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恋愛不要の“かごめ”市川実日子と天然モテ男の“八作”松田龍平に注目『大豆田』4話

 1話でとわ子(松たか子)、2話で三番目の夫・慎森(岡田将生)、3話で二番目の夫・鹿太郎(角田晃広)のことが中心に話が展開した。4話は最初の夫・八作(松田龍平)と、そしてとわ子の親友・かごめ(市川実日子)の思いがけない関係が明らかになる。ドラマ大好きライター・釣木文恵さんが、今夜5話に備えて『大豆田とわ子と三人の元夫』のポイントを振り返ります。

 * * *

「恋愛をしない」人物登場

『大豆田とわ子と三人の元夫』というタイトルからして、ドラマがスタートする前から主人公とわ子(松たか子)の過去の結婚と、結婚に至るまでの恋愛の話が展開することは予想できたし、これまでの3話は実際そうなっている。もちろんそれだけでは全然なく、とわ子や夫たちの生き方のことが描かれていて、そこにこそ惹かれるのだけれど。

 でもこのドラマに「恋愛をしない」という人物が登場するとは予想していなかった。というか日本のドラマにそういう人が登場することはとても稀で、だからこそ嬉しかった。とわ子の親友・かごめ(市川実日子)のことだ。

モテすぎる八作の、にわか「嫌われ」作戦

 二人の夫に比べて、八作(松田龍平)はどうもとわ子への未練が見えず、考えていることがわからない感じがあった。その謎が今回明かされた。どうやら八作は他に好きな人がいて、けれどもとわ子と結婚した、ということらしい。そしてその好きになった相手は「恋愛をしないと決めている人」だったという。

 八作は「何もしてなくても自動的にモテる」人間らしい。そう言ってるシェフ・持田(長岡亮介)も相当「自動的に」モテそうなタイプだけれど……。「オーガニックなホスト」とまで呼ばれ、モテすぎる八作にとっては、「相手が自分を好きになる」ことなど、もしかしたらとわ子が1話で工事現場の穴にハマったとか、3話で切腹おじさん(切腹を日本文化に取り入れた人の子孫)と遭遇したとか、もしかしたらレジでQRコードがすっと出ないとか、それくらいの「災難」なのかもしれない。

 そして、基本的には来るものを拒まないタイプゆえに、何かと面倒ごとに巻き込まれているっぽい。人生で二度も台所の棚に女性を隠すなんて、ふつうないだろう。親友の彼女・早良(石橋静河)から好意を寄せられてしまい、「消えてしまいたい」「何もかもが嫌だ」と言っているその言葉には嘘はないのだろうけど、その対策として「嫌われる」ために上辺だけの不潔さを装うとは、どうにも心もとない。

かごめの主張が肯定するもの

 一方、かごめである。とわ子もひとくせある女性だけれど、かごめはそれに輪をかけた存在。「社会性」という言葉とは無縁な人生を送っているように見える。

 とわ子とは10歳で出会って、信号のない横断歩道を手をつないで渡ったことから仲良くなって、藤子不二雄よろしく漫画家ユニット「空野みじん子」を結成して解散し、19歳の海外旅行で一緒に誘拐されて、30歳でかごめが誘拐まがいのことをして、結局40歳になっても二人で一緒にいる。

 お金にも執着しないから遺産をまるごと寄付してしまって親戚とモメている。40歳を超えてから、漫画を再び描き始めようとしている。素敵な、気の合いそうな人から好意を寄せられているのに、そのつながりを断ってしまう。そんな女性、かごめ。

「この人好きだな、一緒にいたいなって思ってても、五条さん男でしょ、私は女でしょ。どうしたって恋愛になっちゃう。それが残念。べつに理由はないんだよ。恋がすてきなのは知ってる。きらきらってした瞬間があるのも知ってる。手をつないだり一緒に暮らす喜びわかる。ただただ ただただ恋愛が邪魔。女と男の関係が私の人生にはいらないの。そういう考えがね、寂しいことは知ってるよ。実際たまに寂しい。でもやっぱり、ただただそれが、私なんだよ」

 なんだかんだ恋愛があふれがちなドラマの世界に、彼女のような人が登場したことの貴重さ。そしてどうしても負け惜しみととられてしまいがちな「恋愛が不要」という主張を、ここまでさらりと、過不足なく語るセリフ。そして、実際3回結婚しているとわ子がこの主張に「そう」とだけ返すということ。どれをとっても、世の中にいろんな人がいることを肯定する素敵なシーンだ。

親戚よりもずっと深くつながっている友

 彼女のように一人で生きていくことは、きっと2021年の今もまだ、けっこう難しい。けれど彼女には、とわ子がいる。相容れない親戚からの電話に「バカバカバーカ!」と捨て台詞を投げつける親友がいてくれることのなんと素敵なことだろう。いなくなったら方々を探し回り、全力で走って追いかけ、そして信号のない横断歩道を手をつないで渡ってくれる人がいることのなんと幸せなことだろう。

 とわ子はかごめにとって家族。わかり合えない親戚なんかよりもずっと深くつながっている。再び漫画を描き始め、社長となったとわ子とはもう一緒に漫画を描けないというかごめに、それでもとわ子は「今晩だけ手伝わせて」と食い下がる。

 二人の女の子は、10歳で出会ったときからいろんなことを経験して、でも根っこは変わらないまま大人になった。今でもかごめは信号のない横断歩道は渡れないし、とわ子は小学生のように「バーカ」とか「なんでー?」と言う。

 今回は八作だけでなく、二人の元夫もそれぞれに新しい相手との関係にピンチが訪れていた。三人の夫たちはこれからどうなっていくのか。とわ子にも新しい人が登場するらしい5話は今夜。

文/釣木文恵(つるき・ふみえ)

ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。

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