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新『半沢直樹』7話|白井大臣をやり込めたキーワードは半沢の原点「ネジ」!

 堺雅人主演『半沢直樹』新シリーズ。7話は国土交通大臣の白井(江口のりこ)と半沢の対決。全シリーズのキーワード「ネジ」(半沢の原点)も飛び出し、手に汗握る展開だった。残念ながら、コロナの影響で撮影が遅れているそうで、今週は生放送の特番が組まれるようだ(これはこれで楽しみ)。日曜劇場研究ライター近藤正高が、再来週(9月13日)放映予定の8話に備え、帝国航空編の逆転劇をていねいに解説する。

笠松は半沢に味方する?

 先週8月30日放送の『半沢直樹』第7話では、ついに児嶋がしゃべった。そう、ドラマが帝国航空編に入って以来、国土交通大臣の白井(江口のりこ)の秘書・笠松役で登場しながら、ずっとセリフのなかったアンジャッシュの児嶋一哉がついに言葉を発したのだ。しかも笠松は思った以上に優秀な秘書であった。何しろ白井から、半沢(堺雅人)の提出した帝国航空の再建計画案について意見を求められ、「見事な再建案だと思います。これなら自力復興は可能でしょう。あの半沢というやつはそうとうなやつです」と的確な評価を下してみせたのだから。

 もっとも、半沢を目の仇にする白井がそんな評価を認めるわけがない。「じゃあ債権放棄は撤回しろとでも言うわけ!?」と詰め寄る彼女に、笠松は忖度して「いえ、政治は政治です。債権放棄を銀行団に実行させれば大臣のお力を広く世間に示せることになります」と持ち上げるのが何とも哀れであった。思えば、『半沢』今シリーズの前半では、児嶋と同じお笑い界から東京03の角田晃広が出演し、当初は半沢を裏切る役だったのが、やがて味方に転じておおいに活躍した。ひょっとすると児嶋演じる笠松も、いずれは白井に反旗を翻し、半沢に味方するのでは? と、ついそんな期待も抱いてしまう。

 白井が半沢を目の仇にしているのは、笠松とのやりとりにも出てきたように、政府による再建計画で各銀行に要請していた帝国航空に対する債権の放棄を、彼が真っ向から拒否したからだ。第7話では、半沢の勤める東京中央銀行のほか、帝国航空の主力銀行である開発投資銀行(開投銀)など各銀行が、債権放棄を受け入れるかどうかが焦点となった。その態度表明の場として、白井とタスクフォースの乃原(筒井道隆)は合同報告会をセッティングする。もちろん、2人は当然のごとく各行が受け入れを表明するものと確信していたのだが……。

貸すも親切、貸さぬも親切

 合同報告会を前に、東京中央銀行でも債権放棄について役員会議にて最終的な話し合いが行なわれる。ここでまず、債権放棄の受け入れを主張したのが頭取派の大和田(香川照之)だった。これに対し、担当者として会議に立ち会った半沢は、そもそも頭取の中野渡(北大路欣也)は債権回収を第一にあげていたと反論する。すると大和田はあっさり半沢に同調したので、ちょっと拍子抜け。じつは大和田も本音では債権放棄を拒否するべきだと考えていたものの、ほかの役員、とりわけ常務の紀本(段田安則)の態度をうかがうため、わざと一芝居を打ったのだ。そうとは知らない紀本はまんまと大和田の術数にはまり、半沢たちに強く反対して債権放棄の受け入れを訴える。むきになるあまり机をバンバン叩くので、ほかの役員たちをも同調せざるをえなかった。中野渡はこれを役員の総意とみなし、結局、東京中央銀行として債権放棄の受け入れを決議する。だが、半沢は、そこに「開投銀が債権放棄を拒否した場合、当行もそれに順ずる」との条件を付け加えさせた。

