入居者1.5人:介護スタッフ1 人 手厚い対応で地域の評判が高い施設<前編>
看護師が24時間常駐
施設開設から25年経つ「マザアス南柏」。開設から一貫して入居者一人ひとりと向き合う介護を実践してきた。それが表れているのが、入居者とスタッフの構成比が1.5:1以上であることや看護師が24時間常駐するなど人員配置が充実していること。理学療法士と作業療法士も日中の時間帯に常駐し、身体機能維持・向上のために専任で機能訓練を行っている。
リハビリの時間になると、ここでは介護スタッフではなく、理学療法士や作業療法士が入居者を部屋まで迎えに行く。そうすることで入居者が普段、どのように過ごしているのかが分かり、リハビリの効果を確かめることができるのだという。
他にも、箸の持ち方やトイレの移動の様子など暮らしの中での動作を見て、リハビリを見直していくそうだ。効率を重視し、介護スタッフが理学療法士や作業療法士のもとへ入居者を連れていく施設が多い中、ここでは、手厚く人員配置をすることで、このような対応が実現できている。
認知症看護認定看護師が常駐している安心感
看護師が24時間常駐しているので、要介護度や医療依存度の高い人への対応も可能だ。併設の協力医療機関と連携し、毎日医師との申し送りをしているため、日々の病状の小さな変化にもきめ細かく対応し、疾患に応じた健康管理サービスを提供してくれる。
認知症介護認定看護師でもある、マザアス南柏副支配人の溝井由子さんは認知症看護のスペシャリストだ。
認知症看護認定看護師の資格を取得するためには高いハードルをクリアすることが求められる。看護師免許取得後に実務研修が通算5年以上あり(うち3年以上は認定看護分野の実務研修)、認定看護師教育機関で6ヶ月以上の課程を終了し、試験に合格することが必要だ。しかも5年ごとに実践・指導・相談の活動報告による更新審査を受け、更新する必要がある。
認知症看護認定看護師は全国にまだ1000人ほどしかおらず、溝井さんのように病院ではなく高齢者向けの施設で働いている人は、その5%程度とまだ少ないが、多職種チーム連携の架け橋として、果たすマネジメントの役割は大きいという。
「看護師は24時間、365日おりますので急変時にも対応できます。喀痰吸引の必要な方や持続点滴を行っている方が常時いらっしゃいますので、2時間毎にお部屋をラウンドしています」(溝井さん 以下、「」は同)
入居者の気持ちを尊重し、看取りにも対応
ここでは開設以来、300人以上の入居者の看取りを行ってきたという。家族の気持ちに、“穏やかに、清潔に、寂しい思いなく”、という視点で寄り添ってくれる。
「住み慣れた環境で最期を迎えたいという方も多くいらっしゃり、実際にこちらの施設でお亡くなりになる方も多いですね。馴染みの職員も多くいるので、病院には行きたくないという希望をなさるようです。積極的な医療を望まない方に、緩和医療で穏やかに最期までその人らしく過ごして頂くための支援をするのが私たちの仕事です。ここにはそういったことを理解し、大切にしてくれる医師がいます」
4年前に建物と運営を全面リニューアル
「マザアス南柏」は開設から25年経つが、4年前に建物の外装、外構、エントランス、ロビー、居室、設備に至るまで全面リニューアルしたことによって古さを感じさせない快適な生活空間を実現した。
ただ建物をきれいにしたのではなく、運営も見直し、食事と入浴を1フロアごとに完結できるようにしたそうだ。
もう1つの特徴が、共用空間の充実ぶりだ。
延床面積の約65%が共用空間になっており、広々とした環境で生活できる。ロビーからは様々なイベントが行われるパティオ(中庭)が見え、開放感にあふれている。
溝井さんは、国立がん研究センターで、がん化学療法の看護や終末期のケア・医療に取り組んできた、がん看護のスペシャリストだ。その後、婦長や看護部長として、病院の土台・仕組み作りなど地域医療に携わってきたという。そして10年ほど前から認知症のことを勉強し、認定看護師資格を取り、介護の世界へ。
「こちらへは、病院や福祉事務所からの紹介で入る方が多くいらっしゃいます。他の施設での受け入れが難しい方をこちらでお引き受けすることも多いのですが、そういった方へは、その方の状態に合わせて、きめ細やかに対応しています。そうすると落ち着いてくることが多いです。そのためには(スタッフの)人員もいりますし、優しい気持ちも必要です」
“マザアスさんなら何とかしてくれる”と、地域からの信頼は篤い。これは、溝井さんをはじめ、職員一人ひとりが、スペシャリストとして、自分の担当する仕事を温かい気持ちで全うしていることの賜物だ。要介護度が比較的高い入居者が多いるフロアも見せてもらった。そこは、慌ただしい様子ではなく、穏やかな雰囲気に満ちていたのが印象的だった。
撮影/津野貴生
【データ】
施設名:マザアス南柏
公式WEBサイト:http://www.motherth.com/m-minamikashiwa/
所在地:千葉県流山市向小金3-147-2
最寄駅:JR常磐線「南柏」駅 徒歩13分
類型:介護付有料老人ホーム
運営主体:株式会社マザアス
敷地面積:4,230.7平方メートル
延床面積:6,722.7平方メートル
室数:105室
入居要件:入居時要支援・要介護
構造:鉄筋コンクリート造5階建
開設年月日: 1993年6月1日
料金:単身プランでA室(20.48平方メートル)の場合
【1】 一時金方式
入居一時金1000万円(90歳以上)~2240万円(65歳以上74歳以下)+月額利用料25万5000円(内訳:施設維持費6万2000円、食費6万3000円、水道光熱費3万円、上乗せ介護費10万円)
【2】 一時金・管理費低額方式
入居一時金1320万円(90歳以上)~2960万円(65歳以上74歳以下)+月額利用料19万3000円(内訳:施設維持費0円、食費6万3000円、水道光熱費3万円、上乗せ介護費10万円)
【3】 月払い方式
月額家賃17万円+月額利用料25万5000円
※施設のご選択の際には、できるだけ事前に施設を見学し、担当者から直接お話を聞くなどなさったうえ、あくまでご自身の判断でお選びください。
【このシリーズのバックナンバー】
●小規模多機能型介護が併設 自立期に入居し要介護の将来を見据えて暮らせる住まい<前編>
●入居者に施設選びの決め手を直撃!20年探してたどり着いた湘南の住まい<後編>
●要介護度改善が目標の老人ホーム!実践する自立支援介護とは?<後編>