1日たった3分、声を出して本を読むだけで“のど”がみるみる若返る
最近「むせる」「せき込む」などの回数が増えてきたと感じる事はあるだろうか。それはもしかしたら、のどの老化の始まりで、誤嚥しやすくなってきたサインかもしれない。いますぐできる改善法として、呼吸器内科のスペシャリストである大谷さんは「音読」がオススメだという。その方法とは一体どのようなものなのだろうか。
のどを鍛えるには「音読」が効果的
のどを鍛えるために有効な体操はいくつかあるが、数日で飽きてしまい、やらなくなるのでは意味がない。そこで、続けやすく、効果を感じやすいものとして、大谷さんがすすめるのが「音読」だ。
「よく話す高齢者は、のどの衰えが遅い傾向にあります。のどを鍛えるという意味でも、ふだんの生活の中で“声を出す時間”を増やすことが大切です」(大谷さん・以下同)
対面で話すことはできなくても、電話などを通じておしゃべりをするのも有効だ。
「会話する相手が見つからなくても自分のタイミングで自由にできるのが『音読』です。 好きな本でも、雑誌や新聞の記事でも、何でもいいので声に出して読むだけ。手間もお金もかかりません。音読はのどの筋トレになり、脳を活性化させる脳トレにもつながります。朝昼晩に1分ずつ、1日3分ほどで効果が期待できるので、ぜひ『音読』時間を作ってみてください」
まずは準備体操からスタート
音読に挑戦する前にやっておきたいのが、「あいうえおあお」と、50音をゆっくり繰り返して言う「ウオーミングアップ」。30秒ほどで完了するが、唾液腺を刺激することができるので、食前に行えば誤嚥の予防にも役立つ。
●ウォーミングアップの50音
あいうえおあお、かきくけこかこ、さしすせそさそ、たちつてとたと、なにぬねのなの、はひふへほはほ、まみむえもまも、やいゆえよやよ、らりるれろらろ
姿勢を正しゆっくりと大きな声で意識しながら読む
その後、好きな文章を朝昼晩の1日3回、1分ほど読めばいい。例にあげた『走れメロス』の場合、毎回1~2ページを読めばOKだ。
(例)「走れメロス」
メロスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐(じゃちぼうぎゃく)の王を除かなければならぬと決意した。メロスは政治はわからぬ。メロスは、村の牧人(ぼくじん)である。笛を吹き、羊と遊んで暮らして来た。けれども邪悪(じゃあく)に対しては、人一倍に敏感であった。
きょう未明メロスは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたこのシラクスの市にやって来た。メロスには父も、母もない。女房もない。十六の、内気な妹と二人暮らしだ。
この妹は、村にある律儀(りちぎ)な一牧人を、近々、花婿として迎えることになっていた。結婚式も間近かなのである。メロスは、それゆえ、花嫁の衣装やら祝宴のご馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。まず、その品々を買い集め、それから都の大路(おおじ)をぶらぶら歩いた。
「音読をする際に注意したいのは、猫背にならないように姿勢を正し、ゆっくりと大きな声で読むこと。さらに、ふだんの会話よりも口を大きく動かし、のどや舌も使って、表情豊かに読むといいと思います。のどの筋トレをしていることを意識しながら声を出すことで、声帯の周辺の筋肉、喉頭筋、舌筋、表情筋などが鍛えられ、唾液腺を刺激する効果もあります」
さらに、ひと息を長く保つように意識すれば、呼吸が深くなり、肺も鍛えられる。コツコツ続ければ、声が楽に出るようになるが、長時間の音読はのどを傷める可能性があるため、1回数分以内にとどめ、短時間でも毎日続けることこそ重要だ。
音読のポイント【まとめ】
【1】背筋をまっすぐ伸ばし、よい姿勢を保つ
【2】深い呼吸で、ゆっくり読む
【3】口を大きく動かし、表情豊かに
【4】ひと息を長く保つ
【5】筋トレしているとイメージする
歌を歌うのもOK!
「『音読はハードルが高い』と思う場合は、お風呂で“ひとりカラオケ”をするのもおすすめです。好きな曲を1日1回、朗々と歌い上げれば、ストレス発散にもなります。大きな声が出せない場合は、ハミングをしてみてください」
一度も声を出さずに一日を終えることがないように、毎日意識して声を出して、自慢ののどと、肺を手に入れよう。
教えてくれた人
大谷義夫さん/池袋大谷クリニック院長。
呼吸器内科のスペシャリスト。著書に『肺炎を正しく恐れる』(日経プレミアシリーズ)などがある。
取材・文/山下和恵
※女性セブン2021年7月22日
●のどを鍛えて病気を防ぐ|人気声優、僧侶らプロが実践、長生きする「最強のど」の作り方