 半沢が開投銀に一縷の望みを託したのは、同行の担当者である谷川(西田尚美)が、先に新規路線の申請を白井大臣から却下されたLCCのスカイホープ社に対し、別の銀行に働きかけて融資を行なわせていたからだ。ここから半沢は谷川個人に切り込んで、その真意を訊ねると、彼女もまた本音では、債権放棄は帝国航空のためにならないと考えていることを知る。彼女は、やはり銀行員だった父から「貸すも親切、貸さぬも親切」と教えられ、銀行の融資が場合によっては相手のためにならないこともあるとよくわかっていたのだ。半沢もこれに同意する。思えば、半沢の父は経営していたネジ工場を銀行から融資を受けられなかったがために手離し、あげく自ら死を選んだ。それだけに「貸すも親切、貸さぬも親切」という言葉は身に染みて理解できたはずである。

 だが、谷川が本音ではそう思っていても、政府系銀行である開投銀では官僚から天下った役員たちが幅を利かせており、そのなかで政府の要求を拒否するのは至難の業であった。実際、彼女はそれまで何度となく組織改革を訴えたが、ずっと退けられてきたという。

白井大臣、思わぬ落とし穴に

 第7話では、谷川と白井と、いずれも高い社会的地位につく女性でありながら両者の対照性が浮き彫りになった。谷川は、天下り役員(おそらく大半が男性だろう)が幅を利かせる銀行上層部に対し、顧客である企業ひいては社会に対し貢献すべく戦い、バンカーとしての職務をまっとうしようとしていた。これに対し、日本初の女性総理をめざす白井は、自分が権力を得ることにしか関心がない。幸運なことに、元キャスターという華やかな経歴を政界の重鎮である箕部(柄本明)に買われ、大臣になることができた。ただ、箕部が白井に求めるのは、現政権が国民の支持を得るための広告塔としての役割でしかない。彼女も彼女でそれに甘んじているようなところがある。政治について深く勉強しているわけでもなさそうだ。それは、合同報告会の直前の閣議で、とくに考えもなしに開投銀の民営化に賛成してしまったことからもあきらかだろう。だが、このために彼女は思わぬ落とし穴にはまることになる……。

 その合同報告会で、白井と乃原は銀行団から思わぬ抵抗にあう。非主力銀行はことごとく「主力・準主力銀行の対応に従う」と判断を開投銀と東京中央銀行にゆだねたのだ。半沢はこのとき順番が回ってきても、なかなか返答せず、乃原を苛立たせる。ためにためて、彼が告げたのは「東京中央銀行は、この債権放棄を……拒絶します!」という結論だった。これには隣りにいた部下の田島(入江甚儀)は驚き、会場も騒然とする。そこへ谷川が遅れて会場に現れる。彼女もまた白井と乃原の意に反し、「開発投資銀行は、タスクフォースによる債権放棄の要請に対して……見送りの決断を下しました」と宣言。ここに銀行団は債権放棄の拒否で固まった。谷川は会場に入る直前、半沢に「貸さぬも親切。」というメールを送っていた。

 このような結果になったのは、開投銀の民営化が閣議で決まったことが、谷川が上層部を説得するうえで追い風となったからだ。白井は自分で墓穴を掘ったことになる。そもそも彼女はそれ以前に、半沢に対し立場をわきまえろと釘を刺した際、「すべての物事は機長であるリーダーが取り決める。現場はネジと同じ。その指示に忠実に従えばいい」と言ったのがまずかった。実家がネジ工場の半沢がそう言われて奮い立たないわけがない。合同報告会が終わって、白井は半沢から次のようなセリフでやりこめられてしまう。

「あなたは現場の人間をネジだとおっしゃいましたね。たしかに一つひとつのネジは小さく非力ですが、間違った力に対しては精いっぱい、命懸けで抵抗します。問題はあなたがその抵抗を感じられなかったことです。ネジにもそれぞれ役割があり、巨大旅客機に使用される200万個以上です。その一つでも欠ければ飛行機は飛びません。あなたから見ればわれわれ銀行員は、しがない、ちっぽけな存在かもしれませんが、与えられた使命は全力で果たします。あなたは総理の椅子だけを見て、足元のネジを軽んじて、これはその結果です!」

