マスクによる熱中症を避ける5つの心得 熱中症死亡者の約8割が高齢者【医師解説】
2020年6~9月に熱中症で救急搬送された人の数は全国で6万4869人(総務省消防庁調べ)に上る。なかでも65才以上の高齢者が57.9%と最も多い。コロナ禍における高齢者の熱中症について、家族はどういう点に注意すべきだろうか。いまから、いつでもできる予防と対策を医師に聞いた。
マスク着用で熱中症のリスクが高まる
2020年に続き、今年も新型コロナウイルスの収束が見通せないなかで夏を迎える。そんな中、気温や湿度が高い夏場のマスク着用は命取りとなる危険性もある。
高齢者の在宅診療を行う医療法人社団ときわの小畑正孝さんによれば、
「マスク着用によって、熱中症となるリスクは確実に高まる」と言う。
「人間の体は体温を一定に維持しようとするため、体が熱くなってくると、発汗したり皮膚の血流量を増やして血管を拡張させ、熱を放出させる仕組みがあります。
同時に、呼吸からも熱を放出させますが、マスクをした状態では熱がこもりやすくなる上、吐き出した熱い息を再度吸い込むことになるので、熱を放出しにくくなります。
屋外などで人と充分な距離がとれている場合、マスクは外した方がいいでしょう」(小畑さん・以下同)
また、マスクをしていると、加湿によって口の中の乾きを感じにくくなるので、水分を摂る回数が減ってしまう。
「喉が渇いていなくてもこまめに水分を補給することを心がけてください」
熱中症による死者数8割が65才以上の高齢者
2018年の厚生労働省のデータによると、熱中症による総死亡者数は1581人。そのうち、およそ8割が65才以上の高齢者で1288人となっている。
■年齢別、熱中症死亡者の割合
熱中症による死亡者の約8割が65才以上の高齢者
猛暑日が続いた2018年は、熱中症による死亡者数が全国で1581人。65~79才が533人、80才以上の人が755人で、65才以上の死亡者総数は1288人。実に全体の約80%となっている。
高齢者を熱中症から守るには?
「高齢者が熱中症にかかりやすい主な理由は、体温調節機能が低下していることや、若い人に比べて細胞の水分量が少なく、たとえ少ない汗の量でも簡単に脱水症になってしまうことが挙げられます。
夜間、トイレに起きるのが嫌なので、夕方から水分補給を控えるという人もいますが、それも危険です。
また、高齢になると、暑さなどを感じる感覚が鈍くなることも要因です。認知症を発症している人の場合も、自分では暑さや症状に気づかないため発見が遅れてしまいます」
重症化すれば、脳へのダメージによる後遺症の可能性があり、脱水症状によって脳梗塞を起こすこともあるという。
高齢者の熱中症は室内が圧倒的に多い
「また、高齢者の熱中症の発生事例数は室内が圧倒的に多いのが特徴です。家の中でも熱中症になりうるということを充分に意識しましょう」
国立環境研究所の調査(2009年)によれば、65才以上の高齢者の熱中症の半数以上が自宅で発生している。
「高齢のかたのなかには、エアコンの使用を嫌う人が少なくないのですが、温暖化が進むいま、特に都心部は熱がこもりやすい環境にあるので、エアコンなしでは危険です。
家族が注意して見守るようにし、必要に応じてエアコンを活用するよう、高齢のかたに促すようにしてください」
高齢者を熱中症から守るための5つの心得【まとめ】
1.熱中症による死亡者の約8割が65才以上の高齢者
2.高齢者の熱中症の発生事例数は室内が圧倒的に多い
3.屋外で人と充分な距離がとれている場合、マスクは外した方がいい
4.喉が渇いていなくてもこまめに水分を補給
5.必要に応じてエアコンを活用する
教えてくれた人
医師 小畑正孝さん
「医療法人社団ときわ」理事長。専門は内科、総合診療科。2016年に「赤羽在宅クリニック」を開院。翌年、「医療法人社団ときわ」を立ち上げ、理事長就任。2021年「サルスクリニック」を開院。
取材・文/加藤みのり イラスト/ドナ
※女性セブン2021年7月1・8日号