめ呑気症候群”とは、歯を食いしばった時に、唾液と一緒に空気ものみ込んでしまい、胃の中に空気がたまってしまう症状。これを防ぐためには、スプリント(保険適用で約6000円)という器具をつけ、かみしめない癖をつける必要があります」
お腹の音
●あめなどの甘いものを摂り血糖値を上げるのが効果的
静かな空間で突然鳴る、お腹の音。女性にとって恥ずかしい“コレ”、静かにさせる方法があると、かなまち慈優クリニック(東京・葛飾区)院長の高山哲朗さんが教えてくれた。
「お腹の音は医学的には“腹鳴”といいます。胃の中にたまった空気が、空腹時のぜん動運動で収縮すると音が鳴ります」(高山さん、「」内以下同)
胃腸のぜん動運動は、常に自律的に行われている。ただ、空腹になると消化管ホルモンが分泌され、脳と胃腸に作用するため、積極的にぜん動運動が起きるようになるのだ。
「腸でも胃と同様にぜん動運動時に音が鳴っているんですが、聴診器でしか聞こえないくらい小さい音なので、普通に生活していて聞こえることはまずありません」
逆に、聴診器をあてても腸で音が聞こえなかったり、キンキンという金属音のような音がする時は、腸閉塞のサインだという。
「胃の腹鳴に関しては、腸のように危険な病気が潜んでいることはないので、気にしなければいいのですが、どうしても気になる場合は、あめをなめる、チョコを食べるなど、甘いものを摂って血糖値を上げるのがおすすめです。血糖値が上がると胃のぜん動運動が一時的に止まるので、お腹の音も収まるのです。ただし、甘いものといってもガムをかむのはNG。胃の中に空気がより入りやすくなるので逆効果です」
おなら
●おならの主な原因は便秘排便しやすい姿勢で便秘解消を!
お腹が張っておならが止まらないという悩みを抱える人は少なくない。
「おならとは、腸内細菌から出る腸内ガスと、無意識にのみ込んだ空気が混じり合ったもの。それが肛門から排出される時に皮膚を振動させ、音が鳴ります」(高山さん、「」内以下同)
おならは毎日平均700ml生成され、1回に50mlほど排出される。つまり、人は毎日10回以上おならをしている計算になる。そのため、1日10回前後のおならなら多くはない。しかし、常に止まらない場合は便秘が原因のことが多い。
「おならはがまんしすぎると、腸管からガスが吸収され、血液に溶けて循環し、肺から呼気として排出されます。
そうなる以前に、がまんすればお腹が張って痛くなります。これを解消するには、“の”の字にお腹をさすったり、便秘を治すことがおすすめです」
便秘解消には、定期的にトイレに行って排便しやすい姿勢をとることが大切。一般的に、洋式トイレより和式トイレの姿勢の方が、直腸をループ状に囲んで支えている恥骨直腸筋がゆるむので、直腸が垂直に近い形になり、放屁・排便しやすくなるという。洋式トイレをよく使う場合は、足元に台を置いたり、かかとを上げた姿勢でしてみよう。
おならはがまんせず、便秘を改善して回数を減らす努力をするのがよいようだ。
あくび
●脳の酸欠を防ぐ現象。しかし、眠くないのに出る“生あくび”には注意
「あくびには、“普通のあくび”と、“生あくび”の2種類があります」とは、前出の團さん。眠い時や退屈な時に出るいわゆる“普通のあくび”は、疲れて脳が酸欠になり、働きが鈍くなると出る。あくびをすることで、たくさんの空気を吸い込めるので、新しい酸素が脳に届けられ、低下した脳の働きを活性化できる。
また、あくびの時に大きく口を開けると、あごの筋肉が伸びて脳に刺激が与えられるほか、涙と一緒に目ヤニや老廃物も流れてドライアイの予防にも効果的なことが近年わかってきた。
これに対して、“生あくび”は緊張やストレス、睡眠障害などで体や脳がかなり疲れている時に出る。場合によって脳梗塞や脳腫瘍、狭心症など、重大な疾患が隠れている可能性もあるので注意が必要だ。
この2種類のあくびの見極め方は、眠い時に出るかどうか。生あくびは、眠くないのに、何度かみ殺しても繰り返し出てきて、不快感を伴う。強制的に出てしまい、自力で止められないうえ、あくびをしても、リフレッシュ感を得られないのが特徴だ。