 白井はこれに対し、髪をかきむしって悔しがるしかなかった(イラスト参照)。せめて現場のことを「ネジ」ではなく「歯車」とでも言っておけば、こんなことにはならなかったような気もするが、もはや後の祭。

 しかし、これで半沢の闘いに勝負がついたわけではない。箕部は白井の詰めの甘さを叱責し(箕部役の柄本明が主宰する劇団乾電池でも、劇団員の江口のりこに対してこのようなダメ出しをしているのかと思うとよけい怖かった)、次の手段を画策する。半沢と大和田の手で箕部とつながっていることが判明した紀本も、あらためて債権放棄に向けて動き出す。さらに箕部のもとには、ある意外な人物が訪ねていた。誰あろう中野渡頭取だ。

中野渡頭取の謎

 思えば、中野渡頭取がなぜこれほどまでに銀行内で実権を持つのか、筆者はちょっと前から疑問に感じていた。常務だった大和田に続き、副頭取の三笠(古田新太)、さらには帝国航空の担当者だった曾根崎(佃典彦)とこれだけ不正が続けば、普通ならトップである頭取は責任を問われるところだろう。それにもかかわらず、中野渡の銀行内での地位はまだ揺るぎない。半沢からして頭取には全幅の信頼を置いている。その権力の源泉は一体どこにあるのだろうか? 

 箕部との関係があきらかになれば、きっとこのあたりの謎も解けるに違いない。さらに第7話では最後になって、半沢行きつけの小料理屋の女将・智美(井川遥)が元銀行員で、かつて中野渡の部下だったこともあかされた。2人のあいだにかつて何かあったのか? 気になる第8話は今夜……と思ったら来週に延期、今夜は生放送による特番が組まれるとのこと。せっかく出演陣に舞台出身の俳優がそろっているのだから、ここはひとつ、生で一芝居見たいところではあるが、果たして!?

新『半沢直樹』これまでのレビューを読む

新『半沢直樹』1話|半沢の変化に注目!もうおじさんで銀行に戻れるかどうか瀬戸際か

新『半沢直樹』2話|まるで幕末の群像劇のようで興奮!若手社員とのチームプレイで銀行に勝負を挑む

新『半沢直樹』3話「待ってました」片岡愛之助登場!急展開に次ぐ急展開をていねいに解説

新『半沢直樹』4話|バブル入社世代から就職氷河期世代へのエール「君たちの倍返しを期待している」

新『半沢直樹』5話|「あなたからは腐った肉の臭いがする」シェイクスピア劇みたいな「帝国航空」編

新『半沢直樹』6話|仲間たちのクビを切るのはつらい、だが会社を守るためには…闘う石黒賢

 

『半沢直樹』(新シリーズダイジェスト)は配信サービスParaviなどで視聴可能(有料)

半沢直樹スピンオフ企画「狙われた半沢直樹のパスワード」は配信サービスParaviで視聴可能(有料)

『半沢直樹』(前回シリーズ)は配信サービスParaviで視聴可能(有料)

文/近藤正高 (こんどう・ まさたか)

ライター。1976年生まれ。ドラマを見ながら物語の背景などを深読みするのが大好き。著書に『タモリと戦後ニッポン』『ビートたけしと北野武』(いずれも講談社現代新書)などがある。

●SMAPの全員が主演していた日曜劇場|主演本数歴代2位はキムタク、1位は?

●木村拓哉×常盤貴子『ビューティフルライフ』初回から名ゼリフが止まらない

●『古畑任三郎』リメイクの噂で木村拓哉新キャストの期待も。田村正和につながるものは?

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