「母とふたり暮らしになりそうで苦しい…」毒蝮三太夫がお悩みに回答!|マムちゃんの毒入り相談室第34回
親との関係は、つくづく難しい。「大事にしたい」と思うからこそ、重荷に感じたり縛り付けられている気持ちになったりもする。相談者は25歳の女性。兄がいるが、母親とは関係がよくない。兄が結婚したら自分が母親を引き取ることになるのかと思うと「苦しい」と言う。袋小路で迷っている相談者に、マムシさんが出口を指し示す。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:「母親とふたり暮らしをすることになるのは嫌」
人間は生きている限り、悩みの種は尽きない。大きな悩みもあれば小さな悩みもあるけど、身近な人に気軽に相談できないっていうのも、また悩みの種だよな。「絶対に秘密にしておいてね」と言ったって、人の口に戸は立てられない。こんな俺でよかったら、どんどん相談を送ってくれ。回答が役に立つかどうか、それは保証できないけどな。
今回の相談にいってみようか。25歳の会社員の女性からだ。
「母親との関係に悩んでいます。就職に合わせてひとり暮らしをするため、もうすぐ家を出る予定なのですが、そうすると兄と母がふたり暮らしになります。兄は交際相手のことを嫌う母を毛嫌いしていますし、母も交際相手ができた兄を苦手にしているようです。
交際相手の女性は少し問題がある方で、私も『わざわざそんな人にしなくても』とは思います。もし兄が交際相手と結婚するとなったら、私が母を引き取ってふたり暮らしになると思うと苦しいです。
母はワガママでひとりは嫌な人で、それでいてプライドは高く面倒な人です。父はすでに死んでいるので、唯一の親を大事にしたい気持ちもありつつ、ふたり暮らしになったら、私の結婚にも影響がありそうで……。なにかご助言いただけると嬉しいです」
回答:「ひとりで背負おうと思わないで。あなたが幸せに暮らすことが一番の親孝行だからね」
あなたは、とっても責任感が強い人なんだね。それはいいことなんだけど、お母さんのこともお兄さんのことも、全部ひとりで抱え込んじゃってる。そりゃ苦しくもなるよ。
お母さんとお兄さんはうまくいってないみたいだけど、だからってあなたが「お母さんの面倒は私が見なきゃいけない」と思い詰める必要はない。やっぱり長男であるお兄さんが、お母さんを大事にしなくちゃいけないよね。まして、あなたはもうすぐ家を出るんだから、お母さんとお兄さんがウマが合おうが合うまいが、あとはふたりの問題だ。
「私がいなくても大丈夫かな」と心配になる気持ちはわかるけど、どうにかやっていってもらうしかない。お母さんとしては娘のあなたを頼りにしているのかもしれないけど、その期待に応えるっていうのは、どこまでいってもキリがない話だ。お兄さんの感情やお母さんの性格についても、あなたがどうにかできることじゃない。
しっかりもののあなたがあれこれ面倒を見ることで、お母さんはいつまでも子離れできないし、お兄さんも妹をアテにして、お母さんと向き合うことを避けている一面もあるんじゃないかな。交際相手の女性がどういう人かは、あなたが気にしなくてもいいよ。お兄さんが選んだ人なんだから、きっといいところはたくさんあるはずだ。
家を出たあとも、お母さんやお兄さんがあなたを頼りにし続けるようなら、「私、もうすぐ結婚するの」と宣言しちゃえ。そういう相手がいないなら、友だちや同僚に頼んで「婚約者役」をやってもらえばいい。なんか成瀬巳喜男の映画に、そういうのなかったっけ。結婚相手の役を頼まれたのをきっかけに、本当に結婚しちゃうやつ。何だっけな。
まあいいや。そしたらお兄さんも「もう妹を頼れない」と思って、少しは責任感が芽生えてくるんじゃないか。お母さんだって息子を頼りにするようになるよ。いずれにせよ、事態を変えるには、行動を起こすことが大切だ。お母さんとお兄さんとお嫁さんと、3人で仲良くやってもらわないとね。そのアシストになるんだったら、嘘も方便だよ。
考えてみたら、ちょっと心配が先走り過ぎてるんじゃないか。これからひとり暮らしをしようってときなのに、やがてお母さんを引き取ることになるかもしれないとか、そうしたら自分の結婚に影響があるんじゃないかとか。もともと何でも自分で抱え込もうとしている上に、まだ起きていない未来の心配まで抱え込んでたら、そりゃたいへんだよ。
親を大事にするっていうのは、ワガママを何でも聞いてあげることじゃない。できないことはできないと拒否していいんだよ。書きっぷりからすると、お母さんはまだまだ元気みたいだしね。あなたが幸せな人生を送ることが、一番の親孝行だ。その時々で文句を言ってきたりするかもしれないけど、子どもに甘えてるだけなんだから聞き流せばいい。
たしかに、親はかけがえのない存在だ。だからこそ、言い争いになるんじゃなくて、いつも笑顔で話したいじゃないか。あなたの場合は、背負っている荷物を全部おろして、自分の荷物を選り分けてみるといいよ。意外とちょっとしかないかもね。悩みってのもいつの間にか溜まりがちだから、時々は断捨離が必要だな。
毒蝮さんに、あなたの悩みや困ったこと、相談したいことをお寄せください。
※今後の記事中で、毒蝮さんがご相談にズバリ!アドバイスします。なお、ご相談内容、すべてにお答えすることはできませんことを、予めご了承ください。
毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『土曜ワイドラジオTOKYO ナイツのちゃきちゃき大放送』内で毎月最終土曜日の10時台に放送中。86歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。大沢悠里さんとの80代コンビによるポッドキャスト配信番組「大沢悠里と毒蝮三太夫のGG放談」も絶好調(毎週土曜日午後3時)。ストリーミングサービス「スポティファイ」で過去の回も含めて無料で楽しめる。
YouTube「マムちゃんねる【公式】」(https://www.youtube.com/channel/UCGbaeaUO1ve8ldOXX2Ti8DQ)も、毎回多彩なゲストのとのぶっちゃけトークが大好評! 毎月1日、15日に新しい動画を配信中。
取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」など著書多数。最新刊は「【超実用】好感度UPの言い方・伝え方」。この連載では蝮さんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。