ミートボールで有名な企業の“筍まぜごはんの素”が昨年比300%超ヒットの理由
お弁当のおかずの定番・ミートボールでおなじみの石井食品は、従来から無添加調理の加工食品に力を入れている。旬のご当地食材にこだわった『筍まぜごはんの素』もその1つだ。その理由は何なのか? 開発の舞台裏を掘り起こしてみた。
無添加・国内産・旬にこだわり
石井食品といえば、ミートボールやハンバーグなどのイメージだが、5年前からの同商品を含め、日本全国にある旬の食材を使った商品の開発を近年推し進めている。
『筍まぜごはんの素』も、無添加調理(※製造過程においては食品添加物を不使用)かつ国内産のご当地食材にこだわった逸品だ。
従来、スーパーマーケットなどに並ぶ筍水煮は、前年に収穫されたものを保存しておき加工しているものが多い。
「筍は旬が2週間と短い上に、収穫したらすぐにアク抜きをしないとおいしさが損なわれてしまう、手間がかかる食材なんです」と、顧客サービス部の小島拓也さんは話す。
手間のかかる食材をあえて使い、国内産と旬にこだわったのはなぜなのか?
「実は、『筍まぜごはんの素』の前に、国内産の、その年に採れた旬の栗を使った『栗ごはんの素』を販売したところ、通販サイトやデパートの直営店で飛ぶように売れました。
石井食品は、安価なミートボールというイメージが強いにもかかわらず、1000円前後の本格的な商品がここまで受け入れられることに、特別な価値観があるとわかりました」(小島さん)
『筍まぜごはんの素』は、国内4か所(千葉・大多喜、千葉・市原、京都・京丹波、佐賀・唐津)で採れた筍を使用し、それぞれ味も異なる。筍ごはんにする筍を見つけ、生産者とつながりを作ることができたのは、日本全国にいる営業担当者の力が大きいのだという。というのも、石井食品では、営業担当者がご当地の道の駅などを頻繁に回り、その地域のおいしい食材を探し、生産者とのパイプを脈々と作ってきたからだ。
加えて、石井食品はもともと佃煮を作っていた会社。食品を煮炊きするのは得意で、だしから炊いた煮物はおいしい、と以前から評判でもあった。
社員自ら筍収穫も…予約は昨年比300%
企業努力が結実してできたこだわりの逸品だが、筍の収穫はうまくいかないこともある。素材価値開発部の岩瀬真人さんは、
「収穫は天候に左右されることもあり、加工する工場は受け入れる準備をしていたのに、収穫できない日もあります。従来の生産体制では考えられないことです」と話す。
ご当地の旬のものを使っているからこそ起きるハプニングだが、新鮮さを追求するゆえの欠品は悪いことではなく、価値なのだという考え方が根底にはある。
『筍まぜごはんの素』は、4年前から販売されてきたが、石井食品の通販サイトでは、今年は昨年比およそ300%の予約注文が入っているという。
「待ってました!」という常連さんに加えて、コロナ禍で移動が制限される中で、「地元のものが食べたい」「地元の味を人に贈りたい」という需要も相まった。
石井食品では、筍に限らず、これからも日本全国のご当地食材を使ったおいしいものをどんどん作っていく予定だという。
「食べる人はもちろん、こんなにおいしい食材を育てているという生産者のかたにも喜んでもらえるような加工食品を作っていきたいです」と、岩瀬さんは意気込みをみせた。
【データ】
『筍まぜごはんの素』。イシイのオンラインストアで販売中。千葉 大多喜、千葉 市原各1080円、京都 京丹波1188円、佐賀 唐津1026円(各2合用)。電話:0120-35-0558(10:00~17:00 土・日祝日を除く)
URL:https://cp.directishii.net/takenoko
※女性セブン2021年5月20・27日号