換気をしたり、場所を変えて気分転換をしても生あくびが止まらない、さらに、めまいや頭痛、吐き気など、ほかの症状を伴うようなら、脳神経外科などを受診した方がよい。
一方、“生あくび”と違い、“普通のあくび”はがまんすることもできるが、脳が酸欠状態なので、できれば人のいないところで大きく口を開けてしっかり体を伸ばし、あくびをした方がよい。根本的に予防するには、睡眠の改善とともに、呼吸法を見直してみるのも有効だと團さんは言う。
「あくびが多いということは酸欠気味の証拠。より体内の酸素量を増やすには、腹圧呼吸がおすすめです」(團さん)
腹圧呼吸とは、息を吐く時も吸う時もお腹をへこませないのが特徴だ。下記のイラストのような姿勢で5秒かけて息を鼻から吸い、5~7秒かけて口から細く息を吐くのを1セットに5セット繰り返して。
眠気
●眠い時はツボで解消! ただし、コントロールできない眠気は危険
講演会や会議などの最中に、急に睡魔に襲われ、気がつけば首がカクンとなってしまっていたという経験はあるだろう。
「日中、急に眠気に襲われるのは、慢性的な睡眠不足が原因。一方、睡眠時間は充分なのに日中眠気が起こるのが睡眠時無呼吸症候群(SAS)。眠気をコントロールできず、所かまわず意識を失うように眠ってしまうのは、居眠り病ともいわれるナルコレプシー、特発性過眠症などの疑いがあります」(團さん、「」内以下同)
これらはしっかり寝たところで治らないので、医師に相談をしてほしい。単なる寝不足からくる眠気の場合は、これらの病気による眠気と違い、あくびや換気などでコントロールできるほか、ちょっとした工夫で抑えられる。
一般的に、眠くなりやすいのは昼食後。食事の消化のため、血液が胃腸に集まり、脳が酸欠状態になるため。対策としては、食事量と糖質量を減らし、消化しやすいメニューを選び、食後に散歩をするとよい。ガムをかんだり、深呼吸や屈伸運動をするのも効果的だ。
また、会議中など、大きな動きができない時は、眠気覚ましのツボを押すのもおすすめ。眠気に効果的なツボは手に3か所あり、その1つが、中指の爪の根元の人さし指側にある「中衝(ちゅうしょう)」だ。2つ目は、親指と人さし指の付け根が交差するくぼみにある「合谷(ごうこく)」。そして3つ目が、手のひらのちょうど真ん中にある「労宮(ろうきゅう)」だ。
「これらのツボを押すと、脳に刺激を与えられるので、眠気を解消できます。眠さの度合いに応じて、イタ気持ちいいくらいの強さで数秒間押してみてください」
また、薬によって眠気を誘導される場合は、漢方薬で代用する手もあるという。
「花粉症を防ぐアレルギー薬は眠気を誘うものが多いのですが、漢方薬の小青竜湯や苓甘姜味辛夏仁湯なら、眠くなりにくいうえにアレルギー性鼻炎にも効果的です」
せき
●長引く場合は、熱や痰の有無と昼と夜どちらに出るかチェック
せきは、肺に入った異物を吐き出す現象。原因疾患で治療薬が変わるので(下図参照)、何が原因によるせきなのか、きちんと知る必要がある。
「医学的に“長引くせき”とは、3~8週間続くせきをいいます。自分のせきは、何が原因によるものかは、熱や痰の有無、そして、せき込むのが昼か夜かをチェックするとわかります。せきの種類によって止めない方がいいものもあります。例えば、痰が絡むせきは、排出した方がいいので、止めない方がいいでしょう」(團さん、「」内以下同)
下記のリストの中で、熱が出るのは、感染後咳嗽(がいそう)の1つである非定型肺炎やウイルス感染による風邪など。それ以外のせきでは、まず熱は出ず、喘息やせき喘息では、副交感神経が優位になる夜にせき込むことが多い。心不全でも夜にせきが出ることがあるという。たばこ病ともいわれるCOPD(閉塞性肺疾患)は、それとは逆に、日中の活動時にせきが出る。副鼻腔気管支症候群は痰が絡みやすい。
「今、各種アレルギーが原因で激増しているのが“せき喘息”。ほこりや花粉などに反応して、せきが出ます。苦しさを伴う喘息と違い、呼吸困難を伴わず、空ぜきだけが長く続きます」
