クリスマス映画は『ラブ・ハード』が傑作!作中に登場する名作『ラブ・アクチュアリー』『ダイ・ハード』も
クリスマスは映画の季節でもある。気の合う友だちや家族のパーティに欠かせないのが楽しい映画を観る時間。ゲーム作家の米光一成さんがおすすめするのは、Netflixの新作クリスマス映画『ラブ・ハード』と、作中に登場する2本のクリスマス映画『ラブ・アクチュアリー』と『ダイ・ハード』です。
クリスマスの奇跡を満喫できる3本
メリークリスマス!!!! 2021年のクリスマスに観るべき映画3本を選んでみました。
2021年ピカピカの新作クリスマス映画『ラブ・ハード』。
展開は王道でありながら、ギミックや細部は現代的に超アップデート。まさに2021年のロマンティック・コメディです。
『ラブ・ハード』というタイトルは、登場人物ふたりが大好きなクリスマス映画として挙げる2作品を合体したもの。『ラブ・アクチュアリー』と『ダイ・ハード』をミックスなのです。
『ラブ・アクチュアリー』は、2003年に公開されて大ヒットした作品。人と人が会うのが難しかったコロナ禍を経た今、改めて観るとジーンとする傑作。出会いの奇跡を感じさせるクリスマス群像劇です。
『ダイ・ハード』は、1988年に公開されて大ヒット。これも立派なクリスマス映画です。もはや高らかに謳えなくなったアメリカの野望がま生きていた時代のアクション映画の傑作。ドイツ人武装集団に占拠された日系企業の高層ビルで孤軍奮闘する刑事ジョン・マクレーンは別居中の妻と仲直りできるのか!?
『ラブ・ハード』を軸に、クリスマスの奇跡を満喫できる3本を紹介します。
『ラブ・ハード』:マッチングアプリのイケメンがなりすましだった!
2021年にNetflixで公開されたピカピカのNetflix映画『ラブ・ハード』。
マッチングアプリで恋してしまった男が、実は成りすましで、ぜんぜんイケメンじゃなかったら!? という設定のロマンテック・コメディ。
ナタリー(ニーナ・ドブレフ)は、「最高のクリスマス映画:ラブ・アクチュアリー」というボードを持ったイケメンのジョシュとアプリでマッチングし、チャットを開始。
やりとりが盛り上がる。話も合う。電話での会話も楽しい。相手は語学堪能でイケメンだ。一緒に(といっても、それぞれ離れた場所で電話しながら)映画を観たり。オンラインデートを何度も楽しむ。
ジョシュにぞっこんのナタリーは、飛行機で4800キロを移動してサプライズで会いに行く。が、現実のジョシュは、写真とはまったく違う外見だった。
ジョシュを演じるのは、香港出身のジミー・O・ヤン。見た目も身長もタイプも人種も違う友人のタグ(ダレン・バーネット)になりすましていたのだ。
激怒して立ち去ったナタリーは、成りすまし写真の本人であるタグとバーで出会う。
ジョシュは謝りながら、ナタリーに提案する。「ぼくがタグをゲットする作戦を手伝ってあげるから、クリスマスまで(家族の前では)恋人のフリをしてくれ」と。
クリスマスの装飾でピカピカの街を舞台に、心地よいほどの王道展開でロマンティック・コメデイが繰り広げられる。
肝心なのは、細部の描写やギミックがしっかり2021年仕様にアップデートされてること。
たとえば、クリスマス・デュエット曲「Baby, It’s Cold Outside」を歌う場面。「3年目の浮気」みたいな曲で、男側の無理やり引き留めようとする歌詞を「(今夜は)完全に合意のもととても楽しかった。無事に帰ってくれ」といった感じで政治的に正しく替えて歌ったりする。
過去のロマンティック・コメディ的なものへの批評的視点もぶちこみながら、王道展開するクリスマス映画。オススメ!
