猫が母になつきません 第276話「 かえた?」
暗唱番号…高齢者にとって最もやっかいなアイテムです。私ですらたくさんの暗証番号を管理しきれず忘れてしまうことたびたび。きっと世の中のほとんどの人がそうだと信じたい。今、母の銀行での手続きはすべて私が代行していますが、必ず母も連れて行きます。本人がいるほうが銀行側の確認が楽だし、母にも「手続きした」と実感させることが大事なのです。「無断でお金が引き落とされた」とか「私が知らないうちにお金が出されている」とか、いわゆる《盗られ妄想》があるので、ぼんやりでも「一緒に銀行に行ったな」くらいは覚えていてもらうためです。ではいったい暗証番号はいつ変えたのか? 今年に入って母の認知症が進み、すべての通帳、カード、印鑑を私が預かることにしたので、その少し前だろうと思います。誰にも盗られないために番号を変えたのでしょうが、結局番号を変えたことも番号も忘れていました。わからなくなった暗証番号はすぐに窓口で手続きして、後日郵送で知らせてもらうことに。本人がいたのでその手続きがすぐにできたのは幸いでした。母は今でも時々「通帳やカードを返して」と言います。私はきっぱり「絶対に返さない」と答えます。そして「使いたいときはいつでも一緒に銀行に行くから」ということも伝えます。母はそれでしぶしぶ納得し、私も母がしょっちゅう「通帳がない!」と騒ぎだすストレスから解放されました。きっと母は友だちに「娘に全部取り上げられた」と愚痴ってるでしょうね(苦笑)。
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作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。