せき喘息などのように、熱も痰も出ず、せきだけ長引く場合は、症状に合った薬の服用はもちろん、はちみつやしょうが入りのホットドリンクをこまめに飲むのがおすすめ。体を温め、のどを保湿してせきを和らげてくれる。
こむらがえり
●ストレッチと水分&マグネシウム補給で予防できる
寝ている時や、運動時などに突然起こる筋肉のつりが“こむらがえり”だ。出沢明PEDクリニック(東京・世田谷区)院長で整形外科医の出沢明さんによると、ふくらはぎにある下腿三頭筋と呼ばれる骨格筋には、筋肉の縮みすぎを防ぐ腱紡錘というセンサーがあり、これが誤作動を起こすとこむらがえりが起こるという。こむらがえりは、ふくらはぎでよく起こるが、骨格筋ならどの部分でも起こるので、手や足の指など、全身どこででも起きる可能性がある。
「誤作動の主な原因は、冷えや脱水。そのため、こむらがえりは、冬に起こりやすい。
ただし、夏でもクーラーなどで冷えると起こる場合が。また、寝ている間に水分が失われたり、運動時に水分補給が足りない時も起こります」(出沢さん、「」内以下同)
こむらがえりを防ぐには、寝る前にコップ1杯の水を飲むことと、筋肉の働きをよくするマグネシウムを摂るのがおすすめ。マグネシウムは、するめやわかめ、納豆、ヨーグルト、牛乳、梅干しなどに多く含まれる。
「ほかにも、ふくらはぎがつりやすい人は、左上のイラストにある“波止場のポーズ”のストレッチを、入浴後に行ってください」
ストレッチの方法は簡単。30cmほどの高さの台(階段でもOK)に片足をのせ、のせた方の足に体重をかける。この時後ろの足は床にかかとをつけておく。息を吐きながら7つ数え、太ももの裏からふくらはぎの筋肉を伸ばす。これを左右交互に、年齢の数だけ行う。それでもこむらがえりが起きた場合は、つった部分を伸ばしたり、温めるとよい。
鼻血
●キーゼルバッハ部位を10~20分押さえて止める
鼻血は、左右の鼻を分けている鼻中隔という“しきり”の粘膜から出る。中でも鼻の入り口から約1cmのところにあるキーゼルバッハ部位は、血管が表面に浮き出ていて、出血しやすい。
「鼻をほじったり、鼻毛を抜いたり、鼻を強くかんだりして鼻中隔の粘膜を傷つけると、鼻血が出ます。止め方は、小指の太さに固めた脱脂綿などを鼻に詰め、10~20分、キーゼルバッハ部位に当たる小鼻を強めに押さえます」(團さん、「」内以下同)
たいていの鼻血はこの方法で止まるが、血液がサラサラになるような薬を使っている場合は止まりにくい可能性も。もし20分以上押さえていても血が止まらなかったら、病院へ行こう。また、頭などを打ったせいで鼻血が出た場合は、自分で止血を試みず、すぐに病院へ。
「鼻血を止める際、上を向くのはNG。鼻血がのどに流れ込んでせき込んでしまう場合があるので、ややうつむいて行って」
甘いもの
●散歩や歯みがきなど“代替行動”で忘れるべし!
美容や健康によくないとわかっていても、やめられないのが甘いもの。それは、なぜか?
「甘いものを食べると気分が上がります。これは、甘いものを食べると、脳内麻薬とも呼ばれるβ-エンドルフィンという多幸感をもたらす物質と、快感をもたらすドーパミンが脳内に分泌されるからです。この快感を得ようと、さらに甘いものがほしくなり、ついには中毒状態になってしまうのです」
と言うのは、近畿大学医学部講師で脳科学の専門家、生塩研一さん。また、甘いものを食べることで血糖値が高くなると、血中にインスリンがたくさん出て糖分を取り込みすぎてしまい、逆に低血糖状態になる。すると、また糖分がほしくなるという負のループに陥るのだ。
「この状態を解消するには、3食同じ時間に食事をして、早食いはしない。近くに甘いものを置かない。そして、ストレスをためないことです」(生塩さん)
どうしても、甘いものが食べたくなったら、代替行動をとるのもおすすめ。散歩をしたり、歯みがきをすると、食欲を抑えられるという。
イラスト/尾台ゆうこ
※女性セブン2018年11月15日号