介護タクシーとは「料金は?家族も乗れる?介護保険は使える?」|介護の疑問を専門家に直撃!
「介護タクシーって料金や仕組みがわかりにくい」。そんな疑問を感じた介護ポストセブンの編集長が、介護タクシーの専門家に直撃! 介護保険は使えるの? 介護タクシーの呼び名や定義、使い方、料金について、対談形式でレポート。「そうだったんだ!」と疑問が晴れる介護のヒントが満載です。
【目次】
「介護タクシーとは?」介護の疑問を解決!編集長対談
介護ポストセブン編集長の関和子(58才)は、現在、要介護3の母を介護中。実際に介護で直面したさまざまな問題や疑問を専門家に直撃、教えてもらう「介護中の編集長が聞く」シリーズ、第1回のテーマは「介護タクシー」だ。
対談のゲストにお迎えしたのは、介護タクシーに関する情報サイト『介護タクシー案内所』を運営している、タクシー業界に詳しい滝口淳さんだ。介護タクシーの普及や啓蒙のため、全国を飛び回る熱意溢れる滝口さんに、さっそく介護タクシーの基本を教えてもらった。
関和子(以下、関):2か月前に母が自宅で転んで大腿骨を折りまして、緊急搬送されました。その後、急性期病院からリハビリ病院への転院する際、初めて介護タクシーを利用したんです。病院の勧めだったので、よくわからぬまま支払いもして…。
でも使った後に、“もしかして介護保険の対象なの?”とか“そもそも介護タクシーって何なんだろう?”とか疑問がわいていて、いろいろと情報を検索したんですが、結局わからないことが多いままなんです。
介護タクシーと福祉タクシーは違う?
滝口淳さん(以下、滝口):まず呼び方がわかりにくいですよね(笑い)。介護タクシー、ケアタクシー、福祉タクシー、介護保険タクシーとか、混乱しますよね。
介護タクシーは、法律で定められた正式名称ではなく、事業者さんが自由に名乗っているもので、「介護タクシー」が一般的に一番多く使われています。
関:そうなんですね!ぜんぶ同じようなものなのですね。
介護タクシーはどんな車?定義は?
関:介護タクシーには法律で決められた定義があるのでしょうか?
滝口:介護タクシーとは、一般的なタクシーと同じ緑ナンバーの車、『一般乗用旅客自動車運送事業』のひとつで、『福祉輸送事業限定』という区分がつきます。開業する場合は、国土交通省の事業許可が必要です。
ちなみに、一部のNPOなど非営利団体も「介護タクシー」という名称で白ナンバーの乗用車を使った移動サービスを実施しています。このあたりがちょっとわかりにくいんですよね。
関:母のときは、スロープが付いた福祉車両でした。車いすのまま乗れるのは利用者の負担も減って便利ですよね。車種に決まりはあるのでしょうか?
滝口:車種は、車いすのまま乗れるリフトやスロープ付きの福祉車両を使っている場合が多いんですが、セダンなどでも営業はできます。
ドライバーは介護の有資格者がほとんど
関:介護タクシーのドライバーさんは、介護関連の資格を持っているのでしょうか?母を乗せてくださった方は、病院の入り口まで介助をしてくださいました。
滝口:だいたいみなさん介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)以上の資格を持っていらっしゃいますね。
ただ、国交省が定める定義によると、福祉車両の場合は初任者研修以上の資格があるなどの要件を満たすよう「努めなければならない」とされていて義務ではありません。ただし、セダンなど一般的な車両の場合は、資格が必要となっています。
介護タクシーを利用できる条件は?
関:利用者する人には、条件がありますか?要介護認定を受けている必要があるのでしょうか。
滝口:いえ、要介護認定を受けていない人も利用できるんですよ。
福祉輸送の対象になる人は、要支援から要介護の方や障がいのある方で、そのほかに単独で公共交通機関が利用できない方も対象になります。一般の方が乗れないとよく勘違いされますが、旅行先でケガをして歩行困難になった方や、体調が優れず一般のタクシーを使用することが難しい妊婦さんですとか、さまざまな方が対象になります。
実際に利用できるかは個々の事業者さんの判断になります。もちろん家族や友人などケアする方も同乗できます。
関:そうなんですね。私は自分の車を運転して別々に移動したのですが、付き添う場合でも同乗してはいけないと勘違いしていました。
介護タクシーの利用料金は?
関:料金制度について、教えてください。母のときは、急性期病院からリハビリ病院まで移動するとき、病院の医療ソーシャルワーカーさんが『介護タクシーを呼びますね』って手配してくれたのですが、20分くらいの道を走って7000円でした。
手書きの領収書を渡されたんですが、これが安いのか高いのかもわからなくて…。
滝口:事前に病院からは何の説明もなかったんですか?
