松嶋菜々子、松坂桃李ら有名人の朗読も聞けると「オーディオブック」が再注目 その5つの魅力
小説やエッセイなどを、その物語に適した肉声で読み上げるオーディオブック。80年代にブームになったものの段々と下火になったが、インターネットの普及によって今再び注目されている。最近は有名芸能人のナレーションも増えている。サービスの内容を詳しく見ていこう。
「オーディオブック」ってどんなもの?
小説やエッセイなどを、その物語に適した肉声で読み上げるオーディオブック。定額制の普及を機に、一気に広がっている。耳で聴く本といえば、これまでは「音訳図書」が主流だった。これは主に視覚障害者向けに作られていて、ボランティアが一定のルールに従って感情を込めずに読んだものだ。
片や、書籍の朗読を主とする音声コンテンツ「オーディオブック」は1980年頃にブームとなったものの、カセットテープやCDに録音するために本数が増えてかさばり、そのぶん価格も高騰し、下火となった。
が、昨今、インターネットの普及によってストリーミングやダウンロードが容易になり、再び注目されている。
「オーディオブックもいまはサブスクリプション(定額制)が主流となっています。プロの声優やアナウンサー、俳優の声で物語を聴けるのも魅力です」(出版社 読書工房・代表 成松一郎さん)
1人で読み上げる朗読スタイルだけでなく、キャラクターに合わせて複数の読み手が参加する作品も増えている。
「オーディオブックの場合、特に小説は、地の文と複数の登場人物にそれぞれ違う読み手をあてているケースが多いですね。文豪の作品であれば渋い声の俳優が主役を務めたり、ライトノベルなら若い声優が多く登場するなどイメージに沿った読み手を起用するのが王道。
作品の雰囲気に合ったかたが読むストーリーは聴いていてとても心地いい。どれもさまざまな演出上の工夫がなされ、臨場感を増す手法がとられています」(小学館・デジタル事業局コンテンツ営業室の木村匡志さん)
オーディオブック5つのメリット
1.通勤や家事の“ながら聴き”ができる
オーディオブックは聴くだけでストーリーや場面展開がわかるように作られているため、家事や通勤途中などにも多用されている。
Amazonのオーディオブックサービス「Audible(オーディーブル)」が、昨年行ったユーザー調査によると、Audibleをもっとも利用する場所は約80%が「通勤・通学」「自宅」と答え、聴く時間帯は8~10時、21~23時が約50%となった。通勤時間や夜のくつろぎタイムにながら聴きをしている人が多いようだ。
2.有名人のナレーションも聞ける
最近は有名人のナレーションも増えている。
Audibleでは松嶋菜々子や三浦友和、松坂桃李、杏、尾上菊之助など多くの有名俳優が小説や童話を朗読する。また、1990年にカセットテープ版で発売された黒柳徹子自身の朗読『窓ぎわのトットちゃん』(講談社)を、Audibleやオトバンクが運営する音声配信サービス「audiobook(オーディオブック).jp」などが配信。ファンならずとも見逃せない。
レコードやカセットテープ、CDなどは専用の再生機器が必要だが、オーディオブックはパソコンやタブレット、スマホで視聴可能。特にスマホの普及が読者の裾野を広げた。
3.バリアフリーの観点でもプラス
「障害をお持ちのかたでも簡単に本にアクセスできるようになりました。特別な機器を使わなくてもいいというのはバリアフリーの観点からみてもプラスに働いています」(木村さん)
また、本は、紙でも電子書籍でも手で支えて視点を固定して読む必要がある。本を持つことが難しい上肢障害のある人にとってオーディオブックはとても有用だ。
4.難しい内容でも頭に入りやすい
さらに、耳から入る情報は目で読み取る情報よりもハードルが低いといわれており、昨年、audiobook.jpが行った利用調査によると、「声の抑揚で内容をつかみやすい」「難しそうな本でも頭に入る」といった意見が寄せられた。
課題もある。紙媒体や電子書籍に比して作品数が圧倒的に少ないという点だ。
5.視力が衰えた高齢者にもやさしい
「オーディオブックには、障害のあるかただけでなく、加齢によって視力が衰えたかたも読書を楽しめるというメリットもあります。弊社ではノンフィクション系の新書やビジネス書、小説やエッセイ、児童書やライトノベルなどジャンルを広げ、ラインアップを増やすよう努めています」(木村さん)
前出の成松さんは言う。
「人生の途中で目が不自由になった人は点字の習得に苦労を伴いますが、不可能ではない。点を大きくするなどの工夫を加え、ハードルを下げていきたい。
点字も、音も、拡大も読者が選べるのが理想です。あらゆるニーズに応えて多様なメディアを用意することが必要だと感じています」
注目の「オーディオブック」サービス
オトバンク「audiobook.jp」
月額750円で対象のオーディオブックを好きなときに好きなだけ聴けるのが「聴き放題プラン」。ビジネス書を中心に、小説、ラジオドラマ、ニュース、落語など幅広いジャンルの音声コンテンツを配信。新刊も豊富。初回登録時は30日間の無料お試し期間あり。
Amazon「Audible」
月額1500円で自由に選べるオーディオブック1冊、落語やお笑いなどが聴き放題のポッドキャストのほか、月替わりのオーディオブック1冊を無料進呈。最初の30日間は無料体験。日本語のコンテンツ数は約1.8万。
教えてくれた人
成松一郎さん/出版社『読書工房』代表 https://www.d-kobo.jp/ 北川吉隆さん/小学館・第三児童学習局
取材・文/藤岡加奈子
※女性セブン2021年6月10日号