スギ花粉症の根治療法に高い 効果が望める「舌下錠剤」登場
スギ花粉症の根治療法としてアレルギーの原因(アレルゲン)を少量体内に入れ、身体を慣らすアレルゲン免疫療法が始まっている。従来は液体だったが、本年6月に錠剤の舌下免疫治療薬が保険承認された。液体治療薬は冷蔵保存が必要だが、錠剤は常温でよく、また服用対象年齢も12歳から5歳に引き下げられた。アレルゲン含有量が液体の2.5倍で、高い効果が期待されている。
5歳から適用可能な舌下錠剤
環境省によると国内でスギ花粉症が報告されたのは1960年代で、その後、患者数の増加と低年齢化が進んでいる。治療はくしゃみ、鼻水などの症状を緩和する内服薬や点鼻薬による対症療法が広く行なわれており、その根治療法の一つとして実施されているのが、アレルゲン免疫療法である。
アレルギーの原因(アレルゲン)のスギ花粉の抽出成分を体内に入れて身体を慣らし、花粉を防御する免疫を獲得していく治療だ。皮下注射に加え、2014年に自宅で行なう液体の舌下免疫療法薬が発売され、今年6月には錠剤の治療薬「シダキュアスギ花粉舌下錠」も保険承認された。
日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の後藤穣准教授に話を聞いた。
「舌下免疫療法は365日、毎日家で行ない、3〜5年続ける必要があります。これによってアレルゲンに身体が徐々に慣れ、症状が緩和されます。従来の舌下液体薬は冷蔵庫での保管が必須でしたが、錠剤は常温でよく、治療対象も液体が12歳以上に対し、錠剤は原則5歳以上となりました。しかも、アレルゲンの含有量が違います。製造方法が異なるため、液体が1ccあたり2000JAUに対し、錠剤は1錠5000JAUとなり、2.5倍になっています」
5〜64歳を対象に実施された治験では、実薬とプラセボ(偽薬)の2群に分け、最長43週投与して花粉飛散ピーク時と、その前後1週間の総合鼻症状薬物スコアを比較した。これは総合鼻症状スコア(くしゃみ、鼻汁、鼻閉)を重症度に応じてスコア化した合計と薬物スコア(症状緩和のために服用した抗ヒスタミン剤などを使用量に応じ、スコア化した合計点数)で、症状の改善を計測する指標だ(低いほどよい)。結果はプラセボ群で平均6.98、実薬群は4.74と有意に差が出た。
6月開始が最適だが、秋からでも間に合う
使用は錠剤を舌下に置く。錠剤が唾液を含み、ラムネ菓子のように溶けるので、そのまま1分間保持し、飲み込む。最初の1週間は低い濃度の2000JAUの錠剤を使用し、2週間目から維持量である5000JAUの使用を開始する。舌下は体中で一番アレルギー反応が起こりにくく、重篤な副作用が出にくい。
「治療開始は花粉の飛散が終わる6月頃が最適ですが、秋頃の開始でも、なんとか間に合います。花粉が飛び始める1〜5月は治療開始ができません。また悪性腫瘍やリウマチ、重症の喘息患者、妊婦・授乳期の方も、この治療は受けられません」(後藤准教授)
液体の治療薬を使っている患者の錠剤への切り替えは舌下錠の用法通り、低い濃度の錠剤を1週間使用し、その後、濃度の高い錠剤に移行する。子供の場合は錠剤が舌下で、1分間保持されているかを親が確認することが大切だ。
錠剤は新薬なので、2週間分しか処方されず、通院のわずらわしさがある。毎日欠かさずに治療する必要があるため、開始にあたり継続の覚悟が求められる。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト10月26日号