介護保険サービスで片付けも頼める ただし日常生活に不可欠なもの限定
ひとり暮らしの親の自立が難しくなったり、同居していても家族が仕事などで充分に世話ができない場合、費用の1~2割の自己負担で、親の介護をプロに任せることができる──それが2000年にスタートした「介護保険制度」だ。自治体から「日常生活に介護や支援が必要」と判断されて、「要介護」または「要支援」の認定を受ければ、介護保険サービスを利用することができる。
公的介護保険制度の利用について
実は、その介護保険サービスを使えば、「実家の片付け」も安価な費用で、手軽にできることは、意外に知られていない。『もう限界!! 親の介護と実家の片づけ』(自由国民社刊)の著者、高室成幸さんはこう語る。
「介護保険では、訪問介護員(ホームヘルパー)が生活の不自由な高齢者の自宅を訪れる『訪問介護』による生活支援が受けられます。ひとり暮らしのお年寄りだけでなく、同居の家族が忙しい仕事に就いている、家族も高齢であるなどの事情があれば生活支援を利用できます」
生活支援サービスでは、ホームヘルパーに「食事の準備、あと片付け」「日常品の買い物」「薬の受け取り」などの日常生活をサポートしてもらえるのに加えて、「掃除」「洗濯」「ゴミ出し」「シーツ交換」「布団干し」などの「家の片付け」も依頼して、任せることができる。しかも、その費用は原則1割負担で済むのだ。
「ただし、ホームヘルパーに依頼できる片付けは、親の日常生活に不可欠なものだけです。要介護者が使っている部屋以外の掃除や、要介護者以外の人のための洗濯や布団干し、植木の水やりや草むしり、家の修理や窓ふき、ペットの世話などは、生活支援サービスに含まれません。介護スタッフを“家事手伝い”だと勘違いしてトラブルになるケースもあるので気をつけてください」(高室氏)
介護が必要な親が家にいると、介護に時間を取られ、片付けに取りかかれない―そんなときは、介護保険で「通所介護(デイサービス)」を利用しよう。親が施設で介護を受けている間に掃除や片付けを進めることができる。「短期入所」を利用すれば、大がかりな片付けや家の改装などもできるだろう。
介護保険制度には他にも有効な使い途がある。
その1つが「介護保険による住宅の改修」だ。1家屋20万円を限度に、「バリアフリー化」や「手すりの取り付け」、「開き戸から引き戸への取り替え」、「転倒防止のための床材の加工・取り替え」などの工事費用の8~9割の補助を受けられる。
また「介護保険による介護用品のレンタル」もぜひ利用したい。「手すり」や、住宅内の段差を解消する「スロープ」、「介護用ベッド」などが原則1割の自己負担で借りられる。
介護保険制度を賢く利用すれば片付けの大きな手助けになる。
イラスト/鈴木清美
※女性セブン2015年10月8日号