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「孤食」が招く認知症高齢者の低栄養!すぐできる対策3つ

 東京―岩手と遠距離で、認知症の母の介護している工藤広伸さん。家族の目線で”気づいた””学んだ”数々の介護心得をブログや書籍などで公開し、リアルな実体験が役に立つと評判だ。

 当サイトでもシリーズで、工藤さんの遠距離介護の知恵などをアドバイスしてもらっている。

 今回のテーマは「食事」。一人暮らしをする高齢の母が、低栄養になってしまわぬために、家族ができることとは。

 * * *

 料理が得意だった母(74歳・要介護2)も、認知症の進行とともに料理のレパートリーが減っています。

 母ができることは、卵や野菜を炒めたり、煮たりするくらいです。味付けも、砂糖・塩・しょうゆ・味噌・こしょうなど、限られた調味料しか使うことができません。

 それでも、母が料理を続けることは、残された能力の維持や生きがいにつながると思っているので、普段の調理は基本的には母自身にしてもらっていますが、唯一心配なのが「低栄養」になることです。 

低栄養がもたらす体への影響

 「低栄養」とは、栄養が足りない状態のことです。「低栄養」によって、体にどのような影響があるのか、『健康長寿ネット』より引用します。

・体重減少
・骨格筋の筋肉量や筋力の低下
・元気がない
・風邪など感染症にかかりやすく、治りにくい
・傷や褥瘡(じょくそう:床ずれ)が治りにくい
・下半身や腹部がむくみやすい

(引用元:『健康長寿ネット』:https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/tei-eiyou.html

 数年前、母も低栄養だったと思われる時期がありました。元気がなく、1日中コタツで寝ていて、デイサービスも仮病で休み続けました。

 菓子パン1個だけを1日かけて食べる日もあったため、医師と相談して、点滴やリハビリの強化を行い、なんとか低栄養から回復しました。きちんとした食事を取らないと、生活の質を下げるということを経験したのです。

低栄養を招く「孤食」

 この低栄養になりやすい原因のひとつに、「孤食」があるそうです。

「孤食」とは1人で食事をすることで、農林水産省発表の食育白書(平成28年)によると、70代のうち約25%の人が3食とも1人で食事をするそうです。高齢者の単身世帯が増えていることもあって、平成26年の調査結果と比較しても、6%から7%の大幅増加となっています。

「孤食」になると、規則正しい時間に食事を取らないようになったり、栄養バランスの良い食事が取れなかったりすると言われていて、母も「ひとり分の料理を作るのは、張り合いがない」とよく言います。

 母が「孤食」のときは、納豆やちくわ、豆腐、菓子パンなど、調理せずにすぐ食べられる食材が多くなりがちで、これも低栄養になる原因のひとつだと思っています。

 このような母の低栄養を回避すべく、わが家ではこのような対策をしています。

わが家の低栄養3つの対策

【1】孤食の回数を減らす

 1つ目は、母と一緒に食事をする回数を増やし、孤食にならないようにすることです。

 わが家は遠距離介護なので、毎日母と過ごしているわけではありませんが、帰省しているときには、できる限り一緒に食事をすることを心がけています。

 親子で食事をすることで、料理の品数も自然と増え、焼き魚・煮物・味噌汁・ご飯といった、栄養バランスの取れた食事内容になります。

 週2回、デイサービスを利用していることも、低栄養の回避につながっていると思います。デイの昼食やおやつは、栄養のバランスが考えられています。デイの回数を週1回から2回に増やしたことで、孤食の回数は少し減りました。

【2】肉を多く食べてもらう

 2つ目に、肉を食べてもらう機会を増やしました。

 2013年に放送された『NHKクローズアップ現代』を観て驚いたのですが、3食ともしっかり食べている高齢者でも、低栄養になるということでした。その原因は肉を食べていないため。番組では「高齢の方は、毎日肉を食べて欲しい」とまで言っていました。

 確かに高齢者は、「歳を取ったら、肉よりも魚を食べたほうがいい」、「肉はコレステロールが上がるから、食べたくない」といった先入観から、肉を避ける傾向があり、うちの母も同じ考えでした。

 外食だったら肉を食べてくれるかもと、母と焼肉屋に行ったみたのですが、厚みのある肉は、入れ歯のため噛み切れずに吐き出すことがありましたので、薄くて噛み切りやすい「しゃぶしゃぶ」で、肉を食べてもらうことにしました。

 他にも肉料理はいろいろあるのですが、さっぱりしていて贅沢な感じがすると母は言いますし、親子で鍋をつつくのが楽しいということもあって、わが家では「しゃぶしゃぶ」の回数が多いです。

【3】栄養補助食品を購入し、ストックしておく

 3つ目は、栄養補助食品をストックしておくことです。

 わが家でケース購入しているのは、日清オイリオの『エネプリン』という商品です。自著の取材で知った商品で、低栄養状態の方のためのエネルギー補給デザートです。

『エネプリン』はわずか40gと小さいのですが、カロリーは110kcalもあります。舌でつぶすことができる柔らかさで、食が細くなったり、噛む力や飲み込む力が弱くなったりした高齢の方でも、安心して食べることができます。

 母は『エネプリン』にこういう機能があることを理解していませんが、小さくておいしいプリンだと思って、食後によく食べています。食を楽しみながら、しっかり栄養も補給できます。

 1日3食、ご飯を食べているから大丈夫と思っていても、知らない間に低栄養になる高齢者はいるようです。特におひとりで生活されている方は低栄養になる可能性があるので、一度どんな食事をしているのかチェックをして、対策したほうがいいと思います。

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/

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