関:ええ、転院でしたので、急性期病院の退院手続きや支払い、リハビリ病院の入院手続きとバタバタでしたので、私も何も確認せずに呼んでもらった介護タクシーを利用、支払いをしました。少し落ちついてから、料金がどういう仕組みなんだろうと疑問がわいてきたのです。
滝口:介護タクシーは利用する前に見積もりをもらっておくと安心です。料金設定は事業者によりますが、運賃のほかに、介助料や車いすなどの器材使用料などが別途かかるのが一般的です。
運賃はだいたい一般的なタクシーと同じですが、基本の介助料は1000円くらいが相場です。メーター料金ではなく、時間制の料金設定をしている事業者さんもいらっしゃいます。
関:落ちついて病院のソーシャルワーカーさんに料金体系を聞いたり、ドライバーさんにこの領収書の内訳はなんですか?と質問したりできたらよかったんですね。
滝口:そうですね。介護タクシーの事業者さんによっては、明細が書かれた領収書を印字できるタクシーメーターを車に設置しています。まず、予約するときは事前にだいたいの見積もりを確認しておくといいですね。
介護タクシーでは介護保険は使えるの?
関:2度目に使ったときは、慢性疾患の定期診察を受けるために、リハビリ病院からほかの病院への往復で1万円でした。このとき、少し高いなと思いまして、介護保険で後から申請すれば戻ってくればいいなと、調べてみたのですが…。
滝口:関さんが乗った一般的な介護タクシーは、介護保険は使えないんですよ。
関:そうなんですね! 介護保険タクシーって書いてある情報もあったので戸惑いますね。
滝口:「介護タクシーは、訪問介護サービスのひとつ」と書かれた記事がたくさんあって、それは間違いではないんです。介護保険を使える場合もあるというのが正しいですね。
介護タクシーは、一般的なタクシーと同じように利用する「自費の介護保険外サービス」と、「介護保険サービス」で使える2つの利用法があります。
身体介護や生活援助など、介護保険指定事業所が行う訪問介護のひとつに、「通院等乗降介助」というサービスがあります。ケアマネがケアプランの中に通院等乗降介助を組み込んだ場合、介護タクシーを介護保険で使えるようになります。
また、令和3年度からは入退院のときにも通院等乗降介助が適用されるようになりました。
関:なるほど。では、退院する日が決まったらケアマネさんに頼んでプランに組み込んでもらえれば、介護保険で介護タクシーが使えるようになるんですね。
滝口:そうなんですが、実際に通院等乗降介助について調べてみると、令和4年8月現在で東京都の年間収入100万円を超える 訪問介護事業所は3151か所ありますが、そのうち通院等乗降介助を取り扱っている事業所は11か所しかありませんでした。(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」より)
関:えー、そうなんですね!意外と少ない。ケアプランを変更するなど手間をかけるなら、介護タクシー事業者に連絡して自分で呼んだほうがてっとり早いと考える人が多いのかもしれませんね。
滝口:介護タクシーは、基本介助料がだいたい1000円前後ですが、介護保険の通院等乗降介助を利用すると利用者負担が1割の場合は100円くらいでしょうか。
関:メーター料金にプラス1000円で介助をしてもらえると考えれば、もっと柔軟に介護タクシーを活用してもいいかもしれませんね。例えば、親の通院の際に、病院までは、介護タクシーで連れてきてもらって、私は病院に直行して待ち合わせするとか。
滝口:送迎のほかにも家事代行のようなサービスもやっている事業者さんもいます。また、大手タクシー会社さんも買い物の付き添いなど高齢者向けサービスを開始しています。
車いすのまま乗れるUD(ユニバーサルデザイン)タクシーも増え、乗務員が介護の研修を受けているというケースも増えてきています。介護タクシーの事業者も年々増えているので、いろいろな選択肢が広がっていると思いますよ。
関:介護タクシーは、利用者に制限があるのかとか、介護保険サービスや要介護認定など制度の手続きが必要なのかとか、難しく捉えてしまっている人が多いのかもしれない…。自費の介護サービスと考えて、もっと自由に使えばいいんですね。
ドライバーさんが介護を学んでいらっしゃる場合が多いということですから、車いすの移乗も安心ですしね。安心、安全に移動できる手段として、介護タクシーを積極的に活用することで、介護を、少しでもラクにしていければいいと感じました。ありがとうございました!
対談した人
滝口淳さん
株式会社Plan to Create代表取締役。タクシー広告専門の広告代理店を経て、起業。タクシーを使った広告やプロモーションをはじめ、ウェブサイト「介護タクシー案内所」を運営し、介護タクシーの情報を伝える活動を続けている。介護タクシーの啓蒙と利用促進、業界全体の発展のため、全国を飛び回る。https://caretaxi-net.com/