『ラブ・ハード』
出演:ニーナ・ドブレフ、ジミー・O・ヤン、ダレン・バーネット
『ラブ・アクチュアリー』:ハートウォーミング恋愛群像劇
その『ラブ・ハード』の中で、成りすましのジョシュが最高のクリスマス映画だと推してるのが『ラブ・アクチュアリー』。ナタリーは、この映画を「外見で恋に落ちる人の物語」と批判するが、ジョシュは「僕は現実に対する愛の勝利だと思う」と反論する。
『ラブ・アクチュアリー』は、2003年の大ヒット映画。クリスマス直前のイギリスを舞台にした恋愛群像劇だ。監督・脚本は、リチャード・カーティス。出演陣が豪華。ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、エマ・トンプソン、などなど。
サムというかわいい少年が、どこかで見たことあるなーと思ったら、『クイーンズ・ギャンビット』でベニー・ワッツを演じたトーマス・ブロディ=サングスターだ。
ロンドン・ヒースロー空港で再会した人たちが抱き合う印象的な映像からはじまる。
ロック歌手のビリー・マック(ビル・ナイ)は、かつてのヒット曲をクリスマスアレンジして、やけくそ気分でリリース。ダニエル(リーアム・ニーソン)は、息子のサム(トーマス・サングスター)が何かに悩み口をきかなくなったことを心配している。ジョン(マーティン・フリーマン)とジュディ(ジョアンナ・ペイジ)は、ベッドシーンのスタンドインとして働いている。イギリス首相のデイヴィッド(ヒュー・グラント)は、就任そうそうスタッフのナタリー(マルティン・マカッチョン)にひとめぼれ。これだけ紹介しても登場人物のまだ半分ぐらい。たくさんの人と人の出会いが描かれる。
次第に、登場人物たちのつながりが見えてくる展開も上品で、最後に空港での再会の映像にもどってくるハートウォーミングでドラマティックな映画になっている。
『ラブ・アクチュアリー』Netflix他にて配信中
監督・脚本: リチャード・カーティス 出演:ヒュー・グラント、コリン・ファース、エマ・トンプソン
『ダイ・ハード』:ブルース・ウィリスが若い! 懐かしのアクション映画
『ラブ・ハード』の中で、ナタリーが推しているクリスマス映画は『ダイ・ハード』だ。
「『ダイ・ハード』がクリスマス映画?」とジョシュが驚くと、ナタリーは「イピカイエー! そうよ」と答える。
この「イピカイエー」は、『ダイハード』の中でブルース・ウィリスが演じた刑事ジョン・マクレーンが言うセリフ。カウボーイの雄叫びの言葉らしい。
『ダイ・ハード』、舞台はクリスマスイヴのロサンゼルス。
別居中の妻に会うために、刑事ジョン・マクレーンは、日系企業ナカトミ商事の高層ビルへ。妻が働くこのビルでクリスマスパーティーが開かれているのだ。そこに、テロリストを名乗るドイツ人武装集団が乱入してきて、パーティー参加者は人質に。別室にいたジョン・マクレーン刑事は、この危機を解決するために孤軍奮闘するのだった。
高層ビルという閉鎖的空間で繰り広げられるバイオレンスの連続。愚痴りながらも、悪人たちを次々と殺して、生き延びていく高層ビルのランボーと化すマクレーン刑事。
無能な警察隊やFBIにイライラしながら、武装集団側の計画にもドンデン返しがあり、ピンチにつぐピンチを乗り切るマクレーンにハラハラさせられ、手に汗握るアクション映画だ。
同時に、カウボーイ映画の構造を現代に持ってきたアメリカの銃社会万歳な映画でもある。
『ダイ・ハード』U-NEXT他にて配信中
監督: ジョン・マクティアナン 出演:ブルース・ウィリス、ボニー・ベデリア、レジナルド・ベルジョンソン
『ラブ・ハード』『ラブ・アクチュアリー』『ダイ・ハード』の3作品、映画のタイプはぜんぜん違うのにちゃんとどれもクリスマス映画で共通点も多いことに驚くはず。バラエティ豊かなクリスマス気分を満喫してください。
文/米光一成(よねみつ・かずなり)
ゲーム作家。代表作「ぷよぷよ」「BAROQUE」「はぁって言うゲーム」「記憶交換ノ儀式」等。デジタルハリウッド大学教授。池袋コミュニティ・カレッジ「表現道場」の道場主。